外国人技能実習生の採用が増加するなか、その年末調整について正しく理解することが重要です。
本記事では、外国人技能実習生の年末調整の必要性や扶養控除の注意点、具体的な手続きの流れなどを詳しく解説します。
企業の経営者や採用担当者に、外国人技能実習生の年末調整をスムーズに行うためのポイントをお伝えします。
目次
外国人技能実習生に年末調整は必要?
外国人技能実習生の年末調整について、疑問を抱えている企業担当者も多いでしょう。
実際のところ、外国人技能実習生に年末調整が必要かどうかは、その技能実習生の居住状況によって異なります。
ここでは、年末調整が必要なケースと不要なケースを詳しく見ていきましょう。
「居住者」に該当する場合は年末調整の対象となる
外国人技能実習生であっても、「居住者」に該当する場合は年末調整の対象となります。
居住者とは、日本に住所がある場合、または1年以上日本に住んでいる場合を指します。
つまり、技能実習生として来日してから1年以上経過している場合は、通常、居住者として扱われ、年末調整が必要になるのです。
ただし、12月の年末調整が行われる前に帰国する場合は注意が必要です。
その場合は、出国までに年末調整を行い、税金を精算しなければなりません。
企業側は、技能実習生の滞在期間を把握し、適切なタイミングで年末調整を行うよう心がけましょう。
年末調整の対象外となる場合
一方で、年末調整の対象外となるケースもあります。
まず、外国人技能実習生として日本に来て1年目の場合は非居住者にあたるため、年末調整の対象外です。
また、居住者に該当する外国人技能実習生であっても、以下の2点に当てはまる場合は年末調整の対象外となります。
- 1年間の給与の総額が2,000万円を超える人
- 災害減免法により所得税および復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人
これらのケースは稀かもしれませんが、該当する可能性がある場合は注意が必要です。
企業側は、各技能実習生の状況を個別に確認し、年末調整の要否を判断しましょう。
外国人技能実習生の年末調整で注意すべき扶養控除について
外国人技能実習生の年末調整において、特に注意が必要なのが扶養控除です。
母国に家族を残して来日している技能実習生も多いため、扶養控除の適用には慎重な判断が求められます。
ここでは、扶養控除の要件と必要な提出書類について詳しく解説します。
扶養控除の要件
外国人技能実習生が年末調整で扶養控除を受けるためには、対象とする扶養親族が以下の要件を満たす必要があります。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族や3親等内の姻族)、都道府県知事から養育を委託された児童、市町村長から養護を委託された老人のいずれかに該当すること。
- 納税者と生計を一にしていること(必ずしも納税者と一緒に住んでいる必要はありません)。
- 1に該当する方のうちで、年間合計所得金額が48万円以下(給与所得のみの場合は給与収入が103万円以下)であること。
- 青色申告者の事業専従者として、その年を通して給与の支払いを一度も受けていないこと、あるいは白色申告者の事業専従者でないこと。
さらに、令和5年1月から扶養控除の要件が変更になり、以下の条件が加わりました。
- 年齢16歳以上30歳未満の者
- 年齢70歳以上の者
- 年齢30歳以上70歳未満の者のうち、次の①から③までのいずれかに該当する者
① 留学により国内に住所および居所を有しなくなった者
② 障がい者
③ その居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている者
以前は16歳以上が対象でしたが、現在は扶養できる範囲が狭くなっています。
企業側は、これらの要件を十分に理解し、技能実習生の扶養控除申請が適切に行われるようサポートすることが重要です。
提出書類
年末調整で扶養控除を受けるためには、給与所得者の扶養控除等申告書に必要な書類を添付して提出する必要があります。
令和5年以降、新たな要件が加わったため、区分ごとに以下の提出書類が必要になりました。
非居住者である親族の年齢区分 | 扶養控除に必要な書類 | |
16歳以上30歳未満または70歳以上 | 親族関係書類、送金関係書類 | |
30歳以上70歳未満 | 留学により国内に住所および居所を有しなくなった者 | 親族関係書類、留学ビザ等書類、送金関係書類 |
障がい者 | 親族関係書類、送金関係書類 | |
その居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている者 | 親族関係書類、38万円送金書類 |
これらの書類を適切に準備し、提出することが重要です。
特に、海外に扶養家族がいる場合は、日本人従業員とは異なる書類が必要となるため、十分な注意が必要です。
外国人技能実習生の年末調整の流れ
外国人技能実習生の年末調整は、基本的に日本人従業員と同様の流れで行われます。
ただし、技能実習生は年末調整の知識が十分でない場合が多いため、会社側が適切にフォローすることが重要です。
年末調整の具体的な流れは以下のとおりです。
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの書類を技能実習生が提出する。
- 「給与所得の源泉徴収税額表」によって源泉徴収を行う。
- 納付すべき所得税の精算を行う。
この流れ自体は日本人従業員と変わりませんが、技能実習生の場合は言語の壁や制度の理解不足などの課題があります。
そのため、会社側は余裕を持って書類の準備を進め、必要に応じて通訳を介して丁寧に説明することが大切です。
特に、海外に扶養家族がいる場合など、日本人従業員とは異なる書類を作成する必要があるため、十分な時間的余裕を持って準備を進めましょう。
また、技能実習生の個別の事情に応じて、適切な対応を心がけることが重要です。
外国人技能実習生の年末調整について理解を深めてスムーズに手続きを行おう
外国人技能実習生の年末調整は、基本的な流れを理解し適切に準備することで、スムーズに進められます。
重要なのは、技能実習生の居住者・非居住者の区分を正確に把握し、扶養控除の要件や必要書類を十分に理解することです。
令和5年からの扶養控除要件の変更に注意し、技能実習生の個別の状況を慎重に確認しましょう。
海外に扶養家族がいる場合は特有の書類が必要となるため、余裕を持った準備が大切です。
言語面でのサポートや制度の丁寧な説明を心がけることで、技能実習生の権利を守り、企業のコンプライアンスを維持できます。
適切な年末調整の実施は、技能実習生と企業の双方にとって、より良い就労環境づくりにつながるのです。