人手不足といわれる業界が増えているなかで、特定技能外国人の雇用を検討している企業も増加しています。
特定技能外国人の雇用には、メリットとデメリットがあります。
今回説明する特定技能外国人の特徴と自社にマッチするものがあるか、チェックしてみましょう。
目次
特定技能外国人を企業が受け入れるメリット
企業が特定技能外国人を雇用するメリットには、以下のようなものがあります。
- 日本語でのコミュニケーションは心配不要
- 即戦力を期待できる
- 若手人材を雇用できる
- フルタイムで雇用できる
- 技能実習からの移行もできる
- 特定分野では5年以上の雇用をめざす道もある
それぞれの特徴を確認していきましょう。
日本語でのコミュニケーションは心配不要
特定技能1号を取得するには、日本語能力試験N4以上または国際交流基金日本語基礎テストA2レベル相当に合格する必要があります。
つまり、特定技能1号を保有している外国人労働者は、すでに生活に支障がないレベルの日本語能力を持っています。
そのため、働くうえでのコミュニケーションを心配する必要はほとんどありません。
即戦力を期待できる
特定技能1号を保有している外国人労働者は、すでに各分野の試験に合格しているため、業界で即戦力として働ける知識と技術をもっています。
ここでは、介護分野・自動車整備分野・農業分野の学科試験と実技試験について、以下の表にまとめました。
介護分野 | 自動車整備分野 | 農業(耕種農業全般)分野 | |
学科試験 | ・介護の基本 ・こころとからだのしくみ ・コミュニケーション技術 ・生活支援技術 |
・自動車のシャシ、エンジンに関する 構造、機能、取り扱いに関する知識 ・点検、修理、調整に関する知識など |
・耕種農業一般 ・安全衛生 ・栽培作物の品種・特徴 ・栽培環境 ・栽培方法・管理など |
実技試験 | 写真などを用いて正しい介護の手順などについて判断 | 作業試験またはイラストや図での判断 ・簡単な基本工作 ・分解、組み立て、簡単な点検、調整、修理 ・整備用の試験機、計量器、工具の取り扱い |
イラスト・写真による判断 ・土壌の観察 ・肥料・農薬の取り扱い ・種子の取り扱い ・環境管理、資材・装置・機械の取り扱いなど |
このように、各分野ならではの知識や技術をもっているため、即戦力として期待されています。
若手人材を雇用できる
特定技能外国人として働く方の平均年齢は、28.9歳と比較的若いです。
特定技能外国人を雇用すれば、一定の能力がある若い人材を雇用できます。
企業の活性化や、新しい意見の取り入れといった組織の若返りにも期待ができるでしょう。
少子化が加速している日本においては、貴重な若手人材を確保する手段の一つといえます。
フルタイムで雇用できる
特定技能外国人はフルタイムで雇用できる点もメリットです。
出入国在留管理庁が指定している「特定技能外国人受入れに関する運用要領」では、雇用される企業で働く一般の労働者と同等とすることを求めています。
具体的な内容は以下のとおりです。
- 労働日数は週5日以上かつ年間217日以上
- 労働時間は週30時間以上
日本の一般的なフルタイムは週5日、40時間のため、特定技能外国人に同じ労働時間で働いてもらうのは問題ありません。
これまでフルタイム雇用に苦戦していた企業にとって、特定技能外国人の雇用は人材不足の打開策になるかもしれません。
技能実習からの移行もできる
技能実習生として受け入れている外国人労働者が在留資格を特定技能へ変更できれば、引き続き雇用できます。
技能実習から特定技能への移行条件は「技能実習2号を良好に修了していること」であり、具体的な内容は次のとおりです。
- 技能実習を2年10ヵ月以上修了している
- 技能検定3級または技能検定3級に相当する技能実習評価試験に合格している
- 技能実習生に関する評価調書がある(提出の省略が可能)
技能実習生として数年間働いているのであれば、スタッフ間での関係性が確立されているため、コミュニケーションや仕事内容に関してさほど問題ありません。
技能実習生が希望すれば、特定技能へ移行し引き続き働いてもらえるという形は、企業にとって大きいメリットでしょう。
特定分野では5年以上の雇用をめざす道もある
特定技能1号から2号へ移行できれば、在留期間の上限なく雇用できます。
特定技能1号と2号の在留期間の違いは、次のとおりです。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
在留期間 | 1年ごとの更新 上限5年 |
3年、1年または6ヵ月ごとの更新 上限なし |
特定技能2号への移行は建設、造船・舶用工業分野の溶接区分のみでしたが、令和5年6月の閣議決定により、介護を除くすべての分野で移行可能になりました。
ただし、特定技能2号への移行は各分野ごとの試験を受ける必要があります。
特定技能外国人を企業が受け入れるデメリット
特定技能外国人雇用のメリットを紹介しましたが、デメリットについても把握しておく必要があります。
ここからは、以下のデメリットについてそれぞれ解説します。
- 転職される可能性がある
- 原則5年以上は雇用できない
- 賃金を抑えられるわけではない
転職される可能性がある
特定技能外国人は同一の業務区分内であれば転職が認められているため、本人が希望すれば転職できます。
令和5年賃金構造基本統計調査によると、特定技能で働いている外国人の平均勤続年数は2.4年であり、必ずしも長期間働いてくれるとは限りません。
特定技能外国人に長期間働き続けてもらうためには、企業側の仕事だけでなく日常生活へのケアやフォローを充実させることが重要です。
原則5年以上は雇用できない
特定技能1号として働く外国人は、最長5年と決まっています。
5年経過した場合は、特定技能の在留資格では日本にとどまることができないので、帰国しなくてはいけません。
引き続き働いてもらうためには、特定技能2号への移行が必須です。
そのためには試験に合格する必要があり、本人と企業側との話し合いが必須になります。
賃金を抑えられるわけではない
外国人労働者だから安い賃金で働いてもらえるわけではありません。
特定技能外国人受入れに関する運用要領において、特定技能外国人の賃金は日本人労働者と同等であることと明記されています。
実際の特定技能外国人の平均賃金は、約20万円です。
特定技能外国人だからといって人件費を抑えられるわけではありません。
特定技能外国人の受け入れに向いている企業の特徴
特定技能外国人の受け入れに向いている企業には、特徴があります。
自社の特徴と比較しながら、それぞれ確認してみてください。
人材確保が難航している企業
特定技能の在留資格は日本の労働力不足解消の目的で作られているため、人材確保で悩んでいる企業が利用するのが良いでしょう。
企業の労働力や即戦力の課題は、日本人に限定せず外国人労働者の雇用も含めて検討することで、解決に近づくかもしれません。
介護分野と建設分野以外は、企業ごとの受け入れ人数上限も決められていないため、希望する人数で雇用できます。
従業員に国際的な考え方を持たせたい企業
特定技能外国人の雇用は、従業員に国際的な考え方をもたらしてくれるかもしれません。
日本人労働者だけの会社に比べ、外国人労働者を雇用している企業のほうが海外の文化や考え方、言語に対する理解力が増します。
そのため、従業員の考え方や受け入れ方の幅が広がるでしょう。
将来海外進出を考えている企業は、外国人労働者を雇用し、従業員に国際的な考え方ができると事業展開がスムーズに進みやすいです。
企業にとっては、将来国際感覚を身につけた人材を育成できる環境づくりにもつながります。
社内の活性化を図りたい企業
特定技能外国人は平均年齢29歳程度と若いため、若年層の人材増加による社内の活性化につながります。
新しいアイデアが生まれやすくなったり、既存の従業員のモチベーションアップにつながったりすることが期待できるでしょう。
また、特定技能外国人が結婚・出産し、地域に定着することにより、若者が増え地域全体の活性化にもつながるかもしれません。
特定技能外国人を採用するメリットが自社に当てはまるか判断しよう
本記事では、特定技能外国人を雇用するメリットとデメリットを詳しく解説しました。
メリットとしては、日本語でのコミュニケーションができる点や即戦力として期待できる点、若手人材を雇用できる点などが挙げられるでしょう。
一方、デメリットとしては、転職される可能性がある点や原則5年以上は雇用できない点などがあります。
特定技能外国人の受け入れに向いている企業の特徴としては、人材確保に難航している企業や従業員や社内の活性化を図りたい企業などがあります。
特定技能外国人を受け入れたことによる影響が、自社の発展につながるか今一度検討してみてください。