
外国人労働者の雇用を検討している企業にとって、どのような支援制度やサービスがあるのかを知っておくことは重要です。
本記事では、外国人雇用を検討する企業の採用担当者に向けて、活用できる制度・サービスや、サポートを受けられる機関を詳しく解説します。
目次
外国人労働者を雇用する事業主への支援
外国人労働者を雇用する企業、または雇用を検討している企業向けの支援制度やサービスには、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、「外国人雇用管理アドバイザー」「人材確保等支援助成金」など、外国人雇用の際に活用できる制度を見ていきます。
外国人雇用管理アドバイザー
外国人雇用アドバイザーとは、外国人労働者を雇用する企業や、雇用を検討している企業からの相談に応じ、助言をする制度です。
例えば、以下のような相談への対応を受けられます。
- 外国人雇用において配慮すべき点
- 現行の外国人雇用の見直し
- 外国人労働者に対する職場教育のあり方
- 労働契約・職場環境・福利厚生・退職時の注意点
外国人雇用アドバイザーに相談したい場合は、ハローワークに申し込みます。
相談料は無料です。
また、ハローワークによっては、留学生に特化した外国人雇用アドバイザーを配置しているところもあります。
留学生の採用・雇用管理に加えて、在留資格の変更についても相談可能です。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
人材確保等支援助成金とは、労働環境の向上を図る企業に対して、一定の条件を満たすと支給される補助金です。
外国人雇用に際して就労環境を整備したり、職場定着に向けた取り組みを行ったりした場合にも支給の対象となります。
助成金を受給するための条件は、以下のとおりです。
- 外国人労働者を雇用すること
- 就労環境整備計画を作成し、都道府県労働局またはハローワークに提出すること
- 雇用労務責任者を選任すること
- 就業規則など、社内規定を多言語化すること
- 次のいずれかを導入すること
a. 苦情・相談体制
b. 一時帰国のための休暇制度
c. 社内マニュアル・標識類の多言語化 - 就労環境整備計画の期間が終了したあと、外国人労働者の離職率が10%以下であること
受給要件をすべて満たすと、外国人雇用にかかった経費の2分の1(上限57万円)または3分の2(上限72万円)が支給されます。
外国人労働者の人事・労務に役立つ3つの支援ツール
外国人労働者に日本の文化や法律、職場のルールを理解してもらうためには、母国語またはやさしい日本語で説明することが大切です。
ここでは、人事・労務の場面で活用できる3つの支援ツールを紹介します。
外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集
「外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集」は、日本の雇用管理や労働条件などを外国人労働者に説明する際のポイントや例文が記載されたパンフレットです。
日本と外国の文化・雇用慣行の違いを踏まえ、外国人労働者に伝わりやすい説明の仕方や注意点が示されています。
紙面には、以下のような9つのカテゴリーが設けられており、それぞれのシーンで想定される場面の例も掲載されていて、実践的に活用できます。
また、外国人を雇用した企業の好事例集も参考になるでしょう。
カテゴリー | |
採用 | ・採用後に労働者が提出する書類について説明するとき ・試用期間について説明するとき |
賃金 | ・賃金について説明するとき ・基本給について説明するとき ・各種手当について説明するとき ・割増賃金について説明するとき ・賃金の支払い方法について説明するとき ・税金や社会保険料について説明するとき ・年末調整や確定申告について説明するとき ・賞与(ボーナス) ・昇給・人事評価 |
労働時間及び休暇 | ・働く時間と休み時間について説明するとき ・休みの日について説明するとき ・決まった時間以外や休みの日に働く場合の説明をするとき ・有給休暇について説明をするとき ・育児・介護や看護のための休みについて説明するとき ・代替休暇について説明するとき ・会社の都合で特別に休みにした間の給料について説明するとき |
異動、退職及び解雇 | ・人事異動について説明するとき ・休職について説明するとき ・退職について説明するとき ・解雇について説明するとき ・懲戒について説明するとき |
安全衛生及び災害補償 | ・健康診断について説明するとき ・災害補償について説明するとき |
ハラスメント | ・パワーハラスメントについて説明するとき ・セクシュアルハラスメントについて説明するとき ・マタニティハラスメントについて説明するとき ・その他のハラスメントについて説明するとき |
退職金 | ・退職金の支給について説明するとき ・退職金の額について説明するとき ・退職金の支払い方法及び支払時期について説明するとき |
在留資格 | ・在留資格とは ・働く時間と休み時間を説明するとき ・その他 |
正社員以外の働き方 | ・働き方の種類 ・雇止めについて説明するとき ・無期労働契約への転換について説明するとき ・派遣・請負について説明するとき ・同一労働同一賃金とは |
出典:外国人社員と働く職場の労務管理に使える ポイント・例文集
雇用管理に役立つ多言語用語集
「雇用管理に役立つ多言語用語集」は、約420語の労働・社会保険関係の用語について、やさしい日本語と14つの言語に翻訳した用語集です。
以下の言語について用意されています。
- 英語
- 韓国語
- タガログ語
- ベトナム語
- 中国語(簡体字)
- 中国語(繫体字)
- ポルトガル語
- ネパール語
- スペイン語
- インドネシア語
- タイ語
- ミャンマー語
- カンボジア語
- モンゴル語
多言語用語集は、厚生労働省の公式ホームページからエクセルファイルをダウンロードできるほか、サイトから用語の検索も可能です。
「カテゴリー」または「五十音順」から用語を検索し、外国人労働者にわかりにくい用語を翻訳して提示したり、就労規則に翻訳を貼り付けたりといった使い方ができます。
モデル就業規則やさしい日本語版
モデル就業規則とは、厚生労働省が作成した就業規則のテンプレートのことです。
各事業所の事情に合わせて労働時間や賃金などの内容を定める際に、モデル就業規則をベースにするとスムーズです。
厚生労働省は、外国人労働者を雇用する事業所向けに、外国語版や、やさしい日本語版のモデル就業規則も作成・公開しています。
やさしい日本語版では、外国人にとって理解しづらい用語を、以下のようにわかりやすい表現に置き換えてあります。
一般的な日本語 | やさしい日本語 |
---|---|
総則 | 全体の決まり |
採用、異動等 | 働く人を雇うとき、他の場所で働いてもらうときなど |
年次有給休暇 | 給料をもらいながらとることができる休み |
外国人労働者の就業規則への理解を深めるためにも、やさしい日本語版のモデル就業規則が参考になるでしょう。
製造業外国従業員受入事業
経済産業省が実施している製造業外国従業員受入事業は、国際競争力の強化と国内製造業の空洞化抑制を目的としています。
この事業では、海外生産拠点の従業員を国内生産拠点に最大1年間転勤させ、幅広い知識やノウハウを習得させます。
転勤の対象となるのは、海外生産拠点で1年以上勤務している従業員です。
転勤期間が終了すると、外国人従業員は母国に戻り、日本で学んだ知識やノウハウを、海外生産拠点に普及させることが期待されています。
転勤には「特定活動」の在留資格が必要となります。
国際化促進インターンシップ事業
国際化促進インターンシップ事業も、経済産業省が実施している事業の一つです。
この事業は、日本の中小企業が外国人学生のインターンシップを受入れることで、外国人雇用や海外展開などの取り組みを促進することを目的としています。
インターンシップの方法は、外国人学生が実際に企業へ出社する「来日対面コース」と、オンラインで自宅から就業体験を行う「オンラインコース」の2種類があります。
中小企業は、外国人労働者と働く経験やネットワークが不足しがちです。
インターンシップを通じて、外国人雇用に対する具体的なイメージを持つことができるでしょう。
外国人労働者の就労を支援する機関
外国人労働者の就労をサポートする機関には、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、「出入国在留管理庁」「外国人採用サービス」など、頼りになる機関を見ていきます。
出入国在留管理庁
出入国在留管理庁は、日本に出入国する外国人の審査や在留資格の申請手続き・相談などに対応する行政機関です。
海外在住の外国人労働者を雇用する際は、「在留資格認定証明書」の交付を受けるため、入国前に出入国在留管理庁に申請する必要があります。
また、在留期間の更新や在留資格の変更を行う場合も、出入国在留管理庁の許可が必要となります。
手続きに不明点があれば、出入国在留管理庁に相談してみましょう。
外国人採用サービス
外国人採用サービスとは、企業が外国人を採用したいときに人材を紹介してくれるサービスです。
募集や選考、採用に関する悩みも相談できます。
外国人採用サービスは、以下の2種類のタイプがあります。
- 一般紹介・登録型:自社に登録した外国人のうち、採用条件に合う人材を紹介する
○ 総合タイプ:幅広い業種・職種を取り扱う
○ 専門タイプ:特定の業種・職種に特化している - サーチ型:他社のデータベースやSNSなど、さまざまな方法を使って人材を探す
採用業務だけでなく、外国人労働者の入社後のケアや研修をサポートしたり、ビザ申請や住居の紹介を行ったりするサービスもあります。
就労ビザ代行機関
就労ビザ代行機関とは、雇用する外国人の就労ビザに関する書類を作成し、代理で手続きを行ってくれる機関のことです。
就労ビザの申請は、提出書類に不備があったり、申請条件を満たしていることを証明できなかったりすると、何度も提出しなければなりません。
手続きを熟知している代行業者に依頼すれば、採用担当者の手間を減らし、審査に通りやすくなるでしょう。
登録支援機関
登録支援機関は、特定技能の在留資格で働く外国人労働者への支援を行う機関です。
特定技能とは、特定産業分野に関する知識・技能を持って業務にあたる外国人を指します。
特定技能の外国人労働者を雇用する場合は、企業または登録支援機関による支援が必要とされています。
登録支援機関は、企業に代わって支援を行うことが可能です。
登録支援機関に委託できる支援内容は、以下のようなものがあります。
- 外国人労働者への生活支援
○ 住宅・銀行口座・ライフラインの契約手続き支援
○ 生活オリエンテーションの実施 - 日本人との交流促進
○ 地域の自治会の案内
○ 地域行事の案内 - 職業生活に関する相談・苦情対応
ハローワーク
ハローワークでは、外国人労働者の就労支援を行っています。
ここでは、「外国人雇用サービスセンター」「留学生コーナー」「外国人雇用サービスコーナー」の3つを見ていきましょう。
外国人雇用サービスセンター
外国人雇用サービスセンターでは、日本での就労を希望する留学生や専門的・技術的分野の外国人労働者(高度外国人材)の就労支援を行っています。
外国人雇用サービスセンターが設置されているのは、東京・大阪・名古屋・福岡の4都市です。
主な支援内容は、以下のとおりです。
- 外国人労働者に対する職業相談・職業紹介
- 外国人を雇用する企業への雇用管理に関する指導・援助
また、留学生向けには、就職ガイダンスやインターンシップの紹介、就職面接会なども実施しています。
留学生コーナー
留学生が多い地域の新卒応援ハローワークには、「留学生コーナー」が設置されています。
2024年時点で留学生コーナーが設置されているハローワークは、全国56ヵ所です。
留学生コーナーのサービス例は、以下のとおりです。
- 専門相談員による個別相談
- 大学などへの出張相談
- セミナー・面接会
- インターンシップ
外国人雇用サービスコーナー
外国人雇用サービスコーナーでは、日系人や配偶者など、身分に基づく在留資格の外国人を中心に、外国人労働者に対する就労支援を行っています。
外国人雇用サービスコーナーは、全国139ヵ所に設置されています。
主な支援内容は以下のとおりです。
- 地域特性に応じた通訳員の配置
- 専門相談員による就職支援
○ 就職相談
○ 求人情報の提供
○ 就職先のあっせん
外国人労働者向けの支援制度・サービスを活用しよう
外国人労働者の雇用を検討している企業は、外国人雇用管理アドバイザーや人材確保等支援助成金など、さまざまな支援制度やサービスを活用することができます。
また、出入国在留管理庁や外国人採用サービス、ハローワークといった機関でも、外国人雇用に際してのサポートを受けられます。
外国人労働者の採用や定着を進めるためにも、これらの支援制度・サービスを上手に活用していきましょう。