特定技能という在留資格を得ることで、専門性やスキルを有した外国人が、日本の宿泊施設で働くことが可能になっています。
本記事では、特定技能「宿泊業」について、概要や業務内容、試験などをわかりやすく解説します。
目次
特定技能の「宿泊業」とは
特定技能の「宿泊業」は、専門性やスキルを有した即戦力となる外国人材が、宿泊施設で働く際に必要な在留資格です。
日本の人手不足を補うための制度で、外国人材の受け入れ拡大につながっています。
特定技能には、1号と2号の2種類があります。
特定技能1号
特定技能1号は「受入れ分野で即戦力として活動するために必要な知識または経験を有すること」とされています。
特定技能測定試験(1号)で、技能と日本語能力が適切なレベルに達しているかどうかが確認され、試験に合格すれば最長5年の在留および就労が認められます。
ただし、家族の帯同は認められません。
あくまで、即戦力として期待される外国人材の受け入れが目的です。
特定技能2号
令和5年6月に追加された特定技能2号は、熟練した技能を有する外国人材の受け入れをめざすものです。
「受入れ分野で熟練した技能を有すること」が条件とされ、特定技能測定試験(2号)で水準を満たす実力があるかどうかを確認されます。
特定技能1号の外国人が日本に滞在中に受験し、合格することでも2号への移行が可能です。
特定技能2号は在留期間が更新でき、条件を満たすことで永住申請も可能となります。
要件を満たせば家族の帯同も認められます。
外国人技能実習制度との違い
特定技能と似たような制度に外国人技能実習制度がありますが、両者は異なるものです。
技能実習制度は、開発途上地域に日本の技術や知識を伝授し、開発途上地域の経済発展に貢献することをめざす協力的制度です。
日本の人手不足を補う労働力を確保するための制度ではありません。
また、決められた実習や労働以外は禁止されているという特徴があります。
一方、特定技能は、国内人材が不足している業種で「即戦力」として外国人労働者を受け入れることをめざす制度です。
そのため、労働者は即戦力やコミュニケーション力、経験などが求められるのです。
また、雇用は原則として正規社員であり、報酬も日本人と大差なく、同じ業種間での転職も認められています。
特定技能「宿泊業」の業務内容
特定技能「宿泊業」の外国人材は、宿泊施設におけるさまざまな業務に従事できます。
また、施設内の関連業務も担当可能です。
宿泊施設における業務
特定技能「宿泊業」の外国人材は、フロント業務、企画・広報業務、接客業務、レストランサービス業務などに従事できます。
従来は例外をのぞいて技術や人文知識、国際業務ビザを取得した外国人しかできなかった業務ですが、現在は特定技能評価試験に合格すれば対応可能となりました。
つまり、専門的なスキルを持つ外国人材の活躍の場が広がったといえるでしょう。
宿泊施設の関連業務
特定技能「宿泊業」の外国人材は、ホテルや旅館施設内の売店での館内販売、館内備品の点検・交換なども対応可能です。
ベッドメイキングもメインでなければ可能とされています。
ただし、あくまでサブの仕事であり、フロントやレストランサービスをメインに行うことには変わりありません。
関連業務をこなすことで、宿泊施設における業務の流れを理解し、お客様へのサービス向上につなげることが期待されています。
特定技能「宿泊業」の外国人を採用するには
特定技能「宿泊業」の外国人を採用するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
まず、宿泊施設のフロント、企画・広報、接客およびレストランサービスなどの宿泊サービスの提供にかかわる従事者として直接雇用することが求められます。
また、施設自体が旅館業法(昭和23年法律第138号)第2条第2項に規定する「旅館・ホテル営業」の許可を受けており、風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号。以下「風俗営業法」という。)第2条第6項第4号に規定する「施設」に該当しないことも条件の一つです。
特定技能外国人に風俗営業法第2条第3項に規定する「接待」を行わせないことも重要なポイントとなります。
さらに、受入れ企業は、国土交通省が設置する「宿泊分野特定技能協議会」の構成員になり、協議会に対して必要な協力を行うことが求められます。
加えて、国土交通省またはその委託を受けた者が行う調査や指導に対する協力も必要不可欠です。
最後に、受入れ企業は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するには、以下の条件をすべて満たす登録支援機関に委託することが義務付けられています。
- 宿泊分野の基準
- 宿泊分野特定技能協議会の構成員となること
- 宿泊分野特定技能1号評価試験に合格
特定技能「宿泊業」の取得要件
特定技能「宿泊業」の在留資格を取得するためには、日本語能力と、宿泊分野特定技能評価試験の合格が求められます。
日本語能力が秀でている
特定技能「宿泊業」の在留資格を取得するには、「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に合格、または業務上必要な日本語能力を有するという要件があります。
生活に支障がない程度の日本語能力を持っていることを示す必要があるのです。
ただし、第2号技能実習を良好に修了した者は、技能実習生として3年程度日本で生活したことである程度日常会話ができ、生活に支障がない日本語能力を有すると認められるため、「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」は免除されます。
日本語でのコミュニケーション力は、宿泊業務を円滑に進めるうえで非常に重要な要素といえるでしょう。
宿泊分野特定技能評価試験に合格している
特定技能1号の在留資格により受け入れる外国人は、宿泊分野特定技能1号評価試験に合格していなければなりません。
また、特定技能2号の在留資格により受け入れる外国人は、宿泊分野特定技能2号評価試験の合格が必要です。
さらに特定技能2号では、宿泊サービスの提供に関わる業務での実務経験も求められます。
試験に合格し、実務経験を積むことで、即戦力としての能力が認められるのです。
宿泊分野特定技能評価試験は、外国人材の受入れにおける質の担保につながっているといえるでしょう。
特定技能「宿泊業」の取得試験の内容
特定技能「宿泊業」の取得試験には、1号試験と2号試験があります。
それぞれの試験内容や受験資格を詳しく見ていきましょう。
宿泊分野特定技能1号試験
宿泊分野特定技能1号試験では、「技能水準」と「日本語能力水準」の両方に合格する必要があります。
前述したように、語学力では国際交流基金 日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上の合格が必要とされています。
技能試験受験資格は、試験日に17歳以上であることと、日本国内で試験を受験する場合は在留資格を有していることです。
試験内容は学科試験と実技試験で構成されており、宿泊施設のフロント業務、企画・広報業務、接客業務、レストランサービス業務、また安全衛生および宿泊業の基本事項などが出題範囲となっています。
1号試験に合格することで、即戦力としての能力が認められます。
宿泊分野特定技能2号試験
宿泊分野特定技能2号試験を受験するには、試験日の前日までに、宿泊施設で複数の従業員を指導しながら、フロント、企画・広報、接客、レストランサービスなどの業務に2年以上従事した実務経験が必要です。
試験申込みの際には、別添様式の証明書を提出しなければなりません。
他の受験資格としては、試験日に17歳以上であり、日本国内で試験を受験する場合は在留資格を有していることが条件となっています。
試験内容は1号試験と同様に、学科と実技の2つです。
学科は、宿泊業務のフロント業務、企画・広報業務、接客業務に関する専門的な知識を有しているか、現場のリーダーとして適切な対応をとれるかを判断する内容です。
また、心構え、身だしなみ、言葉遣い、立ち振る舞い、マナーに関しても評価されます。
実技試験は、フロント業務、接客業務、レストランサービス業務に関して、利用者の求めに適切な対応をとれるかなどがチェック項目です。
2号試験に合格することで、より高度な技能を有する人材であると認められます。
特定技能「宿泊業」の外国人材の活躍が期待される
特定技能「宿泊業」は、専門性やスキルを有した即戦力となる外国人材の受け入れを目的とした在留資格です。
特定技能1号と2号があり、それぞれ求められる要件や試験内容が異なります。
宿泊施設におけるフロント業務や接客業務などに従事でき、関連業務も担当可能です。
採用するためには、さまざまな条件をクリアする必要があります。
特定技能「宿泊業」の外国人材の活躍により、宿泊業界の人手不足解消と、サービスの質の向上が期待されています。