外国人労働者の雇用が増加するなか、不法就労に関する問題も注目されています。
本記事では、外国人が不法就労した場合に本人が受ける罰則と、雇用主側が受ける罰則について詳しく解説します。
企業の経営者や採用担当者のために、外国人雇用のリスク管理に役立つ情報をお届けするので、参考にしてください。
目次
不法就労によって本人が受ける罰則
外国人が不法就労を行った場合、本人に対してどのような罰則が科されるのでしょうか。
主な罰則として、強制送還と一定期間の入国禁止が挙げられます。
これらの罰則は、不法就労を抑止し、適切な労働環境を維持するために設けられています。
それぞれの罰則について、詳しく見ていきましょう。
強制送還される
不法就労が発覚した場合、外国人労働者は原則として自国へ強制送還されます。
近年、強制送還される外国人の数は増加傾向にあり、不法就労の事実を認められたケースはその約70%です。
今後、外国人労働者の増加にともない、さらなる不法就労の増加も懸念されています。
不法就労の手口も年々悪質化・巧妙化しており、以下のようなケースが報告されています。
- 在留カードなどを偽造したり、虚偽の文書を作成したりして在留資格のいずれかに該当するよう偽装し、不正に在留許可などを受けて不法就労を行うケース
- 明らかに難民に該当する事情がないにも関わらず難民認定申請を行い、就労するケース
- 技能実習生が実習実施先を失踪し、他所で就労するケース
このような状況を受け、当局は不法就労を取り締まるための対策を強化しています。
強制送還を含む罰則の強化も考えられ、企業側でも外国人雇用の際には十分な注意が必要です。
一定期間入国できなくなる
強制送還された外国人は、例外を除き日本を退去した日から一定期間再入国ができません。
この期間は「上陸拒否期間」と呼ばれ、不法就労の抑止力として機能しています。
上陸拒否期間の長さは、以下のように定められています。
- 初めて強制送還された場合:退去強制された日から5年間
- 過去に日本から退去強制されたり、出国命令を受けて出国したことがある場合:退去強制された日から10年間
ただし、より重大な違反を犯した場合は、さらに厳しい措置が取られます。
例えば、国内外の法令に違反して1年以上の懲役や禁錮などに罰せられた場合や、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤などの取締りに関する法令に違反して罰せられた場合は、日本に再入国することができなくなるのです。
なお、強制退去や上陸拒否を避けたい場合、在留特別許可を申請する方法もあります。
在留特別許可は、強制退去に該当した外国人を対象として、在留を許可する制度です。
ただし、個人の事情や背景により判断されるため、すべての申請者が許可を受けられるわけではありません。
不法就労は本人以外にも罰則がある
不法就労の問題は、外国人労働者本人だけでなく、雇用主側にも大きな影響を及ぼします。
不法就労者を雇用した場合、「不法就労助長罪」として雇用主が罰則を受ける可能性もあるのです。
雇用主が働けない外国人と知りながら雇用した場合はもちろん、働けないことを知らなかったとしても、身分確認などをきちんと行わず雇用していたなど、雇用主に過失があった場合には罰則が適用されます。
具体的には、不法就労の外国人を雇用したり、あっせんしたりした場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
さらに、不法就労の外国人を雇い入れたり、離職させたりする際に、不法就労であることを隠すためにハローワークに届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりすると、30万円以下の罰金に処せられます。
不法就労は本人だけでなく雇用主も罰せられるため注意しよう
不法就労は、外国人労働者と雇用主の双方に重大な影響を及ぼします。
外国人労働者は強制送還や入国禁止などの厳しい罰則を受け、将来のキャリアに支障をきたす可能性があるでしょう。
一方、雇用主も不法就労助長罪として懲役や罰金の対象となり、企業の信用や経営に悪影響を及ぼします。
外国人雇用の際は、在留資格の確認や適切な雇用手続きを確実に行い、法令を遵守することが極めて重要です。
また、適切な労働環境を整備することで、不法就労のリスクを軽減できます。
経営者や採用担当者は、これらの点に十分注意を払い、適切な外国人雇用を実現することが必要です。