
日本の医療現場では、少子高齢化にともなう労働力不足が深刻化しています。
その解決策の一つとして注目されているのが、外国人看護師の採用です。
しかし、外国人を看護師として雇用する方法について、十分な情報を持たない人も多いでしょう。
また、必要な資格や手続きについても理解しておく必要があります。
本記事では、外国人看護師の採用について、その可能性や方法、必要な在留資格などを詳しく解説します。
外国人看護師の採用を検討している医療機関の人事担当者は、ぜひ参考にしてください。
目次
外国人を看護師として採用することは可能か
日本では、外国人を看護師として採用することが可能です。
しかし、母国で看護師資格を有している外国人であっても、日本で看護師として働くためには、日本の看護師国家試験に合格する必要があります。
日本の看護師資格を取得し、在留資格「医療」を得てはじめて、日本での看護師としての就労が可能になります。

外国人が日本で看護師になる方法
外国人が日本で看護師として働くためには、いくつかの方法があります。
日本の看護師養成所を卒業する方法や、外国で看護師免許を取得したあとに日本の看護師国家試験を受験する方法などです。
また、EPA(経済連携協定)に基づいて外国人看護師候補者として来日し、日本の看護師資格取得をめざす方法もあります。
日本の看護師養成所を卒業する場合
留学制度を利用して日本の看護師養成所に通うことで、日本の看護師国家試験を受験するために必要な単位を取得できます。
この場合、看護師国家試験の受験資格を得るためには、日本人学生と同じカリキュラムで学び、必要な単位を取得することが必要です。
授業や実習はすべて日本語で行われるため、日本語能力試験N2以上の高い日本語能力が求められます。
しかし、医療現場で必要な専門用語や実践的なコミュニケーション能力を、養成課程で身につけられる点はメリットです。
卒業後、看護師国家試験に合格すれば、在留資格「医療」を取得でき、日本全国の医療機関で看護師として働くことが可能となります。
外国で看護師免許を取得した場合
外国で看護師免許を取得している場合も、日本の看護師国家試験に合格することで、日本人と同様に看護師として就職できます。
通常、看護師国家試験を受験するには、指定の学校を卒業するか、准看護師として実務経験を積む必要があります。
しかし、外国で看護師免許を取得していれば、申請により受験が認められる場合があるのです。
ただし、母国で取得した看護師免許が日本の受験資格要件を満たしているかどうかの確認が必要です。
また、国家試験はすべて日本語で実施されるため、十分な日本語能力と専門的な医療用語の理解が求められます。
EPA外国人看護師候補者として来日した場合
日本は、EPA(経済連携協定)に基づいて、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3ヵ国から外国人看護師候補者の受入れを実施しています。
本制度を利用して来日した外国人看護師候補者は、日本の看護師資格取得を目的として学びながら、一定の要件を満たした施設や病院で就労することが可能です。
外国人看護師候補者を受入れたい場合は、唯一の受入れ機関である国際厚生事業団(JICWELS)を通す必要があります。
また、自施設が受入れの要件を満たしているかどうかを確認することも必要です。
外国人を看護師として採用するために必要な在留資格
外国人を看護師として採用するためには、適切な在留資格を取得しているかを確認する必要があります。
看護師として働くための在留資格には、「医療」もしくは看護師候補生の「特定活動(EPA看護師)」の2つがあります。
在留資格:「医療」
「医療」は、医師や看護師など医療系の資格を取得し、医療に関わる業務に従事するために与えられる在留資格です。
在留期間は、5年、3年、1年または3ヵ月であり、更新回数に制限はありません。
なお、看護師としてこの在留資格を申請するには、看護師免許の写しなどを提出し、日本の看護師資格を有していることを証明する必要があります。
在留資格:特定活動(EPA看護師)
「特定活動(EPA看護師)」は、日本の看護師資格取得を目的として、特例的に日本の医療機関で働く者に与えられる在留資格です。
来日前に日本語研修を受講し、日本語能力試験にて一定の日本語能力があることを認められた外国人が候補者として来日が可能となります。
滞在中に看護師国家試験は3回まで受験可能であり、合格した人は、そのままEPA看護師として在留資格を得て働き続けることが可能です。
一方、3年の期間内に看護師資格が取得できなかった場合は、帰国となります。
看護師全体の合格率は毎年9割程ですが、EPA看護師の合格率は1〜2割程度のため、外国人が日本で看護師になるハードルは高いといえるでしょう。
外国人看護師の採用を検討しよう
外国人を看護師として採用することは可能ですが、日本の看護師資格を所持する人材に限られます。
外国人が日本で看護師資格を得る方法としては、日本の看護師養成所を卒業する方法、外国で得た看護師免許で受検資格を満たし日本の看護師国家試験を受験する方法、EPA外国人看護師候補者として来日する方法などがあります。
また、外国人を看護師として採用するためには、適切な在留資格を所持しているか確認することも必要です。
「医療」や「特定活動(EPA看護師)」の在留資格を所持している外国人であれば、看護師または看護師候補者としての採用が可能になります。
外国人看護師の採用を検討する際は、受入れ要件を確認し、必要な手続きを行うことが重要です。
外国人看護師の採用は、日本の医療現場の多様性を高め、グローバル化に対応するための一つの方策といえるでしょう。