近年、日本の建設現場では深刻な人手不足が問題視されています。
インフラ整備や防災強化、都市部の発展など、さまざまな観点から建設産業の需要は高まっているのに対し、建設業の従事者は今後減少する見込みです。
こうした状況を打開するため、人手不足状態にある産業分野で専門的なスキルを持った外国人労働者を受け入れる特定技能制度が創設されました。
特定技能2号「建設」は、この制度で認められている資格の一つです。
本記事では、建設分野における特定技能2号の概要や取得条件、受け入れ企業となるために必要な申請書類を解説します。
目次
特定技能2号「建設」とは
建設分野の特定技能2号は、特定技能1号より高い水準のスキルと実績を持った外国人材に認められる在留資格です。
指導者の指示下で従事する特定技能1号に対し、特定技能2号には、建設現場において複数の労働者を指導し工程管理を行った班長としての実務経験が求められます。
国土交通省「建設分野における外国人材の受入れ」によれば、2023年10月時点で建設分野の特定技能2号外国人は26人いました。
特定技能2号の大きな特徴は、在留期間の更新制限がなくなり、扶養する配偶者や子どもの帯同が認められるという点です。
特定技能1号の場合、在留期間は通算5年まで、家族の帯同は原則認められないなどの制約があります。
特定技能2号「建設」を取得するための条件
外国人材が建設分野の特定技能2号を取得するには、試験・検定への合格が必要になるだけでなく、実績や経験年数に関する要件も満たさなければなりません。
建設分野における特定技能2号の認定要件を、試験内容、業務内容・経験、経験年数の順に詳しく見てみましょう。
試験内容
建設分野で特定技能2号を取得するには、建設分野特定技能2号評価試験、または技能検定1級に合格する必要があります。
一般社団法人建設技能人材機構(JAC)が実施している建設分野特定技能2号評価試験は、コンピュータを使用したCBT方式です。
学科試験と実技試験に分かれており、土木、建築、ライフライン・設備という3つの業務区分それぞれで試験範囲は異なります。
なお2024年現在、建設分野の特定技能2号を取得するには、まず特定技能1号に認定されていなければなりません。
特定技能1号の在留資格を持つ外国人材が、各要件を満たすことで、特定技能2号へと移行できます。
業務内容・経験
建設分野の特定技能2号は、業務内容によって土木、建築、ライフライン・設備の3区分に分かれています。
業務区分 | 主な業務内容 |
土木区分 | 土木施設の新設や改築、維持、修繕に関連する作業 |
建築区分 | 建築物の新設や増築、改築、移転、修繕、模様替えに関連する作業 |
ライフライン・設備区分 | 電気・通信・ガス・水道などのライフライン設備の設置、変更、修理に関連する作業 |
特定技能2号となるには、各業務区分に該当する作業に従事しながら、建設現場で複数人の労働者を指導し、工程管理を行う班長としての実務経験が必要です。
経験年数
班長として実務経験を積むべき期間は、国土交通省により以下のように定められています。
- 就業先に建設キャリアアップシステム能力評価基準が導入されている場合、能力評価基準レベル3に相当する班長(職長)としての就業日数
- 就業先に建設キャリアアップシステム能力評価基準が導入されていない場合、班長(職長)としての就業日数が3年以上
前者が指す「能力評価基準レベル3相当の就業日数」は、業務区分や職種によってまちまちです。
例えば、外装大工なら半年以上、特殊作業員や左官は1年以上、内装工は3年以上となっています。
特定技能1号外国人が2号へ移行したい場合、移行先で必要とされる経験年数を満たしているか十分に確認しましょう。
特定技能2号「建設」を受け入れるための必要書類
特定技能2号外国人が日本の建設分野で働くには、外国人本人が要件を満たすとともに、企業側でもいくつかの申請書類を準備しなければなりません。
ここからは、建設分野で特定技能2号外国人を受け入れるための主な必要書類を紹介します。
建設分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書
建設分野において特定技能外国人を受け入れる企業は、入管法に基づき「建設分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」の提出が必要です。
制約事項には、雇用した特定技能外国人に任せる業務が土木、建築、ライフライン・設備のいずれかの業務区分に該当すること、国土交通省の調査に協力することなどがあります。
上記の業務区分以外の仕事に従事させる目的では、特定技能外国人の受け入れが認められないため注意しましょう。
建設分野における2号特定技能外国人特定技能雇用契約の相手方となる本邦の公私の機関の基準に関する誓約書
「建設分野における2号特定技能外国人特定技能雇用契約の相手方となる本邦の公私の機関の基準に関する誓約書」は、受け入れ機関としての基準を満たすことを証明する書類です。
誓約事項として、建設業法の許可を受けていること、建設キャリアアップシステムに登録済みであることなどが挙げられます。
建設業法第3条第1項の許可を受けていることを証する書類
特定技能2号の受け入れ企業となるには、建設業法第3条第1項の許可を受けていることを証明できる書類の提出が必要です。
同法令では、軽微な建設工事のみを行う事業者を除き、建設業許可を得なければならないと定められています。
証明書類として、建設業許可通知書の写しなどを用意しましょう。
特定技能所属機関になろうとする者の建設キャリアップシステム申請番号又は事業者IDを明らかにする書類
「建設キャリアップシステム申請番号又は事業者IDを明らかにする書類」には、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録後に届いたハガキやメールの写しが該当します。
建設キャリアアップシステムとは、建設業に従事する人材がスキルや経験に応じて適切な待遇を受けられるよう、実績・資格情報などを登録して能力評価につなげる仕組みです。
特定技能外国人の受け入れ企業となるには、建設キャリアアップシステムへの登録が必須となっています。
申請からID発行までには少なくとも半月ほどがかかるため、早めに手続きを済ませておくことが大切です。
特定技能2号「建設」の取得条件や申請する際の必要書類を知って参考にしよう
建設分野の特定技能2号は、建設業務における熟練したスキルを身につけた外国人材の在留資格です。
特定技能2号となるには、現場で複数人の労働者を指導しながら工程管理を行う班長として、一定以上の実務経験を積まなければなりません。
また、建設分野特定技能2号評価試験か技能検定1級への合格も求められます。
これらの要件を外国人材側が満たすとともに、受け入れ企業側でも基準に適合したうえで、各種申請のための書類提出が必要です。
特定技能2号外国人を円滑に受け入れられるよう、建設業許可の取得や建設キャリアップシステムの登録など必須の手続きは早めに進めておきましょう。