日本で外国人労働者を雇用する際、就労ビザの申請はつまずきやすいポイントの一つです。
原則、就労ビザの申請は外国人労働者本人で行いますが、企業側のサポートも欠かせません。
スムーズに雇用を進めるためには、企業側が就労ビザの申請方法や流れを把握し、外国人労働者を支援することが大切です。
就労ビザの種類や必要書類、申請のタイミングなど、押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
本記事では、外国人労働者の就労ビザ申請について、企業側が知っておくべき重要な情報を詳しく解説します。
目次
外国人労働者の雇用時に必要な就労ビザとは
就労ビザは、外国人が日本で働くために必要な書類です。
日本で収入をともなう事業を運営したり、報酬を受け取る活動をしたりする際に必要となります。
経営者や会社員、個人事業主として働く外国人は、就労ビザの取得が必須です。
就労ビザには複数の種類があり、働き方によって必要なビザが異なります。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」「技能」「経営・管理」などの在留資格が就労ビザに該当します。
外国人労働者を雇用する際は、業務内容に合った就労ビザを選択し、取得する必要があります。
なお、就労ビザと同様の意味として使われる用語に「在留資格」があります。
就労ビザと在留資格は、厳密には少し意味が異なります。
そもそも「ビザ」とは、海外にある日本大使館や領事館が発行する書類のことで、日本に入国することを目的に発行されます。
そのなかで就労ビザは、「日本での就労を目的に発行されたビザ」のことを指します。
一方で在留資格は、「外国人が日本に滞在するための許可証」のことであり、日本の法務省入国管理局が許可するものです。
- 就労ビザ:就労を目的とした査証
- 在留資格:目的を問わず日本に滞在するための許可証
そのため、就労ビザは在留資格の一種といった見方もされます。
外国人労働者の就労ビザの主な種類
外国人が日本で働くための就労ビザは、全部で16種類あります。
そのなかでも、特に代表的な就労ビザについて紹介します。
- 技術・人文知識・国際業務
専門的な技術や知識を持ち、日本の企業で働く外国人向けのビザです。
翻訳、通訳、ITエンジニア、語学教師などが該当します。
大卒以上の学歴か、10年以上の実務経験(関連する業務でも可)が必要です。 - 技能
特定の技能を持つ外国人向けのビザです。
調理師、スポーツ・トレーナー、パイロットなどが該当します。 - 経営・管理
日本で事業を運営する外国人経営者向けのビザです。
会社の経営に関与する役員や管理職が該当します。 - 企業内転勤
海外の事務所から日本の事務所へ転勤する外国人向けのビザです。 - 特定技能
2019年に創設された、人手不足の業種で働く外国人向けの新しいビザです。
介護や建設、農業といった特定産業分野が対象となります。
一定の技能と日本語能力が求められます。
これらの就労ビザは、いずれも外国人が日本で働くために必要ですが、業種や職種、求められる要件が異なります。
就労ビザの種類 | 在留期間 |
技術・人文知識・国際業務 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
介護 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
企業内転勤 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
経営・管理 | 5年、3年、1年、6ヵ月、4ヵ月または3ヵ月 |
技能 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
興行 | 3年、1年、6ヵ月、3ヵ月または15日 |
教育 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
研究 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
医療 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
芸術 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
法律・会計業務 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
報道 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
宗教 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
教授 | 5年、3年、1年または3ヵ月 |
技能実習 | 1号:1年以内 2号・3号:2年以内 |
特定技能 | 1号:1年、6ヵ月、4ヵ月(最大5年以内) 2号:3年、1年、6ヵ月(更新回数制限なし) |
雇用時に必要な就労ビザの取得方法・申請の流れ
外国人労働者を雇用する際、就労ビザの取得は欠かせません。
しかし、就労ビザの申請方法は、外国人労働者の状況によって異なります。
外国人労働者が海外にいる場合と、すでに日本に在住している場合の2つのケースに分けて、就労ビザの取得方法と申請の流れを詳しく解説します。
外国人を海外から呼び寄せて雇用する場合
まずは、海外から外国人労働者を呼び寄せて雇用する際の手続きです。
在留資格認定証明書を申請する
外国人労働者を海外から呼び寄せて雇用する場合、まず企業が在留資格認定証明書の交付を申請する必要があります。
申請は、外国人労働者が勤務する予定の地域を管轄する入国管理局で行います。
在留資格認定証明書の交付には、申請から1~2ヵ月ほどかかるため、早めに手続きを進めましょう。
日本大使館で就労ビザを取得してもらう
在留資格認定証明書が交付されたら、企業は速やかに雇用予定の外国人労働者に書類を送付しましょう。
外国人労働者は、在留資格認定証明書を持参し、最寄りの日本大使館か領事館でビザの申請手続きを行います。
日本大使館での就労ビザ申請に必要な書類は、在外公館のWebサイトに「在留資格認定証明書を使用した査証申請に必要な書類」として記載されています。
外国人労働者には、事前に必要書類をチェックし、準備してもらうよう伝えておきましょう。
日本在住の外国人を雇用する場合
すでに日本に在住している外国人を雇用する場合、外国人労働者が持っている在留資格の確認から始めましょう。
在留資格によっては、就労ビザの変更手続きが必要となる場合があります。
ここでは、日本在住の外国人を雇用する際の手続きについて、詳しく解説します。
外国人労働者が持っている就労ビザを確認する
日本在住の外国人を雇用する際は、まず外国人労働者が現在持っている就労ビザを確認することが大切です。
例えば、留学ビザで日本に滞在している外国人を雇用する場合、就労ビザへの変更手続きが必要です。
職種や業種が異なるままに雇用すると、不法就労となる可能性があります。
不法就労者とは、働くことが許可されていない外国人労働者のことです。
企業が不法就労者を雇用した場合、不法就労助長罪で処罰の対象となります。
不法就労助長罪に問われた場合、企業は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
外国人労働者を雇用する際は、必ず在留資格を確認し、自社で働くために適切な就労ビザを保有しているか確認しましょう。
雇用契約書を作成して契約を結ぶ
外国人労働者との雇用契約を正式に結ぶため、雇用契約書を作成します。
就労ビザの変更手続きの際、雇用契約書の提示を求められるケースがあるためです。
なお、雇用契約を結んだにも関わらず就労ビザが取得できない可能性もあります。
そのようなトラブルを避けるため、雇用契約書には、就労ビザを保有していない場合は契約が無効になる旨の文言を入れておくと良いでしょう。
就労ビザを変更してもらう
雇用契約の締結後、外国人労働者には在留資格変更許可の申請を行ってもらう必要があります。
就労ビザの変更は、外国人労働者が持っている資格が、自社で働く際の範囲外である場合に必要な手続きです。
就労ビザの取得申請は、要件を満たしていなければ通りません。
事前に外国人労働者の状況を確認し、必要な書類を準備したうえで、申請を進めてもらうことが大切です。
外国人労働者雇用時の就労ビザに関する疑問
外国人労働者の雇用時によくある就労ビザに関する疑問を紹介します。
就労ビザの審査結果が不許可の場合もある?
企業が外国人労働者と雇用契約を結び、就労ビザの取得をサポートしても、審査結果が不許可となるケースがあります。
特に、外国人労働者が専門学校や大学で学んだ内容と、実際の業務内容が大きく異なる場合、就労ビザが不許可になりやすい傾向があります。
また、外国人労働者の経歴に虚偽の記載があった場合や、雇用する企業側の財務状況に問題があった場合なども、就労ビザが不許可になる可能性があります。
就労ビザの審査では、外国人労働者の適格性だけでなく、雇用する企業の状況も考慮されるため、注意が必要です。
アルバイト掛け持ちですでにビザ取得済みの場合はどうなる?
外国人労働者がすでに就労ビザを取得しており、その資格範囲内であれば、本業とアルバイトの掛け持ちが可能です。
ただし、アルバイトの内容が就労ビザの資格外となる場合は、資格外活動許可申請が必要となります。
資格外活動許可申請をせずにアルバイトを行うと、不法就労となり、外国人労働者だけでなく、雇用する企業側も処罰の対象となります。
外国人労働者がアルバイトを掛け持ちする場合は、就労ビザの資格範囲を確認し、必要な手続きを行うよう指導することが大切です。
退職時はどうする?
外国人労働者が退職する際、企業は日本人労働者の場合と同様に手続きを進め、退職証明書を交付する必要があります。
退職証明書は、外国人労働者が入国管理局で在留資格の手続きを行う際に必要な書類となります。
また、入国管理局へ、中長期在留者の受け入れに関する届出の提出も必要です。
この届出は、外国人労働者の雇用状況を正確に把握するために重要な手続きです。
外国人労働者の退職時は、必要な書類の交付と届出を漏れなく行うことが求められます。
外国人労働者を雇用する際は業務内容に合った就労ビザの取得を必ず行おう
外国人労働者の雇用に際して、就労ビザの取得は欠かせません。
就労ビザにはさまざまな種類があるため、外国人労働者の業務内容に合ったビザを選択し、取得してもらう必要があります。
就労ビザの申請は原則、外国人労働者本人が行いますが、企業側がサポートすることで、不許可のリスクを軽減できます。
外国人労働者の雇用は、日本人労働者とは異なる手続きが多いため、企業は事前に就労ビザの取得の流れを十分に理解しておくことが大切です。
外国人労働者の適切な雇用のために、就労ビザの取得を適切に行い、円滑な雇用関係を築いていきましょう。