日本は世界でも有数の高齢社会であり、介護職に従事する人材の不足は深刻な問題です。
介護現場の人手不足を解消するため、外国人労働者の活用が注目されています。
そこで、訪問介護の分野で特定技能介護の解禁がいつになるのかと、制限緩和にともなうメリットとデメリットを解説します。
目次
訪問介護の特定技能解禁はいつ?
訪問介護の分野で外国人労働者の活用が期待されているなか、特定技能介護の訪問介護における制限緩和がいつになるのかに注目が集まっています。
2025年から解禁される予定
厚生労働省は2024年6月19日の有識者検討会で、特定技能の外国人材も訪問介護サービスに従事することを解禁する方針を決めました。
従事者の要件や介護事業者の順守事項などを固め、2025年度の実施をめざしています。
介護分野における人手不足は深刻な問題であり、訪問介護の分野でも外国人労働者の活躍に対する期待は大きなものです。
特定技能介護の制限緩和により、人材確保の選択肢が広がることが予想されます。
解禁されることで人手不足が改善される見込み
介護分野において、令和10年度には22万7,000人程度の人手不足が見込まれています。
介護ロボット、ICT等の活用などの取り組みによる5年間で2%程度の生産性向上(4万7,000人程度)や、処遇改善、高齢者および女性の就業促進等による追加的な国内人材の確保(4万5,000人程度)を行っても、なお不足するとの判断です。
そんななか、特定技能介護が解禁されることで人手不足が改善される見込みです。
外国人労働者の活用により、介護現場の負担軽減や サービスの質の向上が期待できます。
訪問介護の特定技能が解禁されるメリット
特定技能介護の解禁により、訪問介護の分野でも外国人労働者の活用が可能になります。
そこで、特定技能介護の解禁によるメリットについて詳しく見ていきましょう。
人材を確保することができる
特定技能介護の解禁により、訪問介護の分野でも外国人労働者を活用できるようになります。
これにより、訪問介護分野で深刻だった人材不足を改善できると期待されています。
活躍できる人材が増えることで、現職の人たちも労働状況の改善を見込めます。
外国人労働者の活用により、介護現場の負担軽減や働き方の改善が見込まれるでしょう。
即戦力の雇用ができる
特定技能介護の訪問介護解禁により、今まで介護分野に携わってきた、実務経験のある外国人労働者を採用することが可能です。
日本語能力が高水準であるなど、即戦力となる人材を活用できるため、スムーズな現場への適応が期待できます。
また、外国人労働者にとっても力を発揮できる職場が広がるため、メリットが大きいといえます。
外国人労働者にとっても、自身の経験やスキルを活かせる場が増えることは喜ばしいことでしょう。
特定施設以外でも雇うことができる
特定技能介護の訪問介護解禁により、訪問介護事業所、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)、特定施設ではない住宅型有料老人ホームなどでも外国人の雇用が可能になります。
今まで人手を確保できなかった施設でも、外国人材の活用により、人材を充実させることができるようになるでしょう。
これにより、サービスの質の向上や利用者の満足度の向上が期待できます。
訪問介護の特定技能が解禁されるデメリット
特定技能介護の解禁により、訪問介護の分野でも外国人労働者の活用が可能になります。
メリットが大きい反面、特定技能介護の訪問介護解禁にはデメリットもあります。
ここでは、特定技能介護の解禁によるデメリットについて詳しく見ていきましょう。
マニュアル不十分によるトラブル発生のリスク
特に個人での判断が求められる訪問介護の現場では、不慣れな外国人労働者が一人で訪問することで起こるトラブルもあるでしょう。
特定技能介護の解禁にともなって、外国人労働者を雇用する際にマニュアルが不十分であることによる訪問介護トラブルが増加する可能性があります。
マニュアルの整備や研修の実施など、外国人労働者が円滑に訪問介護業務を行えるような環境づくりが重要です。
また、トラブルが発生した際の対応方法についても、事前に検討しておく必要があります。
訪問にともなうコストの増加
外国人労働者は日本の運転免許証を取得していないケースも少なくありません。
その結果、利用者の自宅などを訪問するための移動手段である自動車を使用することができず、送迎するための人件費などの費用がかさむ可能性があります。
訪問介護の特性上、移動手段の確保は重要な課題です。
外国人労働者の雇用に際しては、移動手段の確保や費用の負担についても、事前に検討しておく必要があるでしょう。
能力の高い人材の取り合い
特定技能介護の訪問介護解禁により、日本語能力が高かったり、実務経験が多かったりする外国人労働者の雇用メリットが高くなります。
そのため、能力の高い人材の取り合いが発生する可能性があるでしょう。
日本語や日本の文化、ケアのマナーを学ぶことができる研修や、視覚的なマニュアルの導入などで、外国人材が働きやすい職場づくりを進めておくことも重要です。
外国人労働者の定着率を高めるための取り組みが求められるでしょう。
現在訪問介護に従事できるビザ
現在、訪問介護に従事できるビザは、「在留資格・介護」と介護福祉士資格を取得後の「EPA介護福祉士」の2種類しかありません。
一方、介護施設でのサービスに従事できるビザはほかにもあります。
以下の表で、訪問介護に従事できるビザと施設系サービスに従事できるビザを比較します。
上表を見ると、現時点で訪問介護に従事できるビザは限定的であることがわかります。
特定技能介護の解禁により、訪問介護の分野でも外国人労働者の活用が広がることが期待されています。
訪問介護の特定技能介護解禁でより良い介護サービスをめざそう
特定技能介護の解禁により、訪問介護の分野でも外国人労働者の活用が可能になります。
人材不足の解消や即戦力の雇用、特定施設以外での雇用など、さまざまなメリットが期待できます。
一方で、マニュアルの不十分さによるトラブルの発生や訪問にともなうコストの増加、能力の高い人材の取り合いなどのデメリットも少なくありません。
これらのデメリットを最小限に抑えるためには、マニュアルの整備や研修の実施、移動手段の確保、外国人労働者の定着率を高めるための取り組みなどが重要です。
特定技能介護の解禁を機に、訪問介護現場での外国人労働者の活用を通じて、より良い介護サービスの提供をめざしていきましょう。