
日本では少子高齢化による労働人口減少が進み、特に地方や労働条件が厳しい産業において深刻な人手不足に陥っています。
そんななか、注目されているのが、外国人労働者の受入れです。
外国人労働者を雇用することで、企業の人手不足を改善し、消費者にとって便利なサービスを提供できる可能性があります。
本記事では、外国人労働者の受入れによって得られる経済効果について解説します。
メリットだけでなく、起こり得る問題点についても触れていくので、外国人労働者の雇用を検討している企業の採用担当者は、ぜひ参考にしてください。
目次
外国人労働者受入れによる経済効果
外国人労働者の受入れには、さまざまなメリットがあります。
ここでは、以下の5つの観点から、外国人雇用の経済効果について解説します。
- 人手不足の改善
- 地域経済の存続
- グローバル化の促進
- GDPの増加
- 採用コストの削減
人手不足の改善
外国人労働者を雇用すれば、企業の人手不足を改善できる可能性があります。
日本では少子高齢化による労働人口減少が加速しており、特に地方や労働条件が厳しい産業において、人手不足が深刻です。
外国人労働者の受入れで人手不足を改善すれば、消費者にとって便利なサービスの提供を継続できます。
現在日本では、一定の技能を持つ外国人に対して在留資格「特定技能」を認定しており、以下の16分野(特定技能1号の場合)で働くことができます。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 自動車運送業
- 鉄道
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 林業
- 木材産業
上記の産業は特に日本人の働き手が少ないとされ、一定の技能を持つ外国人労働者を雇用して、人材不足を解消する目的があります。
地域経済の存続
外国人労働者を受入れると、地域経済の存続につながります。
人口流出と高齢化が進んでいる地域では、労働力不足によって産業が成り立たなくなり、地域の生活基盤が崩れるおそれがあります。
そのような地域では、外国人労働者の就労を受入れることで、産業を維持し、地域社会・経済の存続が期待できるでしょう。
先述した特定技能制度を利用すれば、多くの地域でニーズの高い産業に対応できます。
外国人労働者を雇用することで、地域の活性化も見込めるのです。
グローバル化の促進
外国人労働者の受入れによって、企業のグローバル化が促進されます。
外国人労働者が異文化を日本に紹介したり、逆に日本の文化について海外に情報発信したりすることで、異文化ビジネスの広がり、外国人観光客の呼び込み、地元産品の輸出といった経済効果が期待できるのです。
また、多言語を話せる人材を雇用することで、訪日外国人への対応が可能になったり、海外取引の機会が増えたりします。
さらに、外国人ならではの視点をビジネスに取り入れると、新しいアイデアが生まれたり、日本人労働者の刺激になったりもするでしょう。
GDPの増加
外国人労働者を受入れると、GDP(国内総生産)の増加にもつながります。
GDPとは、一定期間内に国内で生産されたモノ・サービスの付加価値の合計額です。
外国人労働者を雇用し、国内の労働力を増やすことで、GDPも増えます。
参議院の調査によると、実質GDPと在留外国人数は比例しています。
つまり、外国人労働者の数が増えるとGDPの値も増加し、景気も上昇する傾向にあるといえるのです。
採用コストの削減
外国人労働者の雇用は、採用コストの削減につながります。
採用対象者に外国人も含めることで求職者数が増えれば、採用サイクルが短縮化し、結果的に採用コストが抑えられるでしょう。
また、外国人労働者の受入れでは、一定の条件を満たすと、以下の助成金を使うことも可能です。
助成金の名称 | 内容 |
---|---|
人材確保等支援助成金 (外国人労働者就労環境整備助成コース) |
外国人労働者を雇用する企業に対し、就労環境の整備や職場定着に必要な費用の一部を助成する |
トライアル雇用助成金 (一般トライアルコース) |
ハローワークから紹介された求職者を3ヵ月試し雇用(トライアル雇用)することで、助成金を受給できる |
キャリアアップ助成金 (正社員化コース) |
有期雇用労働者(パート・アルバイトなど)を正社員へ転換させた企業に対し、助成金が支給される |
人材開発支援助成金 (人材育成支援コース) |
業務に関連した知識・スキルを習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する |
外国人労働者受入れで起こる経済的な問題
一方で、外国人労働者の受入れには、経済的なデメリットもあります。
ここでは、賃金上昇の抑制、国内産業への悪影響、財政支出の増加という3つの観点から、その問題点について説明します。
賃金上昇の抑制
外国人労働者を受入れ過ぎると、懸念されるのが賃金上昇の抑制です。
賃金は労働市場の需給によって決まっており、労働需要(雇い手)が増えるにつれて、労働供給(働き手)が減り、需給が緩和されます。
労働需給が緩和すると、人手不足の解消によって賃金が下がります。
現在多くの外国人労働者が働いているのは、賃金が安く、日本人求職者が集まりにくい業種です。
低賃金で働く外国人労働者を増やしてしまうと、労働市場の需給が緩み、全体の賃金が上がらない可能性があるのです。
国内産業への悪影響
低賃金で働く外国人労働者の受入れは、生産性向上の阻害要因となり得ます。
企業は安価な労働力を調達できない場合、設備投資などによって、生産性を向上させようとするものです。
しかし、低賃金で働く外国人労働者を雇った場合、設備投資をせずに生産性が低い工程・部門が国内に残ったままになります。
また、労働条件が厳しい産業ばかりに外国人労働者が集まると、雇用管理の改善も阻害されます。
外国人の多い労働市場に劣悪な労働条件が固定化し、労働市場の分断が生じるおそれもあるでしょう。
財政支出の増加
外国人労働者の受入れによって、財政支出が増える可能性があります。
外国人が日本で働きながら生活する場合、年金や医療保険などの社会保険、子育て支援など、公的資金からさまざまな費用がかかります。
低賃金で働く外国人労働者は、納税額も多いとは限りません。
外国人労働者の受入れによって増えた財政支出について、誰が負担するかを検討する必要があります。
外国人労働者の受入れは一定の経済効果が期待できる
外国人労働者の受入れには、人手不足の改善、地域経済の存続、グローバル化の促進、GDPの増加、採用コストの削減といったメリットがあります。
一方で、賃金上昇の抑制、国内産業への悪影響、財政支出の増加といったデメリットも存在します。
外国人労働者の受入れは、日本経済にとって一定の効果が期待できるでしょう。
ただし、メリットを最大化し、デメリットを最小化するためには、適切な受入れ体制の整備と、長期的な視点に立った対策が必要不可欠です。
企業は外国人労働者の雇用を検討する際、単なる人手不足の解消だけでなく、彼らが日本社会に溶け込み、企業の成長に貢献できる環境を整えることが重要です。