近年、日本の農業分野では、深刻な人手不足が問題となっています。
その解決策として注目されているのが、外国人材の活用です。
とりわけ、特定技能2号の制度は、熟練した技能を持つ外国人材を、日本の農業現場で積極的に受け入れることができると期待されています。
本記事では、特定技能2号の農業分野について、そのなり方や条件を詳しく解説します。
目次
特定技能2号の農業分野とは?
特定技能2号は、特定技能外国人のなかでも、熟練した技能を持つ人材のみが認められる資格です。
長期間の在留や家族の帯同などが可能であり、安定的に働けるため、貴重な労働力になると期待されています。
今までは、特定産業分野のうち建設分野と造船・舶用工業分野の溶接区分のみが対象でした。
しかし、近年の人手不足を鑑み、農業分野を含む9分野においても特定技能2号が設置されました。
長年の実務経験で磨いた技能の発揮や、監督者としての業務統括の役割などが期待されます。
農業分野で特定技能1号から特定技能2号になるには?
農業分野で特定技能1号から2号になるためには、どのような条件が必要なのでしょうか。
ここでは、必要な試験、業務経験、書類について詳しく見ていきます。
必要な試験
農業分野での2号への移行には、「2号農業技能測定試験」に合格することが必要です。
耕種農業と畜産農業のそれぞれの分野で、試験が実施されています。
ただし、試験を受けるためには満17歳以上であることだけでなく、一定期間以上の実務経験も必要になるので注意が必要です。
なお、2号では日本語能力を問う日本語試験はありません。
必要な業務経験
農業分野で特定技能1号から2号になるためには、耕種農業と畜産農業のそれぞれの分野で、以下のような経験が求められます。
農業の種類 | 求められる経験 |
耕種農業 | ①耕種農業で複数の作業員を指導しながら作業に従事し、工程管理を行った2年以上の経験 ②耕種農業における3年以上の実務経験 |
畜産農業 | ①畜産農業で複数の作業員を指導しながら作業に従事し、工程管理を行った2年以上の経験 ②畜産農業における3年以上の実務経験 |
つまり、実務経験や指導経験がないと、特定技能2号へ移行はできないということです。
必要な書類
特定技能2号として認められるためには、一定の業務・指導経験を積み、試験を受けて合格したうえで、所定の書類を提出しなければなりません。
提出が必要な書類は全部で15種類あり、該当外国人と受け入れ機関で協力しながら作成していく必要があります。
主な書類は以下のとおりです。
- 特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧表
- 在留資格変更許可申請書
- 特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 特定技能雇用契約書の写し
- 雇用条件書の写しと賃金の支払
- 雇用の経緯に係る説明書
- 徴収費用の説明書
- 健康診断個人票と受診者の申告書
- 申請人の個人住民税の課税証明書・申請人の住民税の納税証明書・申請人の給与所得の源泉徴収票の写し
- 申請人の国民健康保険被保険者証の写し・申請人の国民健康保険料(税)納付証明書
- 申請人の国民年金保険料領収証書の写しまたは申請人の被保険者記録照会
- 前回申請時に履行すべきであった公的義務に係る書類
- 公的義務履行に関する誓約書
- 技能移転に係る申告書
- 二国間取決において定められた遵守すべき手続に係る書類
ただし、一部の書類については、場合によっては提出が不要のケースもあるので注意が必要です。
特定技能2号の農業分野の受け入れ条件
特定技能の農業分野で外国人材を受け入れるためには、以下のような条件を満たす必要があります。
1号の場合も2号の場合も同条件です。
- 直接雇用形態の場合、特定技能所属機関となる事業者は、労働者を一定期間以上雇用した経験またはこれに準ずる経験があること
- 労働者派遣の場合は、派遣事業者側が農業現場の実態把握をし特定技能外国人の受け入れを適正に処理していること、かつ一定期間労働者を雇用した経験や派遣先責任者講習などを受講した者を派遣先責任者に置いていること
- 「農業特定技能協議会」の構成員になる
- 協議会に対して必要な協力を行う
- 登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するにあたっては、協議会に対し必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
- 特定技能外国人からの求めに応じ、実務経験を証明する書面を交付すること
特定技能2号の人材は農業分野で心強い存在
特定技能2号の制度が農業分野に拡大されたことで、熟練した技能を持つ外国人材の活用が期待されています。
彼らは長期間の在留や家族の帯同が可能なため、長く日本の農業現場を支える貴重な戦力となるでしょう。
ただし、特定技能2号になるためには、一定の業務経験と試験合格が必要であり、受け入れ機関側にもさまざまな条件が課せられます。
外国人材の受け入れを検討する際は、これらの点に十分留意する必要があります。
とはいえ、人手不足に悩む農業分野にとって、特定技能2号の人材の存在は心強いものです。
彼らの力を借りて、日本の農業の発展につなげていくことが期待されます。