日本で働く外国人の数は年々増加傾向にある一方で、多くの外国人が日本語の習得に苦労しているのが現状です。
日本語は、外国人にとって文法や発音の習得が難しい言語の一つとされています。
グローバル化が進む日本で外国人が活躍するには、外国人側が学習機会を作るだけでなく、採用する企業側でも受け入れ体制を整えることが大切です。
本記事では、外国人にとって日本語が難しい言語とされる理由と、外国人と日本人で円滑にコミュニケーションを行うためのコツを解説します。
目次
外国人にとって日本語が難しい理由
日本語を学ぶ外国人が苦労する理由には、漢字・ひらがな・カタカナをはじめとした文字や文法の難しさをはじめとして、さまざまな要因があります。
ここでは、外国人が日本語を学ぶうえで特に難しいと感じるポイントを7つ見てみましょう。
文法が英語などと違う
外国人にとって日本語の習得が難しいとされる理由の一つは、英語などの他言語と日本語では文法が異なるということです。
例えば、日本語と英語では語順が大きく異なります。
英語は主語・動詞・目的語の順で文を構成しますが、日本語では主語・目的語・動詞の順になるのが一般的です。
また、英語では原則として主語を入れるのに対し、日本語は主語を省略する場面も珍しくありません。
時制の表し方も、日本語と英語では異なります。
日本語の時制は現在形と過去形の2つ(語形としては「する」「した」の2種類、概念としては「現在」「過去」「未来」の3種類)ですが、英語は現在形、過去形、現在進行形、過去進行形などバリエーションが豊富です。
このため英語に限らず、日本語と文法の異なる言語を母国語とする外国人にとっては、習得の難易度が高くなります。
ひらがな・カタカナ・漢字・アルファベットがある
日本語には、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットの4種類の文字があり、日本人はこれらの文字を組み合わせて読み書きを行っています。
英語の場合、アルファベット26文字を覚えれば単語や文章を作ることが可能です。
しかし、日本語はひらがな46文字とカタカナ46文字、一般的に使用される常用漢字でも2,000文字以上を使いこなさなければなりません。
また、ひらがなやカタカナには濁音、半濁音、拗音などの表記も存在します。
日本語は多くの文字とルールを覚えたうえで組み合わせる必要があり、外国人にとって習得のハードルが高いといえるでしょう。
漢字の読みが複雑
漢字には複数の読み方があり、単語や使われ方によってどのように読むかが違ってくる点も、外国人にとって混乱しやすいポイントです。
「人気商品」の人気は「にんき」と読みますが、「人気のない道」の人気は「ひとけ」と読めるでしょう。
また、漢字には音読みと訓読みがあります。
音読みは中国語の発音が日本でなまったもので、訓読みは漢字に日本語の発音をあてたものです。
なかには「明日(あす)、明後日(あさって)」や「一人(ひとり)」のように特殊な読み方をする漢字もあり、外国人が習得するまでには苦労するかもしれません。
方言がある
日本語学校などに通う外国人は標準語を学びますが、日本の地方へ足を運ぶと方言を話す日本人も多いため、聞き取るのが難しいと感じるケースがあります。
日本には北海道方言や東北方言、北陸方言、九州方言などさまざまな方言が存在するだけでなく、地域によってより細かなニュアンスの違いが生じることも珍しくありません。
こうした方言は地域に根付いた文化や歴史を反映しているため、日本の言語の多様性を知るうえでも重要といえます。
外国人が日本で暮らす際は、標準語だけでなく、自分の居住地となる土地の簡単な挨拶やお礼の方言を覚えることから始めてみると良いでしょう。
あいまいな表現がある
日本語は主語や目的語が省略されやすいため、誰が何の話をしているのか理解しにくいことがあります。
英語の場合、主語・動詞・目的語という語順が基本であり、誰が何をしたのかが明確です。
一方、日本語は主語や目的語が省略されると、そのときのイントネーションや雰囲気で意味を読み取らなければなりません。
例えば「大丈夫」は、状況によって「問題ない」という意味にも「問題あり」という意味にも使われるでしょう。
このように日本語にはあいまいな表現が多いぶん、外国人からすると理解が難しいと感じやすくなります。
日本語オノマトペが難しい
オノマトペは擬音語や擬態語とも呼ばれ、音や状況、気持ちなどを表す言葉のことです。
雨が降っている様子を表す擬音語「ザーザー」や、怒っている様子を表す擬態語「イライラ」、静まり返った状況を表す「シーン」などが例に挙げられます。
日本語には約4,500種類ものオノマトペがあるといわれていますが、英語のオノマトペは1,000~1,500種類ほど、フランス語では600語程度です。
オノマトペは日本語の表現を豊かにするために欠かせない要素ですが、外国人にとっては習得のハードルが高いと感じるかもしれません。
すべてのオノマトペを覚えるのは難しいため、日本で暮らす外国人の方は日常会話でよく使われるオノマトペから少しずつ覚えていくと良いでしょう。
敬語が難しい
日本語には、相手に敬意を示すために使われる敬語があります。
敬語には、尊敬語と謙譲語、丁寧語の大きく3種類があり、それぞれ状況に応じた使い分けが必要です。
尊敬語は、相手を高めて表現する言葉で、お客様や社長など目上の人に使います。
対する謙譲語は、自分を低く表現する言葉となるため、「私が参ります」など自分の行動を表すときに使用しましょう。
丁寧語とは「です」「ます」などを使って丁寧に話す言葉であり、目上の人だけでなく初対面の人に対しても使います。
英語にも丁寧な表現はありますが、尊敬語や謙譲語はありません。
日本語の敬語は、相手との関係性や場面に応じて適切に使い分けなければ失礼にあたる可能性もあり、外国人が苦労しやすいポイントの一つです。
外国人との日本語コミュニケーションのコツ
外国人自身が日本語を学ぶだけでなく、外国人を受け入れる企業側でも相互理解に向けた工夫が必要になります。
日本で働くすべての外国人が、日本語を十分に理解できるわけではありません。
場合によっては、言語の壁が原因となってトラブルが発生する可能性も考えられるため、円滑にコミュニケーションをとるためのコツをふまえて接することが大切です。
漢字にはルビ(ふりがな)を振る
同じ一つの漢字にも複数の読み方が存在するため、外国人に漢字を含む文章を読んでもらう際は、混乱を招かないようルビ(ふりがな)を振りましょう。
「上手(じょうず/かみて)」のように、読み方を間違えると意味がまったく変わってしまうものもあります。
ルビを振ることで日本語を正しく理解でき、伝達ミスを防ぐことが可能です。
あるいは、読み方が難しい漢字を別の表現に言い換えるのも一つの手段でしょう。
招集であれば集まる、休憩なら休むなど、業務に必要な漢字もよりわかりやすいものから覚えてもらうようにしてみてください。
難しい方言は使わない
日本語を学習する外国人は多くの場合、標準語で学んでいます。
このため、標準語と表現やイントネーションが大きく異なる方言を使用すると、外国人の混乱を招きかねません。
日常会話や業務の指示は、方言ではなく標準語を極力使い、スムーズな意思疎通を図りましょう。
長く地方に暮らしている方だと、無意識に方言を使って話してしまう可能性もあるため、外国人と会話をする際は言葉遣いにより注意する必要があります。
あいまいな表現を避ける
「大丈夫(問題あり・問題なし)」や「すみません(謝罪・感謝・依頼)」など、状況によって意味合いが異なるあいまいな表現にも注意するようにしてみてください。
また、「道草を食う」「頭が固い」といった慣用句も、日本語話者が相手でなければ理解しにくいため、極力やさしい表現を選ぶようにしましょう。
簡単な言葉で話す
日本語には、敬語やオノマトペをはじめとするさまざまな表現があります。
しかし、これらは外国人にとって理解が難しく、コミュニケーションの壁を感じさせてしまう要因となりかねません。
外国人と敬語で会話をする際は、です・ますを使った丁寧語を基本としましょう。
謙譲語で「伺います」と言うより、「行きます」と表現したほうが外国人にはわかりやすくなります。
一文が長すぎても理解が難しくなるため、なるべく短い文で会話するよう心がけてみてください。
また、オノマトペを避けることで、伝えたいことがより明確になります。
「雨がザーザー降っています」と言いたい場合には、オノマトペを使わずに「雨がたくさん降っています」と言い換えることが可能です。
簡単な言葉を使いつつ一文を短くすることで、外国人との会話がスムーズになるでしょう。
外国人にとって日本語は難しい!丁寧にコミュニケーションをとろう
外国人にとって、日本語は文法や文字、発音など戸惑うポイントが多く習得の難しい言語の一つです。
同じ漢字でも複数の読み方が存在したり、主語が省略されたり、敬語にもいくつかの種類があったりと、日本人には難なく伝わる表現も外国人には理解が難しい場合があります。
外国人採用を行う企業では、外国人自身に学習機会を持ってもらうと同時に、企業側でもコミュニケーションを円滑に行うための意識改革が必要です。
例えば、漢字にはルビを振るほか、難しい方言や慣用句などを避けて簡単な標準語で話すなどの工夫が考えられます。
日常会話はもちろんのこと、業務の連絡事項でも、正しく伝わらなければミスや事故などのトラブルにつながりかねません。
やさしい日本語を意識してコミュニケーションをとることで、トラブルを防ぐとともに相互理解へ近付き、より良い関係を築けるでしょう。