特定技能である製造業(素形材・産業機械・電気電子情報関連産業)は、人手不足解消のために導入された外国人向けの在留資格です。
機械金属、加工金属表面処理、電気・電子機械組立ての3区分から成っており、日本の生産力を底上げする仕組みとなっています。
今回はこの特定技能の一つである製造業がどのような職種か、資格取得のための条件も含めて見ていきます。
受入れを検討する企業の方に向けての情報も紹介しているので、チェックしてみてください。
目次
特定技能「製造業」とは?
特定技能の「製造業(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)」とは外国人向け在留資格の一つで、深刻化する人手不足に対応するために設置されました。
この制度により、一定の専門性・技能を持つ外国人を日本の事業所で受入れることができます。
製造業分野の特定技能には以下2つがあります。
- 特定技能1号:相当程度の知識または経験が必要
- 特定技能2号:熟練した技能が必要な業務に従事できる
近年、製造業では人材不足が非常に問題視されています。
厚生労働省が公表している一般職業紹介状況のデータによると、生産工程従事者(製造業)の有効求人倍率※が2023年2月に1.95、2024年2月に1.66でした。
一方で、出入国在留管理庁が出した特定別技能在留外国人数の資料によると、製造業分野の特定技能1号在留外国人数は2022年12月の27,725人から、2023年12月には40,069人になっており、大幅な増加傾向にあります。
特定技能の製造業が創設されたことで、専門的・技術的分野の外国人材の受入れが進み、人手不足の解消や製造業の発展に寄与することが期待されています。
※一人の求職者に対しての求人数を表したもので、1.0を大きく上回るほど求人数のほうが求職者より多い
特定技能「製造業」は3区分に分かれる
特定技能「製造業」は3つの区分に分かれています。
令和4年に「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」として3分野が統合され、現在は以下の3区分に分かれています。
- 機械金属加工区分
- 金属表面処理区分
- 電気・電子機械組立て区分
それぞれの役割をしっかり確認していきましょう。
機械金属加工区分
「機械金属加工区分」は、素形材製品や産業機械などの製造工程作業を行う分野です。
各業務で、素形材製造や機械製造に関する基本的な知識や経験が必要になります。
主な業務は以下のとおりです。
- 鋳造、鍛造
- 工場板金
- 金属プレス加工
- プラスチック成形
- 電気機器組立て
金属表面処理区分
「金属表面処理区分」は、素形の表面を加工することで、硬度や耐熱性、密着性などを高める分野です。
表面を加工するために使用する薬品や安全性の知識と、加工技能が必要です。
主な業務には、メッキやアルミニウム陽極酸化処理があります。
電気電子機械組立て区分
「電気電子機械組立て区分」は、電気・電子機器の製造や組立てをする分野です。
製造と組立てに必要な、電気・電子機器の部品に関する知識と、加工技能が必要です。
主な業務は以下のとおりです。
- 機械加工 、 仕上げ
- プラスチック成形
- プリント配線板製造
- 電気・電子機器組立て
- 機械検査 ・保全
製造業の特定技能を取得するには
製造業の特定技能を取得するためには、一定の条件を満たす必要があります。
ここでは、特定技能取得に必要な条件について詳しく解説していきましょう。
必須条件
特定技能を取得するには、18歳以上であることが必須条件です。
健康状態も良好でなければなりません。
特定技能1号の場合は、日本語試験で相当のレベルを保有することと、製造分野特定技能1号評価試験での合格が条件です。
特定技能2号の場合は、日本語試験がなく、区分ごとに定められている製造分野特定技能2号評価試験に合格することで取得できます。
日本語試験
特定技能1号の取得に必要な日本語能力水準は、日本語能力試験(JLPT)か、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)で測られます。
日本語能力試験では、基本的な語彙や漢字を使い書かれた文章、ややゆっくりと話す会話で、ほぼ意味を理解できるN4レベル以上が合格基準です。
一方、国際交流基金日本語基礎テストでは、ある程度日常的な範囲の会話ができ、生活に困らない程度のA2レベル以上が求められます。
製造分野特定技能1号評価試験
特定技能1号の取得のために受験が必要な製造分野特定技能1号評価試験は、実技試験と学科試験の2つに分かれています。
それぞれの試験の概要を見ていきましょう。
実技試験
実技試験では、原材料や模型、写真などから基本的な技能の判別や判断を行い、技能を判定します。
試験は、ペーパーテスト方式で実施され、60%以上の正答率で合格です。
製造業に必要な専門的な技能を有しているかが問われる試験になっています。
学科試験
学科試験では、製造に必要な材料や安全衛生、作業の方法などの知識について確認されます。
テストセンターのパソコン画面上で回答するCBT方式、または、ペーパーテスト方式で実施され、65%以上の正答率で合格です。
製造業に関する専門的な知識を有しているかが問われる試験です。
製造分野特定技能2号評価試験技能試験
特定技能2号の取得に必要なのは、各区分ごとに定められた製造分野特定技能2号評価試験での合格です。
しかしその他にも、以下の条件を満たしておく必要があります。
- ビジネス・キャリア検定3級
- 日本国内における3年以上の実務経験
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ビジネス・キャリア検定3級
ビジネス・キャリア検定とは職務を行ううえで必要な知識と技能の評価をする検定です。
3級は実務経験3年程度のレベルで、係長やリーダー職に相当します。
製造分野特定技能2号評価試験では、以下2つの区分から一つを選んで受験する必要があります。
- 生産管理プランニング区分
- 生産管理オペレーション区分
日本国内における3年以上実務経験
試験の申し込み時には、実務経験に係る証明書が必要です。
これは特定技能2号の取得でのみ求められます。
特定技能外国人材制度(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)のポータルサイトによると、「日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有すること」と定められています。
企業が製造業の特定技能外国人を雇用するための要件
企業が特定技能外国人を雇用するためには、以下のような要件を満たす必要があります。
- 企業が日本標準産業分類に該当していること
- 製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会への加入
- 適切な支援の実施(特定技能1号のみ対象)
ここでは、企業が満たすべき要件について詳しく見ていきましょう。
企業が日本標準産業分類に該当していること
特定技能外国人を雇用するためには、まず企業が「日本標準産業分類」に該当している必要があります。
日本標準産業分類とは、社会的な分業として経済活動を行う事業所を分類したものです。
対象となる産業分類一覧は、特定技能外国人材制度(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)のポータルサイトで確認できます。
受入れ準備に入る前にしっかり確認しておきましょう。
製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会に加入
製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会は経済産業省によって組織されました。
特定技能外国人を受入れる事業所同士の連携を深めるとともに、外国人材に対する適切な対応のための施策共有や、課題の把握を行うための組合です。
特定技能外国人の受入れを希望する企業は、出入国在留管理庁への申請前に、経済産業省が運営する特定技能外国人材制度(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)のポータルサイトから加入の申請を行う必要があります。
支援を適切な実施(特定技能1号のみ対象)
特定技能外国人の雇用には、各種支援を適切に実施することも要件の一つです。
しかしこの要件は、特定技能1号にのみ適用されます。
具体的な支援は、日本語学習や生活面でのサポート、労働関連法令などの情報提供です。
また、これらの支援を登録支援機関にすべて委託した場合でも、適切な実施体制があると認められます。
特定技能「製造業」の分野や取得条件を知って参考にしよう
素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業が統合された特定技能「製造業」は現在、機械金属加工、金属表面処理、電気・電子機械組立ての3区分からなる在留資格です。
製造業の特定技能を取得するためには、18歳以上の外国人であることや日本語試験と技能試験の合格などの必須条件があります。
特定技能外国人を雇用する企業でも、協議・連絡会への加入や日本標準産業分類への該当、適切な支援の実施が必要です。
製造業の人手不足解消と発展のためにも、特定技能「製造業」の内容を理解し、導入を検討してみましょう。