
企業の人材不足や多様性の確保のため、外国人の採用を検討する企業が増えています。
特定活動9号は、海外の大学生を一定期間インターンシップ生として受け入れられる在留資格です。
この記事では、特定活動9号の概要や企業側のメリット、受け入れの際の準備や注意点などを解説します。
目次
特定活動9号とは
特定活動9号は、海外の大学に在籍する学生が、大学の教育課程の一環として、日本の企業などでインターンシップに従事することを認める在留資格です。
外国の大学の学生(卒業または修了をした者に対して学位の授与される教育課程に在籍する者(通信による教育を行う課程に在籍する者を除く)に限る)が対象です。
当該大学と日本の企業などとの契約に基づき、報酬を受けて、1年を超えない期間で、かつ、通算して当該大学における修業年限の2分の1を超えない期間内に業務に従事することが認められます。
特定活動9号のインターンシップを企業が受け入れるメリット
特定活動9号のインターンシップを、企業が受け入れるメリットは、多岐にわたります。
外国人の受け入れ体制の整備や自社活動のアピール、社員教育、優秀な人材の確保、新たなアイデアの創出などが期待できます。
以下、詳しく見ていきましょう。
企業の外国人受け入れ体制を作るきっかけになる
特定活動9号のインターンシップを受け入れるためには、ビザ取得のための準備や各種手続きが必要です。
これらの準備を通じて、外国人の受け入れ体制を整えることができます。
今後増加が予想される外国人雇用に向けて、受け入れノウハウを蓄積し、体制を整備しておくことは、企業の大きな強みになるでしょう。
自社の活動をアピールできる
特定活動9号のインターンシップの受け入れは、「外国人採用」や「グローバル採用」に力を入れていることの対外的なアピールにつながります。
企業のグローバルな活動を押し出すことで、企業イメージの向上にも寄与するでしょう。
社員教育に活用できる
インターンシップの受け入れは、社員のグローバルな感覚を育成するきっかけにもなります。
外国人とのコミュニケーションを通じて、社員の外国語スキルや異文化理解を向上させることができます。
また、インターンシップ生に業務を教えることで、社員の指導力やマネジメント能力の向上も期待できるでしょう。
優秀な外国人を雇用できる可能性が高まる
海外の大学生をインターンシップ生として受け入れることで、将来優秀な人材を雇用できる可能性が高まります。
インターンシップ期間中に、実際の業務を通じて実力を評価でき、これにより採用後のミスマッチを防ぐことにもつながるでしょう。
インターンシップ修了後に就職につなげることで、即戦力となる人材の確保が期待できます。
新たなアイデアを生み出すきっかけになる
多様な人材は、それぞれ幅広い経験や知識、スキルを有しており、企業に新たな視点やアイデアをもたらします。
異なる文化背景を持つ人材との協働は、企業の創造力やイノベーション力、問題解決力の向上などにも効果があるでしょう。
特定活動9号の留学生を受け入れる準備
特定活動9号の留学生を受け入れるには、いくつかの準備が必要です。
インターンシップの条件の把握や大学との協定締結、留学生の書類提出サポート、入管への申請、住居の手配、責任者の選出など、受け入れまでのプロセスを確認しておきましょう。
特定活動9号におけるインターンシップの条件の把握
特定活動9号で受け入れ可能な留学生の条件は、以下のとおりです。
- 海外の大学に在籍している大学生であること(通信教育をしている大学は対象外)
- 日本入国時18歳以上であること
- 1年を超えない期間で就業年限の半分を超えない期間
これらの条件を満たす留学生を、受け入れ対象として検討します。
大学との協定を結ぶ
インターンシップビザで海外の大学生を受け入れる企業は、大学と契約を結ぶ必要があります。
契約書には、インターンシップの目的や期間、報酬、業務内容、留学生の要件などを明記します。
企業と大学双方が合意のうえで、インターンシップ契約書を作成しましょう。
留学生の書類提出のサポート
インターンシップビザの申請には、多くの書類が必要です。
受け入れ企業には、外国人インターンシップ生の書類提出をサポートすることが求められます。
必要書類の一覧を作成し、インターンシップ生に提供しましょう。
また、書類の記入方法や提出期限などについても、丁寧に説明することが大切です。
出入国在留管理庁への申請
インターンシップビザの取得には、出入国在留管理庁への申請が必要です。
申請書類を作成し、必要な添付資料を揃えたうえで提出します。
審査結果が出るまでには、一定の時間を要することを留意しておきましょう。
住居の手配
インターンシップ生の受け入れに際しては、住居の手配も重要な準備の一つです。
企業が住居(寮)を確保し、最低限の生活ができる家具や家電を用意しておく必要があります。
快適な生活環境を整えることで、インターンシップ生が安心して業務に専念できるようサポートしましょう。
責任者の選出
インターンシップ生の受け入れには、責任者の選出も欠かせません。
責任者は、以下の条件を満たす必要があります。
- インターンシップ生の指導や管理を行うこと
- インターンシップ生の生活面のサポートを行うこと
- インターンシップ生との定期的な面談を実施すること
条件を満たす責任者を選出し、インターンシップ生の受け入れ体制を整えましょう。
特定活動9号を受け入れる際のポイント
特定活動9号のインターンシップを受け入れる際は、いくつかのポイントに注意が必要です。
受け入れプロセスの明確化や、任せる仕事量の配慮などが挙げられます。
スムーズな受け入れのために、これらの点に留意しましょう。
受け入れプロセスを明確化する
インターンシップの受け入れから、業務開始までの一連のプロセスを、明確化しておくことが重要です。
どの工程にどのくらいの時間がかかるかを具体的に把握し、スケジュールを立てましょう。
任せる仕事量を配慮する
インターンシップは大学教育の一環であることを踏まえ、インターンシップ生に任せる仕事量にも配慮が必要です。
また、外国の大学において専攻している科目と関連する業務に従事するなどにより、インターンシップにおいて修得する知識・経験などが、大学において学業の一環として適正に評価されることも求められます。
業務内容は一定の知識・技術などを身につけることが可能な活動が必要であるとされており、工場での軽作業や清掃などの単純作業は対象外です。
特定活動9号を受け入れる注意点
特定活動9号のインターンシップの受け入れには、いくつかの注意点があります。
異文化間の摩擦や教育コストと採用期間のズレ、労働条件の調整、受け入れ準備の複雑さなどに留意が必要です。
これらの点に注意しながら、受け入れ体制を整えていきましょう。
異文化間の摩擦
異なる文化の背景を持つ人々同士では、コミュニケーションのスタイルや価値観、考え方などが異なるため、誤解や摩擦が生じる可能性があります。
外国人インターンシップ生が、日本の常識で考えると不適当だと思う行動をしてしまうこともあるかもしれません。
互いの文化や価値観の違いを理解し、尊重し合うことが大切です。
教育コストと採用期間のズレ
インターンシップ生の教育や研修には、一定のコストと時間がかかります。
インターンシップ生向けの研修プログラムを作成し、教育担当者を配置する必要があるため、社員の負担が増えることも考えられるでしょう。
こうしたコストを回収するためには、企業は短期間でインターンシップ生に成果を期待しなければならず、インターンシップ期間中に多くの業務を任せることになります。
教育コストと採用期間のバランスを考慮することが重要です。
労働条件の調整
企業は、インターンシップ生に対して、労働時間、賃金、休暇などの労働条件を法令に基づいて適切に設定することが必要です。
各国の労働基準や習慣の違いを考慮しながら、適切な労働条件を整備しましょう。
受け入れ準備が複雑であること
外国人インターンシップ生の受け入れには、住居の手配や初期研修の計画など、さまざまな準備が必要です。
インターンシップ開始前に、企業の業務内容や社内ルール、安全に関する情報などを説明する初期研修を実施する必要もあります。
また、生活面のサポートも欠かせません。
これらの準備を円滑に進めるための体制作りが重要です。
報酬が直接払いであること
特定活動9号では、外国人インターンシップ生に支払う報酬は、直接払いをする必要があります。
この在留資格が、海外大学と日本企業の直接提携を前提としており、第三者が間に入る契約ではないためです。
海外大学から学生を募集する際には、各都道府県の最低賃金以上の賃金に加え、時間外手当なども細かく決めておく必要があります。
また、インターンシップ生の銀行振込口座を作成することも、忘れないようにしましょう。
税金・社会保険料がかかること
外国人インターンシップ生に支払う報酬には、所得税がかかります。
ただし、日本と租税条約を締結している国から来ている外国人の場合、租税条約が適用される場合があります。
租税条約に関する届出書を管轄の税務署に提出することにより、免税となることもあるので確認しておきましょう。
なお、住民税はかかりませんが、社会保険や労災には加入する必要があります。
手続きを忘れずに進めることが大切です。
特定9号のインターンシップ受け入れによってグローバル競争力を強化できる
特定活動9号での外国人インターンシップ生の受け入れは、外国人材の受け入れ体制整備、グローバル化アピール、社員教育、優秀な人材確保、新アイデア創出など、企業の競争力強化につながります。
一方で、異文化間摩擦や教育コスト、労働条件の調整、受け入れ準備の複雑さなどの注意点もあるので、留意しながら着実に受け入れ体制を整備することが重要です。