特定技能外国人の雇用を検討する企業にとって、送り出し機関の選択は重要な課題です。
送り出し機関の利用は、すべての特定技能外国人の雇用に義務付けられているわけではありません。
ただし、雇用人材が在住している国によっては、指定の送り出し機関を通した手続きが必須となっている場合もあります。
適切な手順で特定技能外国人を受け入れるためにも、送り出し機関の必要性や利用が義務付けられているケースを理解しておきましょう。
本記事では、特定技能外国人に関わる送り出し機関の役割のほか、利用にかかる費用や機関の選び方、送り出し機関を通す必要がある国々などを詳しくお伝えします。
目次
特定技能の送り出し機関とは
特定技能の送り出し機関とは、特定技能の在留資格で働きたい外国人を日本の受け入れ機関に送客し、円滑に就労を開始できるようサポートする組織です。
送り出し機関は、基本的に海外現地で外国人を募集し、スキルなどを確認したうえで日本企業に紹介します。
機関の役割は、大きく以下の3つです。
- 海外現地での外国人の募集
- 特定技能に必要な技能試験・日本語能力試験への合格確認
- 要件を満たす人材を日本の受け入れ機関(企業など)に紹介
特定技能外国人を採用要件とする企業の場合、送り出し機関から紹介を受ける人材は、すでに技能試験や日本語能力試験に合格しています。
企業の代わりに機関が現地で採用活動を行い、要件を満たす人材を見つけてくれるため、特定技能外国人をスムーズに受け入れられるのがメリットです。
特定技能の送り出し機関利用は不要?
特定技能外国人の雇用時に送り出し機関を利用すべきか否かは、雇用したい人材が住んでいる国によって変わってきます。
技能実習生の受け入れ時は、送り出し機関の利用が原則必要となりますが、特定技能制度では必ずしも関与が求められるわけではありません。
入管法や相手国の法令などを遵守していれば、企業と特定技能外国人が直接雇用契約を結ぶこともできます。
一方で、注意しておきたいのが、相手国によっては二国間協定の締結内容に基づき、送り出し機関の利用が義務付けられている場合もあるという点です。
この場合、相手国で認定された送り出し機関を通じて手続きを行うことで、特定技能外国人の受け入れが認められます。
したがって、特定技能外国人を雇用する際は、特定技能の協力覚書が存在する対象国を確認し、適切な手続きを経ることが重要です。
特定技能の送り出し機関にかかる費用
送り出し機関を利用して特定技能外国人を雇用する場合、手数料が発生します。
主に事前教育費用や雇用契約終了後の帰国費用などが含まれますが、具体的な費用は送り出し機関によって異なるため、事前に機関へ問い合わせておきましょう。
例としてベトナムの場合、送り出し機関に支払う手数料の相場は20~60万円です。
送り出し機関を選ぶ際は、費用の透明性や妥当性も重要な判断基準の一つとなります。
あまりに高すぎる・安すぎる費用を請求する送り出し機関には注意が必要です。
特定技能の送り出し機関を選ぶ際のポイント
特定技能外国人の送り出し機関を利用する場合、以下3つのポイントをふまえたうえで、信頼できる機関を選定しましょう。
- 政府認定の機関から選択する
- 費用が上限を超えていないか確認する
- 担当者が日本語スキルを保有しているか把握する
雇用後の思わぬトラブルを防ぐためにも、各種法令を遵守し、適正なサポートを行ってくれる送り出し機関を見極めることが大切です。
政府認定の機関から選択する
送り出し機関を選ぶ際は、政府認定の機関であることを重要視しましょう。
相手国によっては、認定を受けていない機関を利用しても問題ない場合がありますが、なかには違法性の高いあっせんを行う団体も存在します。
政府による認定の有無は、法令を遵守したうえで、適切に業務を遂行している機関かどうかを見極めるための有効な判断材料です。
費用が上限を超えていないか確認する
相手国によっては、送り出し機関へ支払う費用に上限額が設定されています。
違法性のある機関を避けるには、請求された費用が上限を超えておらず、正当であることも確認しておきたいポイントです。
ただし、安価に利用できる送り出し機関が最良の選択肢とは限りません。
あまりに安い場合、渡航費用が含まれていなかったり、サポートが不十分だったりする恐れもあります。
費用の内訳を確認し、必要なサポートが含まれているか、適切な価格設定になっているかを慎重に判断してみてください。
担当者が日本語スキルを保有しているか把握する
送り出し機関とやり取りをするなかで、担当者の日本語スキルも把握しておきましょう。
日本語が得意でない担当者の場合、コミュニケーションがうまく取れず、誤解や行き違いが生じる可能性があるためです。
万が一トラブルが発生した際にも、意思疎通がスムーズだと、早期の対応や問題解決が期待できます。
日本語の扱いに長けた担当者が在籍する機関であれば、手続きや書類作成におけるミスも防ぎやすくなるでしょう。
担当者の対応とあわせて、機関の実績や評価などの客観的な情報もリサーチしてみてください。
特定技能の送り出し機関の指定がある国
外国人を特定技能で受け入れる際、相手国によっては、指定の送り出し機関を利用しなければなりません。
こうした規定のある国は、日本と二国間協定を結び、特定技能外国人を受け入れる企業に対して所定の手順で雇用を行うよう義務付けています。
ここでは、送り出し機関や受け入れ手順に指定がある4ヵ国を例に見てみましょう。
フィリピン
フィリピン国籍の特定技能外国人を受け入れる場合、指定された送り出し機関の利用と手続きが必要です。
フィリピンの制度では、フィリピン政府の認定を受けた現地機関と取り決めを結び、人材の紹介を受けなければなりません。
認定を受けた送り出し機関は、出入国在留管理庁ホームページで閲覧できる「フィリピンの認定送出機関(PDF)」から確認が可能です。
同じく出入国在留管理庁は、「フィリピンに関する情報」のページでフィリピン国籍の特定技能外国人の受け入れ手順をまとめているため、こちらも参考にしてみてください。
ベトナム
ベトナムから特定技能外国人を受け入れるには、DOLAB(ベトナム労働・傷病兵・社会問題省海外労働管理局)が認定した送り出し機関と契約を結ぶ必要があります。
出入国在留管理庁「ベトナムに関する情報」のページから、認定送り出し機関をまとめたExcelファイルや手続きのフローチャートをダウンロード可能です。
DOLABの認定を受けた機関から紹介される外国人は、ベトナム側での手続きが完了したことを証明する推薦者表を持っています。
この推薦者表は、特定技能の在留資格申請時に使用するため、雇用契約を締結した外国人本人から日本へ送付してもらいましょう。
ミャンマー
ミャンマーから特定技能外国人を受け入れるには、MOLIP(ミャンマー労働・入国管理・人口省)から認定を受けた現地の送り出し機関の利用が必須です。
認定送り出し機関から人材紹介を受け、同機関を通じて雇用契約を結びます。
すでに日本に在留しているミャンマーの人材であれば、送り出し機関を通さずに雇用を行っても問題ありません。
認定の送り出し機関の一覧は、出入国在留管理庁のホームページにある「ミャンマーの認定送出機関(PDF)」にまとめられています。
受け入れに関わる全体の流れは「ミャンマーに関する情報」のページで確認してみましょう。
カンボジア
カンボジアから特定技能外国人を受け入れるには、認定送り出し機関を利用して人材の紹介を受けたうえで、雇用契約の締結へ進まなければなりません。
外国人本人でも、カンボジアの認定送り出し機関を通じて、MoLVT(カンボジア労働職業訓練省)に登録証明書の発行を申請する必要があります。
特定技能の在留資格申請時にこの登録証明書が求められるため、発行され次第、外国人本人から送付してもらいましょう。
出入国在留管理庁のホームページから、カンボジアの認定送り出し機関が一覧になった「カンボジアの認定送出機関(PDF)」を閲覧できます。
また、同サイトの「カンボジアに関する情報」のページで、カンボジアの特定技能外国人雇用に関する情報をまとめられているため、あわせて確認してみてください。
なお、日本に在留しているカンボジア国籍人材に対して採用活動を行う場合は、認定送り出し機関を介さず雇用しても問題ありません。
特定技能の送り出し機関の選び方や注意点を把握しておこう
特定技能の送り出し機関は、日本で働きたい外国人がスキルを活かして就労できるようサポートを行う存在です。
技能実習生の受け入れでは、送り出し機関の関与が原則必要となるのに対し、特定技能外国人の場合は必ずしも利用が義務付けられているわけではありません。
ただし、日本と二国間協定を結んでいる国のなかには、指定の送り出し機関での手続きが必須となっているところもあります。
本記事では、受け入れ機関に指定がある国としてフィリピン、ベトナム、ミャンマー、カンボジアを例に紹介しました。
なお、二国間協定による定めがない相手国であっても、送り出し機関の利用は可能です。
この場合、政府の認定を受けた機関であること、利用にかかる費用が上限を超えていないこと、担当者の日本語スキルなどを確認し、信頼性を見極めることが重要です。
違法性がなく、適切なサポートを提供している送り出し機関を選定し、特定技能外国人の円滑な受け入れをめざしましょう。