特定技能制度の適正な運用と、特定技能外国人の保護を目的として、各分野ごとに設置されている「協議会」。
特定技能外国人を受け入れる企業は、対象分野の協議会に加入することが義務付けられています。
ここでは、協議会の役割や加入の方法、タイミングについて詳しく解説していきます。
目次
特定技能の「協議会」とは?
特定技能制度の適正な運用を見守り、特定技能外国人を保護する役割を担うのが「協議会」です。
協議会では制度についての情報周知や法令順守の呼びかけ、人手不足の状況把握などを担い、企業・協議会・出入国在留管理庁が相互にチェックする仕組みも整えられました。
加入義務がある?
特定技能外国人を受け入れる企業は、対象分野の協議会への加入が義務付けられています。
協議会は介護やビルクリーニング、建設業など、特定技能の対象となる12分野それぞれに設置されているため、自社が該当する分野の協議会の要件を確認し、加入手続きを進めましょう。
加入するタイミング
ほとんどの分野では、特定技能外国人の受入れが決定してから4ヵ月以内に協議会への加入を済ませる必要があります。
ただし、建設業と製造業の分野では、特定技能外国人の在留資格申請前に加入しなければならないので注意が必要です。
協議会への加入が確認できない場合、特定技能外国人の在留資格が取り消される恐れもあります。
受入れが決まったタイミングで、できるだけ早めに手続きを行うことをおすすめします。
入会費用
建設業分野以外の協議会への加入に関する費用は、原則無料です。
建設業分野では、年会費と負担金が必要となる建設技能人材機構(JAC)という組織が設けられています。
JACへの加入には以下の費用がかかります。
年会費 | 正会員:36万円※団体によって異なる 賛助会員:24万円 |
受入負担金 | 月額:12,500~20,000円 |
今後、他の分野でも協議会加入費が必要となる可能性もあるため、対象分野の協議会の最新情報を定期的にチェックしておくことをおすすめします。
【分野別】特定技能の協議会一覧
特定技能の協議会は、構成員同士が連絡を取り合うことで特定技能外国人の適正な受入れと保護に役立つ情報を共有し、結びつきを強めることを目的としています。
各分野の協議会の一覧は以下のとおりです。
分野 | 協議会名 | 管轄省庁 |
介護 | 介護分野における特定技能協議会 | 厚生労働省 |
ビルクリーニング業 | ビルクリーニング分野特定技能協議会 | 厚生労働省 |
建設業 | 建設技能人材機構 | 国土交通省 |
造船・舶用工業 | 造船・舶用工業分野特定技能協議会 | 国土交通省 |
宿泊業 | 宿泊分野特定技能協議会 | 国土交通省 |
航空業 | 航空分野特定技能協議会 | 国土交通省 |
自動車整備業 | 自動車整備分野特定技能協議会 | 国土交通省 |
外食業 | 食品産業特定技能協議会 | 農林水産省 |
飲食料品製造業 | 食品産業特定技能協議会 | 農林水産省 |
農業 | 農業特定技能協議会 | 農林水産省 |
漁業 | 漁業特定技能協議会 | 水産庁 |
素形材・産業機械製造・ 電気電子情報 |
製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会 | 経済産業省 |
なお、特定技能制度については、以下の記事でもわかりやすく解説しています。
各分野の特定技能協議会への加入方法
初めて1号特定技能外国人を受け入れる企業は、はじめに地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請等を行う際に、「特定技能外国人の受入れに関する誓約書」の提出が必要です。
申請完了後、各分野の特定技能協議会に加入します。
それぞれの協議会の加入方法について詳しく見ていきましょう。
介護分野における特定技能協議会
介護分野の特定技能協議会への加入方法は、先述した誓約書の申請後、協議会事務局の申請システムに必要情報を入力し、添付書類をアップロードしたら、申請法人に「協議会入会証明書」が交付され、これをもって手続きは完了となります。
2回目以降に1号特定技能外国人を受け入れる場合は、地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請等の際に、「介護分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」とともに、以前協議会事務局より交付を受けた「協議会入会証明書」の写しも提出します。
その後、1回目と同様に協議会事務局の申請システムへの必要情報の入力と添付書類のアップロードをすると手続き完了です。
「協議会入会証明書」があらためて交付されることはありません。
1回目と2回目どちらも、地方出入国在留管理局へ誓約書を提出後、当該特定技能外国人を受け入れた日から4ヵ月以内に協議会事務局への入会申請の手続きが必要です。
ビルクリーニング分野特定技能協議会
ビルクリーニング分野の協議会への加入申請は、厚生労働省のホームページから行うことができます。
再交付や登録情報の変更、退会申請なども同様にオンライン上で手続き可能です。
ビルクリーニング分野でも在留資格申請時に「ビルクリーニング分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」の提出が必要です。
建設技能人材機構
建設分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、直接的または間接的にJACに入会することが必須となっています。
加入申請には費用がかかるほか、申請から入会まで約1ヵ月を要するため、在留期限に間に合うよう早めの手続きが肝要です。
造船・舶用工業分野特定技能協議会
造船・舶用工業分野の協議会に加入を希望する受入れ企業は、まず造船・舶用工業事業者であるかどうかの確認を受ける必要があります。
そのうえで、様式第1号の確認申請書と様式第5号の加入申請書に必要事項を記載し、「国土交通省海事局船舶産業課長」宛てに提出します。
申請内容に問題がなければ、様式第2号の確認通知書が交付され、これをもって手続き完了です。
具体的な申請書類や提出方法については、国土交通省の公式サイトで確認しましょう。
宿泊分野特定技能協議会
宿泊分野の協議会への加入申請は、令和6年5月より紙媒体と電子申請のいずれかを選択できるようになる予定です。(2024年5月31日時点では電子申請システム準備中)
紙媒体での申請の場合は、国土交通省の公式サイトから申請用紙をダウンロードし、必要事項を記入のうえ「観光庁観光産業課」宛てに郵送します。
協議会の構成員であることの証明は、観光庁から交付される入会通知書をもって完了となります。
航空分野特定技能協議会
航空分野の協議会への加入申請に必要な書類は、国土交通省の公式サイトからダウンロードできます。
必要事項を入力したら電子メールに書類を添付して、「協議会事務局」宛てに送信します。
メール送信が難しい場合は、以下の宛先に郵送することもできます。
- 空港グランドハンドリング:「航空ネットワーク企画課」宛
- 航空機整備:「安全政策課乗員政策室」宛
自動車整備分野特定技能協議会
自動車整備分野の協議会への加入申請に必要な書類は、国土交通省の公式サイトからダウンロードできます。
届出書類の送付先は地域によって異なるため、地方運輸局送付先一覧を確認のうえ、該当する窓口に提出してください。
申請内容に問題がなければ、構成員資格証明書が交付され、手続きが完了します。
食品産業特定技能協議会
他の分野はそれぞれ個別に協議会が設置されていますが、外食業と飲食料品製造業は同じ「食品産業特定技能協議会」に属しています。
加入申請は、農林水産省の公式サイトにある加入申請フォームから行います。
数日中に協議会事務局からメールが届くので、誓約書の写しを添付して返信すれば手続き完了です。
農業特定技能協議会
農業分野の協議会への加入申請は、農林水産省の公式サイトにある加入申請フォームから行います。
事務局が内容を確認し、問題がなければ1~2週間程度で「加入通知書」がメールで届きます。
個人用と法人用の申込みフォームがあるので、間違いのないよう注意しましょう。
漁業特定技能協議会
漁業分野における特定技能所属機関になると、自動的に協議会の1号構成員として認められます。
加入申請書に必要事項を記入し、関係書類を添付して2号構成員に提出すれば手続き完了です。
- 1号構成員:特定技能外国人を雇用する漁業者など
- 2号構成員:1号構成員を指導・助言する立場にある団体
製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会
素形材・産業機械製造・電気電子情報の3分野はまとめて「製造3分野」と呼ばれ、製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会が設置されています。
他の分野では特定技能外国人の在留申請後・入社後4ヵ月以内の協議会加入が認められていますが、製造3分野は在留申請の前に加入を済ませる必要があります。
入会手続きには一定の時間を要するため、計画的に準備を進めましょう。
加入申請は経済産業省の公式サイトから行うことができます。
特定技能外国人雇用の際は「協議会」の加入義務を確認しよう
特定技能外国人の受入れにあたっては、対象分野の協議会への加入が必須です。
多くの分野では受入れ開始から4ヵ月以内の加入が求められていますが、建設業と製造3分野では在留申請前に加入を済ませておく必要があります。
協議会の事務局が混雑していたり、提出書類に不備があったりすると、加入が遅れてしまう恐れもあるため、余裕を持って早めの手続きを心がけましょう。
各分野の協議会の役割と加入手続きについて、本記事を参考に準備を進めてください。