特定技能外国人材の受入れにあたり、企業は貴重な戦力を得られる一方で、失踪のリスクも考慮しなければなりません。
失踪が発生した場合、企業は厳しいペナルティを科される可能性があり、事業継続に大きな影響が及んでしまうことがあります。
本記事では、特定技能外国人が失踪した場合の企業へのペナルティや必要な届出、そして失踪を防ぐための具体的な対策について詳しく解説します。
目次
特定技能外国人が失踪した場合のペナルティ
特定技能外国人の失踪は、企業にとって深刻な問題となります。
失踪の原因が企業側にある場合、法令違反として以下のような厳しいペナルティが科されることがあるのです。
根拠法 | 失踪理由 | ペナルティ内容 |
労働基準法 | 賃金の未払い | 30万円以下の罰金 |
割増賃金の未払い | 6ヵ月以上の懲役または30万円以下の罰金 | |
労災隠し | 50万円以下の罰金 | |
不当な長時間労働や時間外労働 | 6ヵ⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦ | |
入管法 | 雇用条件に反する行為があった 特定技能外国人支援計画を正しく実施していない |
1年、3年、5年のいずれかの期間、特定技能外国人受入れ不可 |
特に、労働基準法違反や入管法違反が認められた場合、企業は事業継続に関わる重大な制裁を受ける可能性があるため、細心の注意を払わなくてはなりません。
特定技能外国人が失踪したら速やかに届出を行う
特定技能外国人の失踪を確認した場合、企業には速やかな届出義務が発生します。
14日以内に適切な手続きを行わない場合、追加のペナルティが科される可能性があるため、正確な対応が必要です。
また、出入国在留管理庁への届出だけでなく、関係機関への各種手続きも必要となります。
特定技能外国人の失踪を防ぐために
特定技能外国人の失踪を防ぐためには、適切な労務管理と充実したサポート体制の構築が不可欠です。
以下では、失踪防止のための具体的な施策について、項目別に詳しく解説していきます。
雇用契約内容を遵守する
雇用契約の適切な履行は、特定技能外国人との信頼関係を築く基礎です。
企業は日本人従業員と同等の待遇を保証し、契約内容を誠実に実行する必要があります。
特に重要なのは、雇用契約の説明時から就労開始後まで、一貫して特定技能外国人の理解と合意を得ながら進めることです。
給与を正しく支給する
給与の適切な支給は、特定技能外国人の失踪を防ぐ最も重要な要素の一つです。
日本人従業員と同等の給与水準を確保し、時間外労働や休日出勤に対する割増賃金も確実に支払う必要があります。
また、スキルアップやキャリア形成に応じた適切な昇給制度を設けることで、長期的な就労意欲を高めることができます。
受入れ後のサポート体制を充実させる
充実したサポート体制は、特定技能外国人が安心して働き続けるための重要な基盤となります。
来日直後は特に不安や戸惑いが大きいため、生活面から就労面まで、きめ細かなサポートが必要です。
求められるサポートとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 銀行口座の開設補助
- 携帯電話の契約補助
- 住居の手配
- 病院の探し方や受診方法の説明、同行
- 所属部署の上司を母国語が話せる人にする
- 職場に母国語で相談可能な部署の設立
- 日本語教育の実施
効果的なサポートを実現するには、組織的な体制づくりと、必要なリソースの確保が不可欠です。
差別や暴力を起こさない環境を作る
職場における差別や暴力の防止は、企業の社会的責任であり、法的義務でもあります。
特定技能外国人を対等な職場の仲間として受け入れ、互いを尊重し合える環境づくりが不可欠です。
問題が発生した場合の迅速な対応と、再発防止のための具体的な施策も必要となります。
従業員に対し異文化理解の教育を行う
異文化理解の促進は、職場の円滑なコミュニケーションを支える重要な要素です。
文化や習慣の違いによる誤解や摩擦を防ぐため、外国人だけでなく、受入れ側も含めた全従業員への教育が必要となります。
特に受入れ前の段階から、計画的な研修を実施することが効果的です。
特定技能外国人が失踪したら速やかに対応しよう
特定技能外国人の失踪は、企業にとって深刻な影響をもたらす問題です。
失踪が発生した場合は、14日以内に届け出るなど、法令で定められた対応を確実に行う必要があります。
しかし、最も重要なのは失踪を未然に防ぐための取り組みです。
適切な労務管理、充実したサポート体制、差別のない職場環境の整備など、総合的な対策を講じることで、特定技能外国人との良好な関係を築き、安定的な就労を実現することができるでしょう。