2024年現在、外国人の在留資格には計29種類があります。
日本の学校で学ぶには「留学ビザ(学生ビザ)」が必要になり、卒業・修了後に日本の企業で就職するためには「就労ビザ」へと在留資格を変更しなければなりません。
就労が認められた在留資格にも医療や介護、技術・人文知識・国際業務などの種類があり、自分自身の専攻内容と内定企業で従事する仕事内容に合わせた資格が必要です。
この記事では、留学生の方が日本で就労ビザを手に入れる方法を解説します。
就労ビザへの変更タイミングや申請の流れ、必要書類も紹介しているため、日本での就労をめざしている留学生の方は参考にしてみてください。
目次
留学ビザから就労ビザへ切り替えるタイミング
就労ビザを取得するタイミングは、在学中に企業から内定をもらっているかどうかで変わってきます。
卒業後に内定をもらう予定であれば、留学ビザに定められた在留期間のあいだに、就職活動のためのビザを取得しておきましょう。
在学中に内定をもらっている場合
在学中に内定が決まった場合、就労ビザの申請は卒業前の12月から可能となります。
毎年12月になると、出入国在留管理庁で留学から就労ビザへの変更申請受付をスタートするためです。
1月以降でも申請はできるものの、入社までに就労ビザを取得していなくてはいけないため、内定が決まったら計画的に申請準備を進めることをおすすめします。
学生の留学ビザから就労ビザへの切り替えにかかる期間は、平均1~2ヵ月程度です。
春時期はほかの留学生のビザ申請で窓口が混み合う可能性があるため、早めの行動を心がけましょう。
卒業後に内定をもらう場合
卒業後に内定をもらう場合、学生でもなく就職してもいない期間が発生します。
この場合、就職先が決まって入社するまでのあいだは、就職活動ビザ(特定活動)を取得する必要があります。
卒業後に留学ビザを延長することは認められず、かといって内定をもらう見込みがない状態では就労ビザの取得もできません。
ただし、留学生ビザから就職活動ビザに変更すれば、内定がない状態で卒業をしても、そのまま日本に滞在して就職活動ができます。
6ヵ月の在留期間が定められたビザを1回更新できるため、最大1年間は就職活動に時間を使えますが、学校からの推薦状が必要です。
留学ビザから就労ビザへ変更する流れ
語学留学などの学習目的で日本に滞在する方が、留学ビザから就労ビザへと変更する場合、以下のような流れで進めるのが一般的です。
- 就職活動を行う
- 採用試験に合格し内定を取得できたら、雇用契約の締結を行う
- 在留資格変更許可申請をして、ビザ変更の手続きを済ませる
- 就労ビザを取得
- 学校を卒業し入社する
ここでは、企業から内定をもらってからの流れや必要な手続きを見てみましょう。
内定取得後に雇用契約書を締結
就職活動を行い企業から内定をもらったら、雇用契約を結び、労働条件通知書や雇用契約書を受け取ります。
就労ビザ申請時に、会社から交付された労働条件通知書または雇用契約書のコピーの提出が必要となるため、内容に間違いがないかよく確認しておきましょう。
明記されていなければならない項目には、雇用形態や労働契約の期間、就業場所、業務内容、始業・終業時刻、残業の有無、給与と支払い方法、退職に関する事項などがあります。
契約内容についてわからないことがあれば企業側に質問し、疑問を解決しておくことが大切です。
在留資格変更許可申請を行う
内定が決まったら、就労ビザを取得するために在留資格変更許可申請を行います。
在留資格変更許可申請は、基本的に申請する本人の居住地域を管轄する地方出入国在留管理官署へ出向いて行いますが、法定代理人や行政書士による代行も可能です。
また、採用された企業に申請等取次者の資格を持つ担当者がいる場合には、代行してもらえる可能性があるでしょう。
申請時点では費用はかからないものの、申請の許可が下り留学ビザから就労ビザへの在留資格変更が許可されたときには、4,000円分の収入印紙が必要になります。
また、申請時には書類の提出を求められるため、早めに準備を進めるようにしましょう。
ビザを取得
就労ビザの審査期間は申請時期や審査内容によっても異なりますが、特に12月〜翌5月は審査が集中し、時間がかかる可能性があることを念頭に置いておいてください。
審査が終わると、出入国在留管理官署からお知らせが届きます。
窓口で申請した方ならハガキ、オンラインで申請した方はメールで通知されますが、申請不可となった場合は封筒で届くこともあるでしょう。
在学中に許可を得られた場合でも、卒業するまで新しい在留カード(就労ビザ)はもらえません。
よって卒業したあとに、卒業証書または卒業証明書を地方出入国在留管理官署へ提出する必要があります。
卒業後は引越しなどで忙しくなる可能性があるため、審査結果を待つあいだに入社に向けた準備を着実に進めておくと良いでしょう。
卒業し入社する
就労ビザを無事に取得できたら、入社して働き始めます。
注意したいのは、新しい在留カード(就労ビザ)が手元に届くまでは働けないということです。
また、入社前の最終確認として以下の項目をチェックしておくことをおすすめします。
- 入社日時と場所
- 必要な持ち物
- 服装や身だしなみ
- 通勤ルートと職場までの所要時間
- 業務内容や研修スケジュール
万全の準備を整えて、新社会人としての第一歩を踏み出しましょう。
留学ビザから就労ビザへ変更できるかどうかの審査基準
留学ビザから就労ビザへの変更には、出入国在留管理庁による審査に通過しなければならず、その条件は厳しい傾向にあります。
業務内容(就労活動)と在留資格が一致するかどうかだけでなく、日本の法律や企業の事業継続性など、さまざまな基準が総合的に判断されるためです。
審査基準として、具体的には以下のような内容が挙げられます。
- 内定企業で行う予定の活動が外国人の在留資格に定められた範囲内であること
- 外国人が大学・専門学校の卒業証書または卒業見込証明書を持っていること
- 大学・専門学校の専攻内容と従事する業務に関連性があること
- 従事予定の業務が、外国人本人の持つ知識・技術などを活かせること
- 同じ職場で働く日本人スタッフと同等以上の給料が支給されること
- 内定企業の安定性や継続性、事業規模、事業内容に問題がないこと
申請者本人の状況はもちろんのこと、就職先となる企業の情報もふまえて申請の可否が判断されます。
不当な労働条件を結ばされているなど、企業側の問題で審査が通らないこともありうるでしょう。
そうした事態を防ぐためにも、企業と労働契約を結ぶ時点で、給与や労働時間などの条件が適切かどうかを把握しておく必要があります。
留学ビザから就労ビザへ変更する際の必要書類
留学ビザから就労ビザへの変更申請には、申請者本人と企業側の双方に準備すべき書類があります。
ここからは、最低限提出が求められる書類の一例をチェックしてみましょう。
本人が準備するもの
申請者本人で準備が必要になる書類の例は、以下のとおりです。
- 在留資格変更許可申請書
- パスポート
- 在留カード
- 証明写真(撮影から3ヵ月以内のもの)
- 在学中であれば卒業見込証明書、卒業後であれば卒業証明書
- 成績証明書
- 高校卒業以降の学歴・職歴がわかる履歴書
- 申請理由書(就職の経緯や専攻と業務内容の関係がわかる書類)
- 手数料4,000円の収入印紙 など
その他、日本への滞在状況や就職先で従事する業務の内容によっても必要書類は変わってきます。
不明点があれば、学校の就職支援窓口や出入国在留管理官署に相談してみましょう。
企業側が準備するもの
一方、内定企業に準備してもらう書類には、以下のようなものがあります。
- 在留資格変更許可申請書
- 給与所得の源泉徴収票などの法定調書合計表(税務署の受理印が必要)
- 法人登記事項証明書
- 労働条件通知書または雇用契約書
- 決算報告書
- 企業のパンフレットやホームページ情報など会社概要がわかるもの
- 雇用理由書(採用の経緯、採用した外国人に任せる業務内容を説明する書類)
企業側の準備書類は、事業規模や業種によって異なる場合があります。 採用担当者と連絡を取りながら、必要書類を不備なくそろえておくことが大切です。
留学ビザから就労ビザへ変更する際のポイント
留学ビザから就労ビザへの変更申請を行う際には、以下4つのポイントを心に留めておく必要があります。
- 在留資格が就労内容と一致しているか
- 留学生のアルバイトはオーバーワークがないか
- 日々の在学状況が良好か
- 違反をしていないか
留学ビザの本来の目的は、教育を受けることです。
このため、留学生がアルバイトをしすぎたり在学状況をおろそかにしたりした場合、在留資格の変更申請が不許可となりやすくなるため注意しましょう。
在留資格が就労内容と一致しているか
留学ビザを取得して専門性が高い知識・技術を学んだにも関わらず、就職した企業で任される業務が学習内容とまったく関係ないものでは意味がありません。
例えば、技術・人文知識・国際業務の就労ビザを取得する場合、工場でのライン作業や飲食店での配膳のような単純労働はできないことになっています。
このため就職活動をするにあたっては、自分自身の学んだ内容でどのような職に就けるのか、そしてどのような在留資格が必要になるのかの確認が必須です。
留学ビザで学んだ内容と内定先の業務内容に関連性がないと見なされた場合、審査には通りません。
留学生のアルバイトはオーバーワークがないか
留学ビザを持っている学生のあいだは、資格外活動許可を取得することでアルバイトが可能です。
ただし、入管法により、留学生のアルバイト時間は週28時間までと定められています。
日曜から土曜までのアルバイト時間を合計して判断するのではなく、週のどこから数えても28時間を超えないようにしなくてはいけません。
また、留学ビザでアルバイトができる期間は、在籍する教育機関が夏期休暇や冬期休暇などの長期休業期間にあるときのみです。
ここでいう長期休暇とは、学校の規則で定められているものに限られます。
アルバイト活動のオーバーワークがあった場合にも、在留資格の変更申請は通りにくくなるため、シフト管理には細心の注意を払いましょう。
日々の在学状況が良好か
日々の学校への出席状況や成績が芳しくないケースなども、就労ビザ取得のハードルは高くなりがちです。
教育機関で学んだ結果として日本での就労が認められるため、在学状況が悪い場合は、たとえ内定を取得していても申請不許可となる可能性があります。
「アルバイトが忙しく授業にあまり出席できなかった」ということがないよう、私生活だけでなく学校生活も大切にしましょう。
違反をしていないか
届出義務のある手続きを忘れるといった不注意による違反はもちろん、アルバイトの一環で小包を届けたらじつは薬物だったなど、思わぬ形で犯罪に加担してしまう事例もあります。
留学生自身に悪意があったかどうかに関わらず、犯罪行為があった場合には、就労ビザへの変更申請が通りにくくなるでしょう。
また、留学生が資格外活動許可を得たとしても、風俗業へは従事できず、従事した場合には違反と見なされます。
高時給のアルバイトなどへ安易に応募してしまう前に、自分を守るための情報収集を心がけることが重要です。
就労ビザを取得し希望する仕事に就こう
留学ビザから就労ビザへの変更タイミングは、在学中に内定をもらったかどうかで異なります。
学生のうちに内定をもらった方は、卒業前の12月中に申請手続きを進めると良いでしょう。
一方、卒業してから就職先を見つける場合は、内定をもらうまでの期間は就職活動ビザの取得が必要です。
ただし、内定さえもらえれば確実に就労ビザを取得できるというわけではありません。
留学で学んだ内容と内定企業での業務内容の関連性、企業の安定性、さらに学校の成績や出席状況なども加味して可否が判断されます。
日本での就労を希望する留学生の方にとって、就労ビザの取得は大きな関門の一つですが、しっかりと準備を進めていけば乗り越えられない壁ではありません。
在学中から計画的に情報収集と申請手続きを行い、自分自身のスキルを十分に発揮できる職場での活躍をめざしましょう。