近年、外国人労働者の採用が増加しているなかで、労災保険の適用や対応について疑問を抱える企業も多いのではないでしょうか。
外国人労働者を雇用する際は、日本人労働者と同様に労災保険への加入が必要です。
本記事では、外国人採用における労災保険の加入義務や発災時対応の流れ、労災を防ぐための具体的な取り組みについて解説します。
正しい知識を身につけることで、外国人労働者が安心して働ける環境づくりにつながるはずです。
目次
外国人採用における労災保険の加入義務
労災保険は、外国人労働者にも適用される制度です。
国籍に関係なく、日本で働くすべての労働者が労災保険の対象となります。
労災保険とは、業務中や通勤時の事故、仕事が原因で発症した病気などについて、治療費や休業補償などが給付される保険制度のことです。
企業は労働者を雇用した時点で、雇用形態に関わらず労災保険への加入手続きを行わなければなりません。
パートタイマーやアルバイトはもちろん、不法就労者であっても労災保険の対象となることが定められています。
企業が労災保険への加入を怠った場合、保険料を遡って徴収されることに加え、追徴金を徴収されるリスクがあります。
外国人採用における労災対応の流れ
外国人労働者に労災が発生した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。
ここでは、労災発生時の具体的な対応手順について、3つのステップに分けて解説します。
労災保険の請求は期限が設けられているため、手順を把握しておくことが重要です。
医療機関を受診させる
労災が発生した場合、まず優先すべきは労働者の健康と安全です。
速やかに医療機関での受診を手配し、適切な治療を受けられるようにしましょう。
労災指定医療機関での受診は、手続きにより窓口での治療費の支払いが不要なため、お金の用意が必要ありません。
労災指定の医療機関以外で治療を受けた場合は、一旦治療費を自己負担しなければなりませんが、あとで労災保険の請求をすることで全額戻ってきます。
日本の医療システムに不慣れな外国人労働者のために、適切な医療機関を事前に調べておく、通訳を手配するなどのサポート体制を整えておくことをおすすめします。
労災申請の請求書を作成する
医療機関での受診後、労災保険の給付を受けるためには請求書の作成が必要です。
請求書の書式は、所轄の労働基準監督署もしくは厚生労働省のホームページから入手できます。
請求書は労働者本人が作成することになっていますが、事業所による証明が必要な箇所もあるため、企業側でのサポートが欠かせません。
外国人労働者の場合、言語の壁により書類作成が困難なケースも想定されます。
記入方法の丁寧な説明や、必要に応じて通訳を介しての支援を行うことが望ましいでしょう。
請求書を提出する
作成した請求書は、労災指定医療機関または管轄の労働基準監督署へ提出します。
提出された請求書をもとに、労働基準監督署が労災認定のための調査を実施します。
調査の結果、労災と認定された場合、医療機関または立て替え払いをした本人に治療費が支払われる流れです。
なお、調査の過程で追加の資料提出や聞き取りが必要となる場合もあるため、事業所として適切な協力体制を整えておくことが重要です。
外国人採用における労災を防ぐためにできること
外国人労働者の労災を未然に防ぐためには、適切な予防措置を講じることが重要です。
以下では、企業が実施すべき具体的な取り組みについて解説します。
安全衛生教育を徹底する
外国人労働者の安全を確保するためには、体系的な安全衛生教育が不可欠です。
雇用開始時はもちろん、作業内容の変更時や危険・有害な業務に従事する際など、適切なタイミングで教育を実施する必要があります。
特に来日したばかりの労働者に対しては、教育時にも言語面で配慮することが重要です。
通訳の配置や、ふりがなの併記、母国語での説明資料の用意など、確実な理解を促すための工夫が求められます。
また、教育実施後も定期的に理解度の確認を行い、必要に応じて再教育を実施することで、より効果的な労災予防が可能となります。
日本語学習をサポートする
職場での円滑なコミュニケーションを実現するための、外国人労働者の日本語学習支援も重要な取り組みの一つです。
日本語習得に役立つ情報の提供や、定期的な日本語研修の実施により、意思疎通の齟齬を防ぐことができます。
また、日本人従業員に対しても、外国人にもわかるように配慮した簡単な「やさしい日本語」の使用を推奨することで、より良好なコミュニケーション環境を築くことが可能です。
参考:「やさしい日本語 」の 手引き
これらの取り組みは、単なる言語習得支援にとどまらず、労災予防にも大きく貢献します。
労災保険は外国人労働者にも適用される
労災保険の加入は法的な義務であり、外国人労働者を含むすべての労働者を対象としています。
労災が発生した際は、速やかな医療機関の受診、適切な労災申請手続きが求められます。
また、労災を未然に防ぐためには、安全衛生教育の徹底や日本語学習支援など、外国人労働者特有の課題に配慮した取り組みが重要です。
これらの対応を適切に行うことで、外国人労働者が安心して働ける職場環境を実現することができます。