2018年より、新たな在留資格「特定技能」が創設 されました。
特定技能制度は、深刻化する人手不足を解消するため、一定の専門性・技能を持つ外国人材の受け入れを狙いとしています。
本記事では、特定技能の概要から対象分野、試験内容まで詳しく解説します。
目次
特定技能とは
特定技能制度とは、国内の人材不足に陥りやすい産業分野で、必要とされる技術や知識を持った外国人を受け入れようとする制度です。
2018年に改正出入国管理法が可決され、2019年4月から受け入れが開始されました。
建設業や農業、介護など、幅広い分野を対象としています。
特定技能は2種類に分かれる
特定技能は「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類に分かれています。
特定技能1号は、「特定産業分野に属する相当程度の知識や経験が求められる技能を必要とする業務」に従事する外国人向けの在留資格です。
特定技能1号の受け入れが対象の分野は、介護、建設業、漁業など、全12分野です。
特定技能2号は、「特定の分野で熟練した技能を必要とする業務」に従事する外国人向けとなります。
特定技能2号のほうが熟練度も高い分、在留期間に上限がないことや、家族の帯同が要件次第で認められるなど待遇が変わります。
以下は、1号と2号の主な違いをまとめた表です。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
---|---|---|
在留期間 | ・1年以内かつ法務大臣が個別に指定する期間ごとの更新 ・通算で上限5年まで |
・3年、1年または6ヵ月ごとの更新 |
技能水準 | ・試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除) | ・試験等で確認 |
日本語力の水準 | ・生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験免除) | ・試験等での確認は不要 |
家族の帯同可否 | ・基本的に認めない | 要件を満たせば可能(配偶者、子) |
支援 | ・受入れ機関または登録支援機関による支援の対象 | ・受入れ機関または登録支援機関による支援の対象外 |
「技能実習」との違い
外国人の受け入れに関する制度に「技能実習」もありますが、特定技能制度とは目的や条件などが異なります。
特定技能制度の目的は、国内の人手不足解消です。
人手が不足している産業を中心に、生産性向上や国内人材を安定させるために創設されました。
対して技能実習制度の目的は、「技能移転による国際貢献」となっています。
外国人が日本で特定分野の技術を学び、それを母国へ持ち帰ってもらうための制度です。
特別技能の受け入れ条件は、上述したとおりです。
一方で技能実習の受け入れは、以下の要件を満たすことが条件となっています。
- 18歳以上
- 制度の趣旨を理解していること帰国後、修得等をした技能等を要する業務に従事することが予定されていること
- 企業単独型技能実習の場合は、申請者の外国にある事業所または申請者の密接な関係を有する外国の機関の事業所の常勤の職員であり、かつ、当該事業所から転勤し、または出向する者であること
- 団体監理型技能実習の場合は、従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること
- または技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること
- 団体監理型技能実習の場合は、本国の公的機関から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること
- 同じ技能実習の段階に係る技能実習を過去に行ったことがないこと
- 第1号技能実習:日本語能力試験のN4合格者(介護職)
- 第2号技能実習:日本語能力試験のN3合格者(介護職)
特定技能の対象分野
特定技能外国人が従事できる対象分野は下記の12種類です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
このうち、「介護分野」は、特定技能1号のみが対象となっています。 (2024年3月時点)
特定技能の外国人を採用するメリット
特定技能の外国人を採用する最大のメリットは人手不足 の解消です。
少子高齢化や後継者不足に悩む産業・企業にとって、特定技能外国人を採用することは大きなメリットとなります。
加えて、特定技能の資格を有する外国人は技能試験に合格しているため、採用時から一定の技術を持っています。
そのため、採用後は即戦力となりうるでしょう。
特定技能の試験内容
特定技能の在留資格を取得するために、試験を受ける必要があります。
特定技能1号と特定技能2号では、申請に必要な試験が異なります。
試験は大きく分けて、「日本語能力に関する試験」と「技能試験」の2種類です。
それぞれ、試験内容や受験方法が細かく定められているので、以下で確認しておきましょう。
日本語能力に関する試験
特定技能1号を取得するためには、「日本語基礎テスト(JFT-Basic)」または「日本語能力試験(JLPT)のN4以上」の合格が必要です。
これらの試験は、日本国内だけでなく、世界各国で実施されています。
日本語能力試験のレベルは、N1~N5の5段階で設定されています。
N5が最も簡単な難易度で、数字が小さくなるにつれて難易度が難しくなるという規定です。
なお、特定技能2号は、日本語能力に関する試験は不要です。
また、介護分野については上記に加えて「介護日本語評価試験」の合格も必要とされています。
介護の現場では、利用者とのコミュニケーションが重要視されるため、介護分野をめざす際は必須項目です。
技能試験
1号2号ともに、特定産業分野の技能試験への合格が必要です。
業種によっては、学科試験もあります。
ただし、技能実習2号を良好に修了した場合は、試験が免除となります。
試験会場や日程は、業種ごとに異なります。
国内の決められた地域で開催する試験もあれば、47都道府県、国内外で開催する試験もあるため、事前に調べておくと良いでしょう。
また、管轄省庁も業種ごとに異なるので、申し込むときや最新情報を調べるときには注意しましょう。
特定技能外国人の受け入れ企業になるために
特定技能外国人を受け入れる機関(企業・個人事業主)を、「特定技能所属機関」といいます。
特定技能所属機関は、特定技能外国人と雇用契約を結びますが、このときに必要なことは、外国人の報酬金額が一定の基準を満たすことです。
また、結んだ雇用契約を確実に履行することなど、雇用において一定の義務も課されます。加えて、特定技能外国人の受け入れにおいて、安定的に円滑な活動を行えるようにするための「支援計画」も求められます。
支援計画とは、職業生活、日常生活、社会生活において特定技能外国人をサポートするための計画です。
ただし、これらすべてのサポートを企業が担うのはかなりの時間や労力が必要でしょう。
そこで、特定技能1号の外国人に対して、上記の支援をすべて委託できるのが「登録支援機関」です。
登録支援機関は、出入国在留管理庁長官の登録を受けることでなることができますが、一定の要件があります。
まとめ
特定技能制度は、外国人労働者が日本で働くための制度の一つです。
特定分野の技能や知識を持った外国人を採用することで、企業の人員不足の問題解消につながるでしょう。
建設業や農業、外食業など幅広い分野を対象としており、各業界で特定技能制度の活用が期待されています。
一方で、外国人の受け入れには試験やサポート体制の整備など、クリアすべき課題もあります。
正式に特定技能制度の受け入れを検討している場合は、登録支援期間や具体的な流れについて詳しく調べてみると良いでしょう。