飲食業分野の人手不足が深刻化するなか、特定技能制度を利用した外国人の受け入れは、即戦力人材を獲得するために有効な手段です。
特定技能制度は、労働力が不足している特定産業分野において、一定の専門性を持った外国人の受け入れを進めるべく創設されました。
特定産業分野は2024年6月時点で12分野ありますが、そのうち「外食業」の特定技能を取得した外国人は、飲食店などで雇用が可能です。
本記事では、外食業分野で特定技能外国人を雇用するメリットや任せられる業務などを解説します。
目次
特定技能人材を飲食店で雇用できるのか?
外食業分野の特定技能外国人は、飲食店で雇用できます。
食品衛生や調理、接客スキルなど、飲食店で従事するために必要な知識を身につけた外国人は、人手不足解消とともにサービス品質の向上にも貢献してくれるでしょう。
特定技能「外食業分野」とは?
特定技能は、人手不足が深刻化する日本の産業分野において、専門性を身につけた外国人を受け入れ、労働力・生産力を確保することを目的に創設されました。
外食業は、特定技能外国人の受け入れが可能な特定産業分野12分野の一つです。
飲食店をはじめ、持ち帰り・宅配飲食サービス業、給食事業なども外食業に該当します。
外国人が外食業の特定技能を取得するには、一定の知識・技術を身につけなければならず、その専門性を活かして調理や接客などの幅広い業務に従事が可能です。
特定技能「外食業分野」の必要性
外食業の有効求人倍率は、特定技能制度の対象分野の全体平均と比べても高い水準にあり、人手不足が喫緊の課題となっています。
2020年の有効求人倍率を見ると、全産業平均が1.1倍だったのに対し、外食業平均は2.2倍でした。
外食業界は、インバウンド需要への対応が求められる一方で、付加価値の高いサービス提供が重要視されており、機械化での省力化には限界があります。
そこで注目を浴びているのが、一定の専門性を持った特定技能外国人の存在です。
2023年8月には、特定技能2号外国人の受け入れ対象分野に外食業が追加され、より高いスキルを持った人材を雇用できるようになりました。
飲食店で特定技能人材に任せられる業務
外食業の特定技能を取得した外国人には、調理や接客、店舗管理などさまざまな業務を任せられます。
外国人ならではのグローバルな視点を活かして、業務効率化やサービス品質向上に寄与してくれるでしょう。
ここからは、飲食店で特定技能外国人に任せられる業務範囲を解説します。
調理
農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」によると、特定技能外国人が従事できる調理業務とは、客に提供する飲食物の調理・調整・製造を指します。
食材の仕込みから加熱調理、盛り付けまで、一連の調理工程を担当可能です。
接客
農林水産省の同資料によると、特定技能人材に任せられる接客業務とは、来店した方へ飲食料品を提供する際に生じる調理以外の業務を指します。
具体的には、席への案内やオーダー取り、配膳業務などのことです。
特定技能外国人は、一定の日本語能力を身につけているだけでなく、英語などの複数言語でコミュニケーションをとれるという強みがあります。
訪日外国人の来店にも臨機応変に対応し、要望を聞き取ってメニューを提案するなど、グローバルな接客スキルを発揮してくれるでしょう。
店舗管理
外食業分野の特定技能外国人は、飲食店運営のために必要とされる、調理・接客以外の店舗管理業務にも従事できます。
従業員の指導やシフト管理、求人・雇用に関する事務、店内オペレーションの改善提案など、幅広い業務が想定されるでしょう。
外国人ならではのアイデアを活かした新メニューの開発、POP広告の作成なども、店舗管理業務の一環です。
配達
外食業の特定技能外国人は、顧客の注文に応じて店舗で調理した飲食物を指定の場所まで届ける、配達業務にも従事が可能です。
弁当屋や仕出し料理、飲食物宅配の専門店、配食サービス事業所などで活躍できます。
飲食店で働く日本人が担当して違和感のない業務
農林水産省は、外食業分野の特定技能外国人の業務範囲について、同じく飲食店で働く日本人スタッフの通常業務に付随したものであれば、携わっても問題ないとしています。
具体的には、店舗で提供する食品の原材料の生産、店頭における調理品以外の物品販売などは、外食業に従事するうえで付随的に発生する可能性があるでしょう。
ただし風俗営業法に反する就労は行わせない
特定技能外国人は、キャバクラやホストクラブをはじめとした風俗営業、または性風俗関連特殊営業を営む事業所では就労できません。
仮に飲食料の調理や接客、店舗管理などを担当させる場合であっても、風俗営業法に規定された接待などをともなう事業所では、特定技能外国人の雇用そのものが禁じられています。
特定技能人材が飲食店で働くために必要な資格
日本での就労を希望する外国人が、外食業分野の特定技能を取得するには、試験合格などの要件を満たす必要があります。
特定技能1号と2号では取得要件が異なるため、特定技能外国人の採用を考えている飲食店側でも、人材にどの程度の技能水準を求めるのか明確にしておきましょう。
必須要件
外食業分野に限らず、特定技能の在留資格を取得するには、外国人が18歳以上であることが前提となります。
また、外国人が特定技能の専門性を活かして継続的に活躍するためにも、あらかじめ医師による健康診断を受けてもらわなければなりません。
そのうえで、外国人は日本語試験と技能試験に合格し、該当の特定産業分野で従事するに相当するスキルを証明する必要があります。
日本語試験
外食業の特定技能1号を取得する場合、「国際交流基金日本語基礎テスト(A2以上)」もしくは「日本語能力試験(N4以上)」への合格が求められます。
いずれも、簡単な言葉で情報交換をしたり自分の状況を説明したりなど、日常生活を送るうえで支障が出ない程度の基本的な日本語を理解できるレベルです。
さらに特定技能2号では、日本語能力試験N3以上の合格が必要になります。
N3は、ある程度難易度が高い日常会話が理解でき、接客に支障がないレベルです。
多少難易度の高い説明も簡単な表現に言い換えれば伝わるため、接客業務にもスムーズに取り組んでもらえるでしょう。
技能試験
外食業で特定技能を取得するには、1号・2号それぞれに応じた技能測定試験に合格しなければなりません。
例外として、「医療・福祉施設給食製造」の技能実習2号を良好に修了した外国人については、試験を受けずに特定技能1号となることが可能です。
技能試験はペーパーテスト方式で実施され、学科試験と実技試験に分かれています。
衛生管理や飲食物調理、接客全般に関する知識・技能が問われるため、試験対策は必須といえるでしょう。
さらに特定技能2号の場合は、一定の実務経験も必須要件となっているのが特徴です。
複数のアルバイトスタッフや特定技能外国人を指導・監督しながら、接客を含む店舗管理業務に2年以上従事することで、要件を満たせます。
飲食店でも特定技能人材を雇用してみよう
外食業分野の特定技能外国人は、飲食店で調理・接客・店舗管理などの幅広い業務に従事できます。
特定技能の専門性と外国人ならではの視点を活かしながら、即戦力として活躍してくれるでしょう。
ただし、外国人が特定技能の在留資格を取得するには、原則として日本語試験と技能試験に合格しなければなりません。
特定技能2号の場合は、さらに一定の実務経験も必須要件となります。
自店で任せたい業務の内容と求める技能水準をふまえて、人手不足解消や即戦力の獲得のために、特定技能制度を活用してみてはいかがでしょうか。