令和6年3月に特定技能1号の職種に4分野、特定技能2号では9分野が新たに追加されました。
また、既存分野3つの対象業務も拡大・見直しがされています。
今回は、特定技能に追加された分野とその試験内容、拡大された業務内容について解説します。
特定技能外国人の受入れを検討している事業者の方はぜひ参考にしてみてください。
目次
【令和6年3月】特定技能1号の職種が新たに4種追加の方向へ
令和6年3月29日の閣議決定により、特定技能の対象分野が4つ追加されることが発表されました。
これにより、特定技能外国人の活躍の場がさらに広がることが期待されています。
以下では、新たに追加される分野4つと試験内容について見ていきましょう。
特定技能1号の職種として新たに追加された分野4つ
令和6年3月29日の閣議決定で、特定技能に「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の職種を追加することが発表されました。
それぞれの業務内容と受入れ見込み人数を以下の表にまとめました。
分野 | 業務内容 | 令和6年4月から5年間の受入れ見込み人数 |
自動車運送業 | バス、タクシー、トラックの運転 | 24,500人 |
鉄道 | 運輸係員(運転士・車掌・駅係員) 軌道整備 電気設備整備 車両製造 車両整備 |
3,800人 |
林業 | 育林、素材生産、林業種苗育成など | 1,000人 |
木材産業 | 木材の加工工程およびその附帯作業など | 5,000人 |
(出典:特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加の概要 | 出入国在留管理庁)
追加前は特定技能1号の対象は12分野でしたが、今回の変更で16分野に拡大されました。
追加された4分野のうち、受入れ見込み人数が最も多い分野は、自動車運送業となっています。
特定技能1号の職種として追加された分野の試験内容
新たに追加された4分野は特定技能1号のみ受入れが可能になっています。
特定技能1号の在留資格を取得するには、技能試験と日本語能力試験の合格が必要です。
技能試験ではそれぞれの該当分野に関する知識や業務の遂行能力が試されます。
日本語試験は国際交流基金日本語基礎テスト、または日本語能力試験のN4以上に合格する必要があります。
ただし、自動車運送分野のバス運転者とタクシー運転者、鉄道分野の運輸係員(運転士、車掌、駅係員)で求められるレベルは、N4より難易度が高いN3以上です。
N4は基本的な日本語を理解できるレベル、N3は日常場面で使われる日本語をある程度理解できるレベルと定められています。
【令和5年6月】特定技能2号の職種に9分野の追加が決定
これまで特定技能2号の対象職種は建設分野と造船・舶用工業分野(溶接区分)だけでした。
しかし令和5年6月9日の閣議決定で、新たに9つの分野が追加され対象職種が大幅に拡大されました。
追加された9つの分野は以下のとおりです。
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業(旧素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
ただし、介護分野は在留資格「介護」があるため、特定技能2号の対象分野にされていません。
【令和6年3月】特定技能の既存分野3つも業務内容拡大へ
令和6年3月には、特定技能の既存分野3つの業務内容が拡大されることも決定しました。
これにより、さらに多くの業種で特定技能外国人の受入れが可能になります。
以下では、「工業製品製造業」「船舶・舶用工業」「飲食料品製造業」の3分野で拡大される業務内容について解説します。
工業製品製造業
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業は、対象業務の拡大にともない、「工業製品製造業」に名称が変更されました。
工業製品製造業で新たに追加された業務区分は、以下の7つです。
- 紙器・段ボール箱製造
- コンクリート製品製造
- 陶磁器製品製造
- 紡織製品製造
- 縫製
- RPF製造
- 印紙・製本
前の5年間の受入れ見込み数が49,750人であったのに対し、令和6年4月から5年間では173,300人と大幅に拡大しました。
造船・舶用工業
造船・舶用工業では、見直し前は業務区分が6つに分かれており、作業内容も限定的でした。
しかし今回の見直しで業務区分を3区分に再編し、作業範囲が拡大されています。
見直し後の業務区分と作業内容は以下のとおりです。
業務区分 | 作業内容 |
造船区分 | 溶接、鉄工、塗装 【以下新たに追加】 配管、とび、船舶加工 |
船舶機械区分 | 溶接、仕上げ、塗装、機械加工、鉄工 【以下新たに追加】 鋳造、機械保全、金属プレス加工、強化プラスチック成形、配管、舶用機械加工 |
船舶電気電子機器区分 | 機械加工、電気機器組立て 【以下新たに追加】 電子機器組立て、機械保全、プリント配線板製造、舶用電気電子機器加工、金属プレス加工、配管 |
(出典:造船・舶用工業分野における業務区分再編について | 国土交通省)
以前は、溶接区分や塗装区分というように、作業内容によって分けられていました。
見直し後は、技能の関連性と業務の連続性を踏まえて、関連作業を同じ区分に統合しています。
飲食料品製造業
飲食料品製造業では、受入れが認められる事業所が追加されました。
追加対象の事業所は、食料品スーパーマーケットおよび総合スーパーマーケットの食料品部門です。
これらの事業所では、惣菜などの製造が従事できる業務となっています。
なお、飲食料品製造業における業務区分に変更はありません。
特定技能の職種として新たに追加された分野や内容もチェックしておこう
特定技能1号の対象分野に、「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4つが追加されました。
特定技能2号においても、既存の特定技能1号対象分野のうち、介護を除く9分野が新しく追加されています。また、「工業製品製造業」「造船・舶用工業」「飲食料品製造業」の3分野では、業務内容の拡大や業務区分の再編などが行われました。
これらの特定技能制度の見直しによって、多くの業種で特定技能外国人の雇用が促進されていくでしょう。
人手不足に悩む企業は、特定技能外国人の受入れを検討してみてはいかがでしょうか。