近年、専門的な知識やスキルを持つ外国人材の雇用ニーズが高まっています。
そこで注目されているのが、就労ビザの「技術・人文知識・国際業務」です。
このビザで働く外国人はどのような仕事に就けるのでしょうか。
また、企業側は採用時にどのような点に注意すべきなのでしょうか。
本記事では、就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」の概要から、取得条件、従事できる仕事、企業の注意点まで詳しく解説します。
目次
就労ビザの「技術・人文知識・国際業務」とは?
就労ビザには16種類あり、その一つが「技術・人文知識・国際業務」です。
頭文字をとって「技人国ビザ」とも呼ばれています。
このビザは、各分野で高度な知識・スキルが必要な業務を行うための就労ビザで、在留期間は5年、3年、1年または3ヵ月です。
取得するためには審査が設けられており、学歴や実務経験、雇用先の業務内容、専門性などで判断されます。
本人の専門的知識やスキル、海外文化に基づく考え方やとらえ方が活かせる業務に従事する場合が対象で、関連性の低い業務や単純作業などは認められません。
就労ビザの「技術・人文知識・国際業務」でできる主な仕事
「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザでは、専門的な知識やスキルを活かせる仕事に就くことができます。
具体的にどのような仕事ができるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
技術
技術分野には、ITや化学、工学などのいわゆる理系の分野が該当します。
具体的な職種としては、以下のようなものがあります。
- システムエンジニア
- プログラマー
- 情報セキュリティーの技術者
- 建築・土木などの設計者
- 機械工学の技術者など
専門的な知識と技術が求められる職種が中心となります。
人文知識
人文知識分野は、法律や経営、社会学など文系のイメージが強い分野です。
具体的な仕事としては、以下のようなものがあります。
- 人事、経理、法務などのバックオフィス業務
- 貿易など海外と関わる業務
- 企画・商品開発
- マーケティング・広報
- コンサルティングなど
専門的な知識を活かして、企業運営に関わる仕事が多いのが特徴です。
国際業務
国際業務分野は、外国人ならではの考え方や文化的知識、語学などを活かせる業務が中心となります。
具体的な仕事としては、以下のようなものがあげられます。
- 語学講師
- 通訳
- 翻訳
- ホテルスタッフ(通訳が主業務)
- デザイナーなど
言語スキルや異文化理解を活かせる仕事が多いですね。
「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを取得する条件
「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを取得するには、いくつかの条件をクリアする必要があります。
就労ビザは、基本的には外国人本人が申請して取得するものですが、本人が十分に手続きを理解しているとは限らないこともあります。さらに、企業の待遇や安定性などを示す必要もあるため、企業側のサポートも必要不可欠です。
以下、就労ビザの取得条件について詳しく解説します。
学歴・職務要件を満たす
就労ビザを取得するには、学歴要件か職歴要件のいずれかを満たす必要があります。
学歴要件は、日本か海外の大学を卒業、もしくは法務大臣が定めた要件に該当した日本の専門学校を卒業することです。
どちらも、関連する科目の専攻が必要です。
ただし、海外の大学を卒業していても、学士以上の学位が認められなければいけません。
海外の専門学校を卒業している場合は、学歴の要件は満たせません。
学歴要件を満たさない場合でも、職歴要件を満たすと取得できます。
職歴要件は以下のとおりです。
- 技術・人文知識分野:実務経験10年以上
- 国際業務:実務経験3年以上
ただし、ただ単に社会人として働いた経験があれば良いわけではなく、日本で行う仕事と同じ業務での実務経験が求められます。
日本人と同等もしくはそれ以上の給与が支払われる
就労ビザを取得するには、日本人と同等かそれ以上の給与が支払われる職場での就労が決まっている必要があります。
外国人だからとの理由で、給料を安くするのは認められません。
ただし、「月額〇〇万円以上」といったような明確な金額は決まっておらず、日本人と同等額でない理由から不許可になったケースもあるので注意が必要です。
勤務先の会社に安定性や継続性がある
就労ビザの審査では、外国人労働者に給与を支払えるほどの安定性があるかどうかも見られます。
一般的に、決算書を提出して判断されますが、会社を立ち上げたばかりで決算書がない場合は、事業計画書を出して安定性を示す必要があります。
会社の安定性や継続性は、就労ビザ取得の重要なポイントといえるでしょう。
本人の素行に問題がない
就労ビザの取得には、本人の素行に問題がないことも条件の一つです。
具体的には、素行不良や退去強制、犯罪歴がないかどうかがチェックされます。
また、学生時代に資格外活動の許可(週28時間未満)を超えてアルバイトをしていないかもチェックされるので、注意が必要です。
「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを持つ外国人労働者を採用する際の注意点
「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを持つ外国人を雇用する際は、いくつかの注意点があります。
採用時の注意点を把握して、トラブルを未然に防ぎましょう。
業務内容と専攻学問が一致しているか
就労ビザを取得するには、業務内容と専攻学問に関連性があることが求められます。
したがって、採用時は求職者の学習内容や職歴と業務内容に関連性があるかどうかを確認する必要があります。
専攻学問が一致していても、工場のライン作業やホテルのベッドメイキングなどでは、就労ビザはおりません。
要件を満たしていても、書面に正確に記さなかったことが原因で不許可になる可能性もあるので注意しましょう。
不法就労助長罪に気を付ける
外国人を雇用する際は、不法就労助長罪にも気を付ける必要があります。
在留資格を持たない状態で雇用すると、外国人だけでなく企業も処罰の対象になる可能性があるのです。
採用時は在留カードの在留資格を必ず確認し、外国人に任せきりにするのではなく、企業側も外国人採用のルールや注意点を把握しておくことが大切です。
就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」の理解を深めたうえで外国人の雇用を行おう
就労ビザの「技術・人文知識・国際業務」は、専門的な知識やスキルを持つ外国人が日本で働くためのビザです。
技術、人文知識、国際業務の3つの分野で、幅広い仕事に就くことができます。
ビザの取得には、学歴や職歴、給与、勤務先の安定性など、いくつかの条件をクリアしなければなりません。
また、外国人を雇用する企業側も、業務内容と専攻学問の一致や不法就労助長罪など、注意すべき点があります。
外国人雇用に関するルールをしっかりと把握して、適切に対応していくことが求められます。