日本の農業分野では、後継者不足と高齢化の問題により労働力が減少し、農業経営の継続が困難になっているのが現状です。
そこで、特定技能「農業」が設けられ、外国人材の受け入れが進められています。
本記事では、特定技能「農業」分野の概要や業務内容、取得要件などについて詳しく解説します。
目次
特定技能「農業」分野とは
特定技能「農業」分野は、日本の農業分野における人手不足を補うために設けられた在留資格です。
ここでは、農業の人手不足の背景と、特定技能「農業」の受け入れ状況について説明します。
農業の人手不足が背景
ふだん仕事として主に自営農業に従事している基幹的農業従事者数は、2015年では175万人を超えていましたが、2019年には約140万人、2023年には約116万人と減少しています。
日本の農業分野では、後継者不足と高齢化の問題により労働力が減少し、人手不足から経営の継続が困難になっているのが現状です。
そうした現状に対応するため、特定技能「農業」の受け入れが進められています。
特定技能「農業」の受け入れ状況
出入国在留管理庁が公表している特定技能在留外国人数の2023年12月時点でのデータによると、農業分野での特定技能1号の在留外国人数は23,861人となっています。
2022年12月時点では16,459人、2021年12月時点では6,232人であり、年々大きく増加していることがわかります。
特定技能「農業」の業務内容
特定技能「農業」の業務内容は、耕種農業と畜産農業の2つに分けられます。
それぞれの業務内容について見ていきましょう。
耕種農業
耕種農業では、栽培管理や農産物の選別・出荷などの農作業を行います。
具体的には、施設園芸や畑作、野菜や果樹の栽培です。
作物に応じた土壌づくりや、施肥作業なども含まれます。
ただし、耕種農業での主な業務は「栽培管理」であるとされているため、栽培管理業務を行わずに農産物の選別や出荷作業のみを行うことは認められません。
畜産農業
畜産農業は、家畜を飼育して肉や卵、乳製品などを生産する農業分野です。
飼育管理業務、畜産物の選別・出荷などのほか、家畜の種類に応じた器具の取扱いや、安全衛生業務などを行います。
畜産農業の主な業務は「飼育管理」です。耕種農業の業務の捉え方と同様に、飼育管理業務を行わずに、関連業務である畜産物の選別や出荷作業のみを行うことは認められません。
農業の特定技能資格の取得要件
農業の特定技能資格の取得するには、18歳以上であることが条件です。
農業分野の技能実習2号を良好に修了するか、技能試験と日本語能力試験の両方に合格することで、農業の特定技能資格を取得できます。
技能実習2号を良好に修了するとは、2年10ヵ月以上の技能実習を修了し、専門級の技能実習評価試験の実技試験に合格することを意味します。
農業の特定技能の試験内容
農業の特定技能資格を取得するには、日本語試験と技能試験の両方に合格する必要があります。
ここでは、それぞれの試験内容について解説します。
日本語試験
日本語の能力水準を満たしていることを証明するために、日本語能力試験N4以上か、国際交流基金日本語基礎テストへの合格が必要です。
日本語試験では、日常的な会話を理解できるかどうかが判断されます。
技能試験
一般社団法人全国農業会議所が実施している、農業技能測定試験に合格する必要があります。
農業技能測定試験には、耕種農業全般と畜産農業全般の2種類があります。
2024年度の農業技能測定試験1号のテストは、日本国内だけでなく、バングラデシュやカンボジア、インドやフィリピンなどの国外でも受験可能です。
農業の特定技能外国人を雇用するには
農業の特定技能外国人を雇用するには、農業特定技能協議会に入会し、外国人支援の体制を整える必要があります。
以下で詳しく説明します。
農業特定技能協議会に入会する
特定技能外国人を雇用した事業者は、外国人を雇用してから4ヵ月以内に農業特定技能協議会に加入する必要があります。
農林水産省のページから入会申し込みが可能です。
外国人支援の体制を整える
特定技能外国人を雇用するにあたっては、業務や日常生活におけるさまざまな支援を行う必要があります。
具体的には、入国前の事前ガイダンスや出入国送迎、生活オリエンテーションや日本語学習支援などが挙げられます。
特定技能「農業」は派遣雇用も可能
特定技能農業分野は他の分野と違い、派遣雇用が可能となっています。
農業では農閑期があるため、直接雇用のみに限定しては、安定した賃金支払ができないリスクがあります。
そのため、派遣雇用による兼業が認められているのです。
派遣雇用で従事できる業務は、栽培管理や農作物の選別・出荷といった耕種農業全般、飼養管理や畜産物の集出荷・選別などの畜産農業全般です。
特定技能「農業」分野の背景や取得要件を理解しよう
日本の農業分野は、後継者不足と高齢化の問題により労働力が減少し、農業経営の継続が困難になっているのが現状です。
そこで、特定技能「農業」の外国人材の受け入れが進められています。
農業の特定技能資格を取得するには、農業分野の技能実習2号を良好に修了するか、技能試験と日本語能力試験の両方に合格する必要があります。
また、雇用側にもいくつかの条件が設けられています。
特定技能「農業」分野の背景や取得要件を理解し、外国人材の適切な受け入れと支援に努めることが重要です。