特定技能の在留資格を取得する際は、地方出入国管理局による審査・許可を受ける必要がありますが、この際の申請手続きはオンラインで行うことも可能です。
窓口に出向かずとも365日いつでも手続きができ、システム利用料もかからないなど、オンライン申請にはさまざまなメリットがあります。
一方で、スムーズに申請を進めるためには、準備すべき書類や利用方法に関する情報収集が欠かせません。
本記事では、特定技能のオンライン申請に必要な書類と利用方法、申請時の注意点などを詳しく解説します。
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目次
特定技能のオンライン申請とは?
特定技能のオンライン申請とは、地方出入国在留管理局の窓口まで足を運ばなくとも、インターネットから在留手続きができるシステムです。
地方出入国在留管理局や支局は各都道府県に設置されていますが、特定技能外国人を雇用している事業所の所在地によっては、窓口へ出向くのが負担になる場合もあるでしょう。
オンライン申請を利用すれば、事業所のパソコンなどから手続きを完結できるため、時間と手間を大幅に削減可能です。
「外交」「短期滞在」「特定活動(出国準備期間)」以外のすべての在留資格がオンライン申請の対象となっているため、特定技能外国人に関する手続きでも活用できます。
オンライン申請ができる在留手続きは、以下の7つです。
- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留資格変更許可申請
- 在留期間更新許可申請
- 在留資格取得許可申請
- 就労資格証明書交付申請
- 2~4とともに行う再入国許可申請
- 2~4とともに行う資格外活動許可申請
特定技能のオンライン申請は誰がする?
オンライン申請を利用して特定技能に関する手続きができるのは、次のような方です。
- 外国人本人
- 所属機関の職員
- 弁護士または行政書士
- 外国人受け入れを促進する公益法人の職員
- 登録支援機関の職員
- 法定代理人(親権者、未成年後見人、成年後見人)
- 親族(法定代理人を除く配偶者、子、父または母)
外国人本人や法定代理人がオンライン申請を利用する場合、マイナンバーカードが必要です。
マイナンバーカードを持っていない外国人は、原則として申請が認められません。
法定代理人には、外国人本人の親権者や未成年後見人、成年後見人が該当します。
所属機関の職員とは、外国人労働者を受け入れている、または受け入れようとしている企業の従業員のことです。
所属機関の職員がオンライン申請を行う場合、申請等取次者として承認を受けるか、承認要件を満たす必要があります。
特定技能のオンライン申請のカテゴリー分類
オンライン申請を行う企業は4つのカテゴリーに分けられ、該当するカテゴリーによって利用申請時に求められる提出書類が違ってきます。
カテゴリー1~4の基準を知り、自社がどこに分類されるのか確認してみましょう。
カテゴリー1
カテゴリー1に該当するのは、以下のいずれかに当てはまる企業や機関です。
- 日本で上場している企業
- 保険業の相互会社
- 日本または外国の国・地方公共団体
- 独立行政法人
- 特殊法人・認可法人
- 日本の国・地方公共団体で認可を受けた公益法人
- 法人税法別表第1に該当する公共法人
- 高度専門職省令第1条第1項各号の表にある特別加算の基準に適合し、中欄イもしくはロに該当する企業(イノベーション創出企業)
- 一定の条件を満たす企業
カテゴリー1は、源泉徴収税額による分類ではなく、企業や団体の形態で分けられています。
なお「9.一定の条件を満たす企業」とは、以下のいずれかに該当する企業のことです。
- ユースエール認定企業
- くるみん認定企業
- プラチナくるみん認定企業
- えるぼし認定企業
- プラチナえるぼし認定企業
- 安全衛生優良企業
- 職業紹介優良事業者
- 製造請負優良適正事業者
- 優良派遣事業者
- 健康経営優良法人
- 地域未来牽引企業
- 空港管理規則上の第一類構内営業者、または第二類構内営業者
- 内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)登録事業者
カテゴリー2
カテゴリー2に分類されるのは、以下2つの条件のうちいずれかを満たす団体・個人です。
- 前年分の源泉徴収票合計表において、源泉徴収税額が合計1,000万円を超える団体や個人
- 在留申請オンラインシステム利用申出の承認を受けた機関
前年分の従業員の源泉徴収合計表で源泉徴収税額が1,000万円以上となる団体には、ある程度規模の大きな企業などが当てはまるでしょう。
また、すでにオンラインシステムを利用している企業は、前年の源泉徴収税額に関係なくカテゴリー2に該当します。
カテゴリー3
カテゴリー3に分類されるのは、カテゴリー2に該当せず、なおかつ前年分の源泉徴収票などの法定調書合計表を提出している団体・個人です。
前年分の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1,000万円に満たない企業が当てはまります。
カテゴリー4
カテゴリー4に分類されるのは、カテゴリー1~3のどれにも該当しない団体・個人です。
設立したばかりの企業や開業から間もない個人事業主などが、主にカテゴリー4に該当します。
特定技能のオンライン申請に必要な書類
オンライン申請をはじめて利用する場合、企業のカテゴリーごとに、所属機関の職員には次のような必要書類が求められます。
カテゴリー1・2 | カテゴリー3・4 | |
必要書類チェックシート | 〇 | 〇 |
在留申請オンラインシステム利用申出書 | 〇 | 〇 |
本人確認資料(写し) | 〇 | 〇 |
・届出済証明書 ・申請等取次者証明書(写し)または申請等取次者としての承認要件を満たしていることを証明する資料 |
〇 | 〇 |
在職証明書 | 〇 | 〇 |
所属機関(法人単位)のカテゴリーを証明する資料 | 〇 | ー |
新規利用に必要な書類の一覧は、出入国在留管理局のホームページでも確認できます。
カテゴリー3に分類される企業が、カテゴリー2と同様の添付資料で申請を行う場合、以下の書類が追加で必要です。
- 前年分の従業員の源泉徴収額がわかる法定調書合計表(受付印があるものの写し)
- 登記事項証明書
- 直近年度の決算文書(写し)
※直近年度の決算文書の写しを提出できない場合、事業計画書の写し - 在籍者に在留資格「経営・管理」の外国人がいる場合、以下2点の書類
○ 事業所の不動産登記簿謄本
○ 賃貸借契約書や事業の規模・内容がわかる資料
事業の規模や事業内容がわかる資料については、その他の提出書類で把握できる場合には不要です。
特定技能のオンライン申請方法
オンライン申請に必要な書類を準備できたら、特定技能の在留手続きを行いましょう。
新規でオンライン申請を利用する場合、以下の3ステップで手続きを進めます。
- 地方出入国在留管理局へ利用申出を提出する
- オンライン申請を行う
- 申請結果を受け取る
順に詳しく解説します。
1.地方出入国在留管理局へ利用申出を提出する
特定技能外国人を受け入れる企業の職員が、オンライン申請を新規利用したい場合、まずは地方出入国在留管理局に利用申出を行わなければなりません。
上記で紹介した、利用申出書をはじめとした必要書類を用意し、地方出入国在留管理局の窓口に持参するか、郵送にて提出しましょう。
出入国審査のみを行う官署や入国管理センターでは受け付けてもらえないため、事業所の所在地を管轄する地方出入国在留管理局の情報を確認してみてください。
利用申出書のフォーマットは、出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできます。
2.オンライン申請を行う
利用申出の承認を知らせるメールが届いたら、オンラインシステムのパスワードを設定しましょう。
パスワードの設定後に認証IDが通知され、システムにログインできるようになります。
申請時には、雇用したい特定技能外国人の顔写真と在留資格に応じた資料の添付が必要です。
申請対象の特定技能外国人が複数いる場合は、出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできる一括申請用テンプレートを利用すると便利でしょう。
3.申請結果を受け取る
在留資格手続きの審査結果は、メールで通知されます。
無事に申請が許可された場合、在留カードなどは郵送してもらえるため、地方出入国管理局の窓口へ受け取りに出向く必要はありません。
外国人が現在使っている在留カードや手数料納付書、送付用封筒などを準備して「東京出入国在留管理局オンライン審査部門オンライン申請手続班」へ提出すれば手続きは完了です。
ただし、パスポート上での認証が必要な手続きを同時に行った場合などは、郵送してもらえず、地方出入国在留管理局の窓口で受け取る形になります。
特定技能のオンライン申請をするメリット
オンライン申請を利用した特定技能の在留資格手続きには、次のようなメリットがあります。
- 無料で利用できる
- 地方出入国在留管理局まで足を運ぶ必要がない
- 地方出入国在留管理局に出向くための移動時間や交通費を削減できる
- 365日いつでも都合の良いタイミングに利用できる
事業所から管轄の地方出入国在留管理局まで距離が遠い場合、オンライン申請を利用することで、手続きの負担を抑えられます。
また、システムメンテナンス時以外は、平日・休日・祝日や時間に関係なく申請を行えるため、窓口の対応時間を気にする必要もありません。
特定技能のオンライン申請をする際の注意点
特定技能外国人の受け入れにあたってオンライン申請を利用する際は、メリットだけでなく、以下のような注意点も理解しておきましょう。
- 申請項目の入力内容がわかりにくい部分がある
- 特定技能の追加・再編により選択肢が変わる可能性がある
- 証明書や在留カードを郵送で受け取れないケースがある
順に詳しく解説します。
申請項目の入力内容がわかりにくい部分がある
オンライン申請を進めるなかで、わかりにくい入力項目に戸惑う可能性があります。
例えば、造船・舶用工業分野で特定技能外国人を受け入れる場合、2024年3月の業務区分再編をふまえて、申請者が入力内容の一部を読み替えなければなりません。
その他、本来であれば入力の必要がない項目でも、入力しなければシステム上申請を進められないケースがあります。
今後、システムは改修を検討しているとのことですが、具体的な改修作業完了日は未定です。
注意が必要な入力項目は、法務局が公開している以下のサイトなどを参考にしながら手続きを進めてみてください。
参考
- 在留申請オンラインシステムの申請項目入力時の注意事項について
- 在留資格「特定技能(造船・舶用工業分野に限る。)」に係る在留申請_オンラインシステムの入力方法について
- 特別高度人材制度を利用した在留資格「高度専門職」に係るオンライン申請の在留申請オンラインシステムへの入力方法について
不明点がある場合、地方出入国在留管理局へ問い合わせましょう。
特定技能の追加・再編により選択肢が変わる可能性がある
特定技能制度は、人手不足状態にある産業分野を対象としているため、今後新たに分野の追加・再編が行われ、オンライン申請システムにも変更が生じる可能性があります。
ただし、分野の追加・変更が決定した直後から、オンライン申請システムにもその決定事項が反映されるとは限りません。
システム改修までに時間がかかれば、新たな産業分野で特定技能外国人を受け入れたくても、オンライン申請でつまずいてしまう事態が考えられるでしょう。
直近では、2024年3月に自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野の追加が閣議決定しました。
今後も、分野の追加・再編が行われる可能性はあることを念頭に置いておく必要があります。
在留カードなどを郵送で受け取れないケースがある
オンライン申請で特定技能に関する手続きを行い、申請が許可されれば、在留カードなどは郵送で受け取れると上述しました。
しかし、以下に当てはまる場合、郵送でこれらの書類を受け取ることはできません。
- 同時に再入国許可申請を行っている
- 同時にパスポート上の証印が必要な申請をしている
- 新規で在留カードに漢字氏名併記の申請をしている
- 在留カードの有効期間更新申請をする
郵送の対象とならない申請をともなうときには、地方出入国在留管理局の窓口まで在留カードなどを受け取りに行きましょう。
特定技能外国人の手続きはオンライン申請で済ませよう
特定技能の在留手続きでオンライン申請を利用する場合、地方出入国在留管理局へ出向かずとも、インターネット環境さえあれば手続きを完結させられます。
地方出入国在留管理局までの移動時間や交通費を削減できるだけでなく、365日いつでも都合の良いタイミングで手続きを進められるのは、オンライン申請の大きなメリットです。
ただし、一部わかりにくい入力項目があったり、特定技能制度の見直しによってシステムが変更される可能性があったりなど、注意点もいくつかあります。
申請内容によっては在留カードを郵送で受け取れないケースもあるため、あらかじめ申請の流れを確認しておきましょう。
これらの注意点を鑑みても、オンライン申請は、特定技能外国人の受け入れを行う企業の負担を軽減できる利便性の高い存在といえます。
人材獲得のために特定技能外国人の受け入れを行う際は、オンライン申請を活用して効率的に手続きを進めてみてください。