近年、日本では外国人労働者の雇用が増加しています。
その背景にあるのは、労働人口の減少や技術を持ったスタッフの高齢化、労働条件が過酷になりやすい業界からの若者離れなど、人手不足にある日本の現状です。
対して、外国人労働者のなかには高度なスキルを持った若い人材も少なくありません。
こうした外国人労働者の受け入れは、人手不足が深刻化する日本産業分野において、人材獲得の課題を解決に導いてくれるでしょう。
本記事では、日本で働く外国人労働者が増加している理由を詳しく解説します。
目次
外国人労働者は増加している
出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和5年 10 月末時点)
日本で働く外国人労働者の数は、年々増加傾向にあります。
厚生労働省が公表したデータによると、外国人労働者数は令和5年10月時点で204万8,675人に達し、前年から22万5,950人増加して過去最高を更新しました。
外国人を雇用する事業所数も31万8,775所と、こちらも過去最高の数値を記録しています。
外国人労働者が取得している在留資格のうち「専門的・技術的分野」を持つ方は61万5,934人と、前年比24.2%増加しており、即戦力人材が増えていることがわかるでしょう。
出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和5年 10 月末時点)
さまざまな社会的要因が日本の人材不足に拍車をかけているなか、外国人労働者の採用を積極的に行う日本企業は今後も増えていくことが予想されます。
日本で働く外国人労働者が増加している理由
日本で働く外国人労働者が増加している主な理由は、以下の3つです。
- 人手不足で外国人労働者を採用する企業数が増加
- 企業に対する政府の就職支援制度がある
- グローバル化の動き
日本国内における働き手不足を解消するため、スキルを持った外国人労働者の受け入れを政府が推進しているほか、グローバル化に対応しようとする企業の動きも一つの要因です。
人手不足で外国人労働者を採用する企業数が増加
日本では現在、人手不足に悩まされる企業が増えています。
少子高齢化によって労働人口が減っているだけでなく、働き方の多様化により若年層の離職が目立ち、さまざまな産業分野で人材の獲得・定着に対する課題を抱えている状態です。
実際に、2023年の有効求人倍率は1.29倍 となっており、求職者にとっては就労先を選びやすい一方で、企業側はいかに人材を確保するのかが喫緊の課題といえます。
そこで、労働不足を解消するべく外国人の受け入れに積極的な企業が増えてきました。
外国人労働者を年齢別に見ると、20~39歳が多くの割合を占めており 、企業からすると若い世代の人材を獲得できる点もメリットです。
企業に対する政府の就職支援制度がある
日本国内の労働人口問題解決に向けて、政府は外国人労働者の就労支援を積極的に行っています。
外国人雇用支援センターを設置し、外国人労働者が日本で就労先を見つけられるようサポートを行うほか、 企業に対しても外国人雇用に関する助成金制度を設立しました。
例えば、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人労働者の受け入れにあたって労働環境を行った企業に対し、その経費を一部助成するものです。
また、2019年には新たな在留資格として「特定技能」を新設し、スキルを持った外国人労働者を受け入れやすい仕組みが整えられました。
こうした国を挙げての支援制度も、外国人労働者の受け入れが進んでいる理由の一つです。
グローバル化の動き
日本のビジネスはグローバル化が進んでおり、海外進出を行うために外国人労働者を採用する企業が増えてきています。
規模がそこまで大きくない企業であっても、海外企業とやり取りする機会は珍しくなくなりました。
取り引き相手である海外の方と密にコミュニケーションをとれる外国人労働者は、グローバル化のなかで企業が生き残るためにも重要な存在です。
外国人労働者を雇用することで他言語の独特なニュアンスを汲み取れるようになれば、取り引きもより円滑に進められるでしょう。
日本で働きたい外国人労働者が増加している
外国人労働者数の増加は、ここまで紹介したような社会的な要因だけでなく、日本で働きたいと考える外国人が多いことも関係しています。
ここからは、外国人労働者が日本企業を就労先に選ぶ主な理由を見てみましょう。
日本は治安が良いから
外国人が日本で働くことを選ぶ理由の一つに、治安の良さが挙げられます。
外国人のなかには、生まれ育った地域の治安が悪く、凶悪殺人をより身近に感じている方も少なくありません。
一方、日本の犯罪認知件数は2003年以降減少傾向 にあり、世界のなかでも治安情勢が良いことで知られています。
また、日本は清潔度も比較的高 く、外国人からすると住みやすい・働きやすいと感じる部分もあるでしょう。
お金稼ぎや専門的技術の習得が本来の目的だとしても、安心して生活するうえで、治安や衛生面は就労先を決める重要な判断要素の一つです。
日本の文化に興味があるから
日本独自の文化に興味を持ち、働きたいと考える外国人労働者もいます。
日本食や日本のアニメ、漫画などが好きであることをきっかけに、日本での暮らしに興味を持ち、趣味が高じて就労希望に至るというパターンです。
神社やお寺、昔ながらの街並み、伝統のお祭りなど古き良き文化が残っていることも、外国人から見た魅力の一つでしょう。
こうした日本への関心の高まりも、外国人労働者の増加につながっています。
給与水準が高いから
日本の給与水準は、国内だけで見ると30年間ほど低迷した状態が続いていますが 、アジア諸国と比べた場合には比較的高い水準です。
外国人労働者全体のうちベトナムや中国、フィリピンの国籍を持つ方が5割以上 を占めており、アジア圏の方の就労先として日本が選ばれやすいことがわかります。
出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和5年 10 月末時点)
出稼ぎで日本に来た方であれば、実家に仕送りをできるほどの給与水準を日本企業に求めているといえるでしょう。
なお、外国人労働者を雇用する場合は、日本人と同等かそれ以上の給与を支払う必要があり、国籍などを理由とした不平等な待遇は認められません。
トラブルを避けるためにも、外国人労働者の受け入れ時は、給与をはじめとした労働条件を適切に設定することが大切です。
さまざまな理由により日本では外国人労働者の雇用が増加している
日本で働く外国人労働者は年々増加しており、2023年時点では過去最高数に達しました。
この背景には、人材不足に悩む企業での外国人材の受け入れ、国による外国人労働者の就職支援といった社会的な要因が考えられます。
また、外国人にとって日本の環境や労働条件が魅力的という側面もあるでしょう。
人手不足に悩む企業と、日本で働きたい外国人労働者がマッチングすることで、日本における人材獲得課題は解決に近付くといえます。
ただし、受け入れにあたっては言語や文化、価値観の違いをふまえた支援・教育体制を整えることが欠かせません。
それと同時に、適切な待遇を約束し、外国人労働者に安心して働いてもらえる組織として採用を進めることが大切です。