外国人材の採用を検討している企業にとって、入管法(出入国管理及び難民認定法)の理解は不可欠です。
特に、在留資格の取得や更新に関する手続きでは、虚偽申請を行うと深刻な結果を招く可能性があります。
本記事では、入管法における虚偽申請の罰則について詳しく解説します。
経営者や採用担当者が法的リスクを理解し、適切な外国人採用を行うための指針となるでしょう。
目次
入管法で虚偽申請をした場合の罰則
入管法では、虚偽申請に対して厳しい姿勢で臨んでいます。
虚偽申請を行った場合、懲役や罰金などの罰則が課されるだけでなく、在留資格の取り消しにもつながる可能性があります。
具体的な罪状として、従来多く適用されてきた「公正証書原本不実記録罪」に加え、「在留資格等不正取得罪」と「営利目的在留資格等不正取得助長罪」の2つが新たに定められました。
これらの罪状について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
在留資格等不正取得罪
在留資格等不正取得罪とは、虚偽申請など不正な手段を用いて在留資格を取得した外国人に対する罰則です。
この罪に問われた場合、3年以下の懲役か禁錮、または300万円以下の罰金、もしくは懲役と罰金の併科が課されることがあります。
注意すべき点は、この罰則が新規の在留資格取得手続きだけでなく、在留資格の変更や在留期間の更新時にも適用される点です。
つまり、すでに日本に滞在している外国人従業員が、資格変更や更新の際に虚偽申請を行った場合も、同様に罰則の対象となります。
営利目的在留資格等不正取得助長罪
営利目的在留資格等不正取得助長罪は、虚偽申請など不正な手段で在留資格を得ようとする外国人を、金銭を受け取るなどの営利目的でサポートした場合に適用される罰則です。
この罪に問われた場合も、3年以下の懲役および禁錮または300万円以下の罰金、もしくは懲役と罰金の併科が課されることがあります。
この法律の制定により、弁護士や行政書士、旅行業者、公益法人など、在留資格取得に必要な書類を代理で提出できる取次者も罰則の対象となりました。
企業が外国人採用の手続きを第三者に依頼する際は、その業者の信頼性を十分に確認することが重要です。
虚偽申請は在留資格の取り消し事由になり得る
虚偽申請など不正な手段で在留資格を取得しようとした場合、入管法により在留資格の取得が許可されないだけでなく、すでに取得している在留資格の取り消し事由にもなります。
在留資格が取り消されると、指定された期間内に出国しなければなりません。
さらに、退去強制に該当した場合は、以後5年間日本への上陸が拒否されるという厳しい措置が取られます。
特に注意すべき点は、仲介人やエージェントが虚偽申請をした場合でも、申請者本人の在留資格が取り消される可能性があることです。
申請者本人が故意ではない場合でも、在留資格の取り消し事由になるため、企業側も採用プロセスにおいて細心の注意を払う必要があります。
虚偽申請になるケース
虚偽申請にはさまざまなケースがあります。
代表的なものとしては、以下のようなケースが挙げられます。
- 意図的に嘘をついて申請をする
- 申請に不利益な内容を隠すことによって許可を得る
- 偽造した文書を提出する
具体的な事例としては、偽装結婚により在留資格を取得したことを隠す、虚偽の事業計画書や雇用理由書を提出するなどがあります。
また、営利目的在留資格等不正取得助長罪の例は、受入企業の職員が虚偽の書類を作成するケースなどです。
例えば、ハウスキーピングの単純業務に従事しているにも関わらず、通訳業務をしていると記載する行為などが該当します。
これらの行為は、たとえ善意であっても法律違反となる可能性があるため、十分な注意が必要です。
虚偽申請で入国した外国人を就労させた会社も罰則対象になる
虚偽申請により入国した外国人を就労させた場合、その会社も不法就労助長罪で罰則を受ける可能性があります。
不法就労助長罪が認められた場合、3年以下の懲役・禁錮または300万円以下の罰金、もしくは懲役と罰金の併科が課されることがあります。
注意すべき点は、たとえ外国人が虚偽申請で不法に就労していることを知らずに雇用した場合でも、在留カードを確認していないなど、企業側にも過失があれば罰せられる可能性があることです。
そのため、企業は在留カードの確認や入国に必要な書類の徹底的なチェック、信頼性の高い行政書士などへの申請依頼といった対策を講じる必要があります。
これらの対策を通じて、虚偽申請で入国した外国人を誤って採用するリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
入管法で虚偽申請は罰則にあたるため採用前の確認が大切
虚偽申請による入国は、入管法により外国人本人と関与した企業の双方に、厳しい罰則が科される可能性があります。
懲役・禁錮や罰金が課されるだけでなく、在留資格の取り消しにもつながるため、企業は貴重な人材を失うリスクも抱えています。
外国人材の採用を検討する際は、入管法への十分な理解や、在留カードの確認、必要書類の徹底的なチェック、信頼できる専門家への相談など、慎重な対応が不可欠です。