特定技能は、日本の人手不足解消のために設けられた在留資格です。
コロナ禍を経て、さまざまな産業分野の需要が高まったこともあり、特定技能外国人の受入れが加速していくでしょう。
本記事では、特定技能外国人の受入れ人数に制限がある分野や、受入れの見込み人数と現状について解説していきます。
目次
特定技能外国人の受け入れ人数に制限はある?
特定技能は、日本の人手不足解消のために設けられた在留資格で、技能実習と違い、外国人の受け入れ人数には基本的に制限がありません。
しかし、今後の人材不足の見込み人数を踏まえて受け入れ見込人数が定められています。
各分野の2024年度から5年間の受入れ見込人数は以下の表のとおりです。
分野 | 受け入れ見込人数 |
介護分野 | 135,000人 |
ビルクリーニング分野 | 37,000人 |
工業製品製造業分野 | 173,300人 |
建設分野 | 80,000人 |
造船・舶用工業分野 | 36,000人 |
自動車整備分野 | 10,000人 |
航空分野 | 4,400人 |
宿泊分野 | 23,000人 |
農業分野 | 78,000人 |
漁業分野 | 17,000人 |
飲食料品製造業分野 | 139,000人 |
外食業分野 | 53,000人 |
自動車運送業分野 | 24,500人 |
鉄道分野 | 3,800人 |
林業分野 | 1,000人 |
木材産業分野 | 5,000人 |
全分野合計 | 820,000人 |
(出典:特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加の概要 | 出入国在留管理庁)
特定技能の建設・介護分野が受け入れ人数に制限がある
特定技能外国人の受け入れ人数に制限がないなかで、建設分野と介護分野では一定の制限が設けられています。
以下では、両分野の特定技能外国人の受け入れ人数について解説します。
建設分野
建設分野で受け入れられる特定技能外国人の人数上限は、受け入れ企業の常勤職員(外国人技能実習生と1号特定技能外国人を除く)の人数です。
例えば、受け入れ企業の常勤職員が20名で、すでに特定技能外国人が5名働いている場合は、追加で受け入れできるのは15名までになります。
介護分野
介護分野での特定技能1号外国人の受け入れに関しては、事業所単位で日本人を含む常勤介護職員の総人数が上限となっています。
例えば、企業全体で30名の常勤介護職員がいたとしても、特定技能外国人を受け入れる事業所の常勤介護職員が5名であった場合は、その事業所では5名が上限です。
特定技能外国人の受け入れ人数の現状
ここまで2024年以降の特定技能外国人の受け入れ見込み数に関して解説してきました。
では、現状の特定技能外国人の受け入れ人数はどうなっているのでしょうか。
以下では、出入国在留管理庁が公表している2023年12月時点のデータをもとに、分野別・国籍別・都道府県別の特定技能外国人の受け入れ人数を見ていきましょう。
ただし、特定技能2号外国人は、2023年12月時点で受け入れ総数が37人と少数なので、特定技能1号外国人に絞って紹介します。
分野別
出入国在留管理庁が公表している2023年12月時点のデータをもとに、分野別の特定技能1号外国人の受け入れ人数を以下の表にまとめました。
分野 | 受け入れ人数 | 全体の割合 |
介護分野 | 28,400人 | 約13.6% |
ビルクリーニング分野 | 3,520人 | 約1.7% |
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野(現工業製品製造業分野) | 40,069人 | 約19.2% |
建設分野 | 24,433人 | 約11.7% |
造船・舶用工業分野 | 7,514人 | 約3.6% |
自動車整備分野 | 2,519人 | 約1.2% |
航空分野 | 632人 | 約0.3% |
宿泊分野 | 401人 | 約0.2% |
農業分野 | 23,861人 | 約11.4% |
漁業分野 | 2,669人 | 約1.3% |
飲食料品製造業分野 | 61,095人 | 約29.3% |
外食業分野 | 13,312人 | 約6.4% |
全分野を合わせた特定技能1号外国人の総数は208,425人です。
国籍別
2023年12月時点の特定技能1号外国人の受け入れ人数を、国籍別で表にまとめました。
国籍・地域 | 受入れ人数 | 全体の割合 |
ベトナム | 110,628人 | 約53.1% |
インドネシア | 34,253人 | 約16.4% |
フィリピン | 21,364人 | 約10.3% |
中国 | 13,456人 | 約6.5% |
ミャンマー | 11,873人 | 約5.7% |
カンボジア | 4,664人 | 約2.2% |
ネパール | 4,430人 | 約2.1% |
タイ | 4,359人 | 約2.1% |
その他 | 3,398人 | 約1.6% |
東南アジアを中心とする諸外国と日本政府との間で、円滑に特定技能外国人の送り出し・受け入れが行えるように協力関係を結んでいます。
そのため特定技能外国人の多くが、ベトナムやフィリピンといった東南アジア各国から来ているのが特徴です。
都道府県別
出入国在留管理庁が公表している2023年12月時点のデータにおいて、特定技能1号在留外国人数が最も多い上位10の都道府県は以下のとおりです。
- 愛知県:17,632人
- 大阪府:13,275人
- 埼玉県:12,396人
- 千葉県:12,293人
- 東京都:11,360人
- 茨城県:11,300人
- 神奈川県:10,829人
- 北海道:8,297人
- 福岡県:7,670人
- 兵庫県:7,619人
特定技能外国人の受け入れ人数は分野により異なる
特定技能制度は、日本の人手不足問題の解消のために設けられました。
技能実習と異なり、特定技能外国人の受け入れ人数にはほとんどの分野で制限がありません。
ただし、建設分野では受け入れ企業の常勤職員数が、介護分野では事業所の常勤介護職員数が、それぞれ受け入れ人数の上限となっている点に気を付けましょう。
基本的に受け入れ人数に制限はないものの、今後の人材不足の見込み数を踏まえて、令和6年度から5年間の受入れ見込数が定められています。
分野別の受け入れ見込数を見ると、工業製品製造業分野が約17.3万人なのに対し、林業分野では1,000人と、分野によって差が大きいです。
出入国在留管理庁のデータを見ると、特定技能外国人の受け入れは、2024年度以降、全分野で大きく増えていくでしょう。