就労ビザを持つ外国人が転職する際には、出入国在留管理局への届出が必要です。
ただし、現在の職種と同じ就労ビザで認められた範囲内での転職なのか、異なる就労ビザが必要な業種への転職なのかによって、求められる手続きが変わってきます。
また、在留期限までの残り期間によっても手続き内容は異なるため、自分の状況に合わせた適切な手順で転職を進めるようにしましょう。
本記事では、就労ビザで働く外国人が転職する際に必要な手続きを解説します。
転職者本人だけでなく、現職の企業や転職先の企業にそれぞれ行ってもらう手続きもあるため、両者と連絡を取り合いながら不備不足のないよう進めてみてください。
目次
転職するときは就労ビザの変更手続きが必要?
日本で働く外国人の転職時には、就労ビザの変更手続きが必要になるケースがあります。
現在持っている就労ビザの範囲内での転職であれば変更手続きは不要ですが、就労ビザの範囲にない職種へ転職する場合は、適した就労ビザへの変更を申請しましょう。
就労ビザの変更手続きは転職パターンによって異なる
転職時に就労ビザ(在留資格)の変更手続きが必要になるかどうかは、転職のパターンによって異なります。
例えば、エンジニアとして「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを持っている方が、「介護」の就労ビザが必要な介護士などに転職する際は、就労ビザの変更が必要です。
一方、エンジニアからプログラマーへの転職や同じ職種で企業のみ変わる場合には、就労ビザの変更は必要ありません。
転職のパターンごとで求められる手続きが異なる点に注意しましょう。
所属(契約)機関に関する届出は必須
就労ビザを持つ外国人が転職する際、退職後14日以内に出入国在留管理局(入管)へ「所属(契約)機関に関する届出」の提出が義務付けられています。
就労ビザの変更がともなうか否かに関係なく、転職する外国人全員が必須の手続きです。
この届出を忘れてしまうと、20万円以下の罰金や次回のビザ更新時に在留期間を短縮されるなどの不利益を被りかねません。
万が一届出を忘れてしまった場合は、そのまま放っておくのではなく、すぐに届出を行うことが大切です。
届出は出入国在留管理局の窓口や郵送、インターネットで行えます。
【パターン別】外国人本人が転職する際に行う手続き
現在と同じ就労ビザ内の職種への転職であっても、在留期間満了までの期間が3ヵ月を切っている場合には、在留期間更新許可申請をあわせて行わなければなりません。
現職とは異なる就労ビザが必要なケースでは、在留期限に関係なく在留資格変更許可申請を済ませるようにしましょう。
現在と同じ就労ビザ内の職種へ転職し、在留期限が3ヵ月以上
現在と同じ就労ビザで働ける職種へ転職し、なおかつ在留期限まで3ヵ月以上ある場合、就労資格証明書の交付申請を行えます。
就労資格証明書とは、転職先での活動内容が現在の在留資格の活動に該当するかを確認するための任意の証明書です。
就労資格証明書を取得しない場合、次回の在留期間更新時に仕事の内容や勤め先の状況などを審査された結果、更新不許可となるリスクがあります。
就労資格証明書があれば、ビザの期限が迫っている状態で延長したいときにも通常の在留期間更新許可申請とほとんど同じ手続きで済むため、許可を得るまでがスムーズでしょう。
就労資格証明書の交付には、次のような書類が必要です。
- 就労資格証明書交付申請書
- 資格外活動許可書(交付を受けている方のみ)
- 在留カード
- パスポートまたは在留資格証明書
- 新たな勤務先の情報と活動内容の詳細がわかる書類 など
外国人本人ではなく、転職先企業の担当者などの申請等取次者が申請書類を提出する場合には、追加書類が求められます。
現在と同じ就労ビザ内の職種へ転職し、在留期限が3ヵ月未満
現在と同じ就労ビザの範囲内で従事できる職種へ転職し、なおかつ在留期限が3ヵ月未満の場合には、在留期間更新許可申請を行います。
審査の結果、就労ビザの取得が認められなかった場合、新たな仕事を見つける前に帰国しなければならない可能性が生じるため、在留期間を更新しておくことが大切です。
在留期間更新許可申請には、例として次のような書類が必要になります。
- 在留期間更新許可申請書
- パスポート、在留カード
- 写真(6ヵ月以内に撮影したもの)
- 課税証明書や納税証明書
- 前職での源泉徴収票
- 前職の退職証明書
- 新たな勤務先の情報と活動内容の詳細がわかる書類
- 新たな勤務先の決算報告書
- 雇用理由書 など
就労ビザをはじめて取得した際とほぼ同様の手続きとなりますが、前職・転職先に関する書類を用意しなくてはならない点を念頭に置いておきましょう。
現在と異なる就労ビザの職種へ転職する
現在と異なる就労ビザの職種へ転職する場合は、在留期限に関わらず在留資格変更許可申請が必須です。
申請期間は、在留資格の変更の事由が生じたときから在留期間満了日以前までとなります。
変更許可を受ける前に新しい在留資格に該当する仕事をすると、資格外活動による違反を問われ、在留資格変更の不許可や取り消しとなりかねません。
期間内に忘れず申請手続きを済ませるようにしましょう。
在留資格変更許可申請に必要な書類は、変更予定の在留資格によって変わります。
以下はその一例です。
- 在留資格変更許可申請書
- パスポート、在留カード
- 写真(6ヵ月以内に撮影したもの)
- 前職での源泉徴収票
- 前職の退職証明書
- 新たな勤務先の情報と活動内容の詳細がわかる書類
- 新たな勤務先の決算報告書
- 雇用契約書(転職先での業務内容や雇用形態、賃金などがわかる書類)
- 雇用理由書 など
新たに取得する在留資格によって必要書類は異なるため、出入国在留管理庁のホームページなどで確認してみてください。
外国人が転職する際に会社が行う手続き
就労ビザを持つ外国人が日本で転職するにあたっては、これまで勤めていた企業と転職先の企業のそれぞれで進めてもらう手続きもあります。
企業が適切な手続きを怠った場合、転職者である外国人本人も不法就労となる恐れがあるため覚えておきましょう。
雇用していた会社が行う手続き
就労ビザを持つ外国人が離職した際、雇用していた会社はハローワークへ外国人雇用状況の届出を提出しなければなりません。
外国人の雇用もしくは離職が発生した場合、すべての事業主に義務付けられている手続きです。
届出を怠ると、30万円以下の罰金が科せられます。
雇用保険被保険者となる外国人の場合は、離職した翌日から10日以内に届出が必要です。
雇用保険被保険者とならない外国人であれば、翌月末日までに届出を行います。
この手続きは、電子申請で済ませることも可能です。
転職を受け入れる会社が行う手続き
就労ビザを持つ外国人を受け入れる企業は、以下3つの手続きを行います。
- 就労ビザや在留期間の確認、在留カードが偽造されていないかの確認
- 雇用契約書の締結
- 外国人雇用状況の届出
在留カード表面にある就労制限の有無の欄が「就労不可」の場合、日本の企業では働けません。
一方、「就労制限なし」の場合は、職種の制限なく自由に働くことが可能です。
「在留資格に基づく就労活動のみ可」「指定書により指定された就労活動のみ可」といった場合、一部制限や指定書の内容に基づいて働ける範囲が決まります。
資格外活動許可を得ている外国人は、活動内容だけでなく週の労働時間にも制限が設けられている場合があるため注意しましょう。
不法就労を防ぐためにも、就労ビザや在留カードの内容を企業側にもきちんと確認してもらうことが重要です。
また、雇用保険被保険者となる外国人の場合、外国人雇用状況の届出の提出期限は翌月10日までとなります。
雇用保険被保険者とならないときには、離職と同様に翌月末日が期限です。
就労ビザで働く外国人が転職の際に気を付けること
就労ビザを持つ外国人が転職する際には、以下の4点に気を付ける必要があります。
- 所属(契約)機関に関する届出は必須のため忘れないこと
- 届出やビザの期限に注意すること
- どの手続きが必要か自分で把握しておくこと
- 転職先の業務内容が現在の在留資格内である場合、就労資格証明書の取得申請をしておくこと(任意)
転職後も業務内容が変わらず、在留資格の変更が必要ないケースでも、所属(契約)機関に関する届出は必須です。
届出の期限は退職後14日以内と比較的短いため、その他の届出とあわせて早めに済ませておきましょう。
また、現在所有している在留資格は、あくまでも現在勤めている会社に対して認められたものであり、転職先でも問題なく更新できるという確実性はありません。
次の在留期間更新時に備えて、期限に余裕があるうちに就労資格証明書を取得するのがおすすめです。
就労ビザを持つ外国人は転職時に出入国在留管理局への届出が必要
就労ビザを持つ外国人が転職する際には、出入国在留管理局への届出が必要不可欠です。
転職のパターンによって手続き内容や必要書類は異なるため、転職先での業務内容と在留期間の更新の必要有無をふまえて、退職までにやるべきことを把握しておきましょう。
また、各種届出の期限に注意し、早めに必要書類をそろえられるとベストです。
転職する外国人の方だけでなく、これまで勤めた企業と転職先の企業でも、就労ビザの確認や外国人雇用状況の届出などの手続きを進めなければなりません。
企業の担当者と連絡を取り合いながら、スムーズに転職を進められるようにしましょう。