日本の少子高齢化により、労働人口不足が深刻な問題となっています。
特に建設業界では、人手不足が顕著です。
この問題を解消するために、外国人労働者の受け入れが注目されていますが、円滑な受け入れのためには、適切な手続きとサポート体制の整備、既存の従業員との良好な関係構築が不可欠です。
外国人労働者の力を最大限に活用することで、建設業界の人手不足解消と発展につなげられるでしょう。
目次
建設業における外国人労働者の受け入れ状況
建設分野で活躍している外国人労働者は、全産業の約6.4%に相当し、約11万人です。
在留資格別に見ると、技能実習生が最も多く、2022年は約7万人が建設業に従事しています。
また、特定技能外国人の数も増加傾向にあり、2022年4月には、2号特定技能外国人が建設分野において初めて認定されました。
建設業を営むためには、建設業法第3条に定められている建設業許可の取得が必要不可欠です。
許可を取得せずに建設業務を遂行した場合、最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金が課せられる恐れがあります。
外国人労働者を雇用する際にも、この建設業許可の取得が前提条件となります。
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |
---|---|---|---|---|
全産業 | 1,658,804 | 1,724,328 | 1,727,221 | 1,822,725 |
建設業 | 93,214 | 110,898 | 110,018 | 116,789 |
技能実習生 | 64,924 | 76,567 | 70,488 | 70,489 |
特定技能外国人 | 267 | 2,116 | 6,360 | 12,776(8) |
建設業における外国人労働者の受け入れ方法
日本の建設業界では、人手不足の解消策として外国人労働者の雇用が注目されていますが、外国人を雇用する際には、日本人を雇用する場合とは異なる手続きが必要です。
ここでは、建設業において外国人労働者を雇用する際の流れを紹介します。
建設業で必要な就労ビザの確認
外国人が日本で建設業に従事するためには、業務内容に適した就労ビザの取得が必要です。
建設業では、技能実習、特定技能、技能ビザ、技術・人文知識・国際業務ビザなどの資格が求められることが一般的です。
その他、身分系の在留資格や資格外活動許可も認められています。
ただし、技術・人文知識・国際業務ビザでは現場作業は認められていません。
バックオフィススタッフとして設計・施工管理・事務作業などの業務を担う際に必要となります。
外国人労働者の求人募集
建設業で働ける外国人の条件が明確になったら、求人募集を開始しましょう。
自社サイトやSNS、求人サイト、人材紹介会社、外国人からの紹介など、さまざまな方法で採用活動を行えます。
その際、必要な就労ビザや日本語能力などの条件を明記し、適切な人材を集めることが大切です。
また、外国人の就職支援を行っている公的機関「外国人雇用サービスセンター」では、外国人求職者の就職支援や、企業に対する外国人雇用に関するアドバイスなどを提供しています。
外国人労働者の採用にあたっては、多様な求人媒体を活用し、適切な人材を見つけることが必要です。
外国人労働者への内定通知
応募者の書類選考と面接を経て、採用候補者に内定通知を送ります。
書類選考では、業務に適した就労ビザを取得しているか、有効期限が切れていないかなどを確認してください。
面接では、日本で働きたい理由や将来のキャリアプランなどを確認し、同時に日本語能力もチェックすると良いでしょう。
採用が決まったら、労働条件の調整を行い、必ず契約内容への同意を得たうえで雇用契約を締結します。
内定通知や雇用契約書は、外国人労働者が理解できる言語で作成することが望ましいです。
また、雇用条件や社内規則、福利厚生などについても、外国人労働者が十分に理解できるよう、丁寧な説明を心がけましょう。
在留資格認定申請書交付申請
出典:在 留 資 格 認 定 証 明 書 交 付 申 請 書
外国人労働者との雇用契約締結後、企業側は在留資格認定申請書交付申請の準備を開始しましょう。
申請が受理されると、在留資格認定証明書が発行されるので、これを外国人労働者に送付し、日本大使館や総領事館に提出してもらう必要があります。
外国人労働者は、この証明書をもとに日本大使館や総領事館でビザの発行を受けます。
在留資格認定申請から審査完了までの期間は、通常1~3ヵ月ほどです。
円滑な外国人労働者の受け入れを実現するためには、早めに申請書の準備を進めることが重要です。
また、申請書類の不備や追加資料の提出などにより審査期間が延長される可能性もあるため、早めに準備しておく必要があります。
外国人労働者の呼び寄せ
外国人労働者がビザを申請してから、実際にビザが交付されるまでには、通常1週間~10日ほどの期間がかかります。
ビザが発行されたら外国人労働者を日本に呼び、空海港で上陸許可を取得してもらいましょう。
このとき、在留資格認定証明書は入国審査官に回収されます。
ビザは日本入国の条件の一つですが、入国審査では他にも有効なパスポートの所持や入国目的の真偽などが確認されるため、外国人労働者が円滑に入国できるよう、必要な情報提供やサポートを行いましょう。
また、入国後の生活や仕事についても、外国人労働者が安心して働けるよう、きめ細かなフォローが求められます。
入社後手続き
外国人労働者の入社後には、いくつかの手続きが必要です。
まず、住民登録の方法を教えて、外国人労働者自身で手続きを行ってもらいましょう。
企業側は、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を提出する義務があります。
届出を出さなかったり、虚偽の届出を行ったりした場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため、必ず提出しましょう。
また、外国人労働者が日本国内で転職し、自社に入社した場合、労働者自身が所属(契約)期間に関する届出を、雇用開始から14日以内に管轄の入国管理局に提出しなければなりません。
外国人労働者が適切な手続きを行えるよう、企業側からの情報提供と支援が不可欠です。
入社後の手続きを円滑に進めることで、外国人労働者が安心して働ける環境を整えられるでしょう。
建設業で外国人雇用をするメリット
建設業で外国人を雇用するメリットは、主に以下の2つです。
若い世代の労働力を確保できる
建設業界では若者離れが進んでおり、若い人材の確保が難しい傾向にあるでしょう。
令和4年の建設業の有効求人倍率は5.61倍と、一般職業全体の1.31倍と比べて非常に高く、人手不足の深刻さがうかがえます。
建設業は週休2日制が取れない、長時間かつ肉体労働などの過酷な労働環境であるイメージから、求人が集まりにくいのが現状です。
技能実習生や特定技能外国人は20代、30代の若い世代が中心であり、建設現場に活力をもたらすことが期待できます。
社内の活性化につながる
外国人労働者、特に若い世代を雇用することで、社内に新たな活気が生まれることもメリットです。
若い外国人労働者のモチベーションの高さは、既存の従業員にも良い影響を与えることが期待できます。
また、外国人労働者の受け入れは、社内の多様性を高め、イノベーションを促進する効果も期待できるでしょう。
建設業界の活性化と持続的な発展のためにも、外国人雇用は有効な手段の一つといえます。
建設業で外国人雇用する際の注意点
建設業で外国人労働者を雇用する際には、日本人労働者とは異なる点に注意が必要です。
言葉の壁や文化・価値観の違いから、コミュニケーションの齟齬やトラブルが生じる可能性があります。
ここでは、外国人を雇用する際に特に注意しておきたいポイントを紹介します。
言葉の壁による事故
建設業は、他と比べて事故発生率が高い業種です。
出典:労働災害の現状 – 一般社団法人 全国建設業労災互助会
日本語のマニュアルだけでは、外国人労働者が危険性を正しく理解できない可能性があります。
安全マニュアルを十分に理解せずに業務を行うと、事故のリスクが高まり、非常に危険です。
マニュアルは書面だけでなく、教育担当者を配置して直接指導することが大事です。
また、外国人労働者とのコミュニケーションを密に取るために、デジタルデバイスの活用も有効です。
翻訳機能を使うだけでなく、動画やドキュメント、パワーポイントなどを用いて、言葉の壁を感じにくいコミュニケーションを図ることをおすすめします。
スマートフォンをはじめとするデジタル機器を利用した交流は、安全性を確保するための有力な手段の一つといえるでしょう。
文化や価値観の違いによる労働者間トラブル
外国人労働者と日本人労働者では、価値観や文化の違いがあって当然です。
日本人にとって当たり前の行動が、外国人労働者には当たり前ではない可能性があります。
細かいニュアンスが伝わりにくかったり、仕事への姿勢が異なったりすると、お互いにストレスを感じ、労働者間のトラブルが発生するおそれもあります。
既存の従業員は、相手の文化や価値観が自分とは異なる可能性を意識しておくことが大切です。
そのうえで、一つひとつ丁寧に日本の仕事の進め方を教えていく必要があります。
外国人労働者が日本の職場環境に適応できるよう、継続的にサポートを行いましょう。
異文化理解を深め、柔軟なコミュニケーションを心がけることが大切です。
お互いの文化や価値観を尊重し合える職場環境を築くことが、トラブルを防ぐ鍵となるでしょう。
建設業でも積極的な外国人労働者の雇用を
建設業で外国人労働者を雇用することは、深刻な人手不足の解消や社内の活性化につながる有効な手段です。
手続き方法や、社内でのコミュニケーションの取り方、仕事の進め方など、外国人労働者雇用時の注意点などを理解しておくことで、スムーズな受け入れが可能となるでしょう。
外国人労働者の適切な雇用と受け入れ体制の整備により、建設業の発展と活性化が期待できます。
建設業で人手不足や新たな人材の確保を検討中の企業は、ぜひ積極的な受け入れを検討してみましょう。