
日本の介護現場では深刻な人手不足が続いており、外国人材の受入れに注目が集まっています。
なかでもフィリピン人介護士は、高い日本語能力とホスピタリティ精神が評価されており、採用を検討する介護施設もあります。
本記事では、フィリピン人介護士の受入れに利用できる制度や要件、採用の流れ、そしてメリットについて詳しく解説するのでぜひ参考にしてください。
目次
【特定技能】フィリピン人介護士の受入れ要件
フィリピンの人材を介護現場に受入れるために利用できる制度は、以下の4種類があります。
- 特定技能
- EPA
- 介護ビザ
- 技能実習
それぞれの制度に特徴があり、求められる要件も異なるため、介護施設の状況に合わせて選択することが重要です。
ここでは、各制度について詳しく解説していきます。
特定技能
特定技能は、国内の人材不足解消のため、一定の専門性や技能を持つ外国人を労働者として受入れるための制度です。
在留期間には制限がありますが、最長で5年間までと比較的長く在留できるのが特徴です。
特定技能労働者として入国するには、介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語能力試験(JLPT)N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格する必要があります。
これらの試験で認定を受けることで、以下のような能力を判断することができます。
- 日常生活に支障がない程度の日本語能力
- 現場で働くうえで必要な日本語能力
- 受入れ業種において適切に働くために必要な技術
また特定技能には1号、2号がありますが、介護では2号は設けられていません。
特定技能での在留期間満了後にも働き続けたい場合、介護福祉士資格を取得し在留ビザを「介護」へと切り替えれば可能です。
また、日本人や永住者の配偶者になって働き続けるケースもあります。
EPA
EPAは、経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れ制度です。
日本の看護師または介護福祉士の国家試験に合格することをめざしながら、特定の施設での業務に従事することが認められています。
日本語能力は、現地で6ヵ月の研修を行ったのち、日本語能力試験N5程度以上で入国が可能となります。
また、入国後にも6ヵ月の研修を受けて介護施設で就業することになります。
EPA介護福祉士候補者の在留期間は4年です。
期間内に国家資格を取得できた場合、特定活動(EPA介護福祉士)の在留資格で最長3年の在留期間が与えられ、制限なく在留資格を更新できます。
しかし、期間内に国家資格を取得できなかった場合には、本国に帰国しなければなりません。
EPA介護福祉士候補者の受入れ施設は以下のとおりです。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護老人福祉施設
- 介護療養型医療施設
- 障害者施設
- デイサービス
- 短期入所
- 養護老人ホーム
在留資格介護(介護ビザ)
在留資格介護は、介護の現場で働く外国人に在留資格を与えるために設立された制度です。
取得には、日本の介護福祉士資格取得が条件となります。
特定技能で介護の実務経験を3年以上積めば介護福祉士試験に挑戦でき、合格すれば在留資格介護を受給できます。
介護現場で働く目的であるため、訪問介護を含め、施設や業務の制限なく介護現場で働ける点が特徴です。
在留期間は最長5年で、制限なく更新可能です。
技能実習
技能実習は、母国の発展に寄与するため、日本で働きながら技術や知識を学ぶための制度です。
そのため入国時には日本語能力試験N4程度(N3程度が望ましい水準)、2年目にはN3程度の日本語能力を持つことが要件となっています。
また、介護経験については、団体監理型技能実習の場合、外国において同種の業務に従事した経験があることなどの要件を満たす必要があります。
技能実習には1号、2号、3号があり、在留期間は最長5年です。
ただし雇用については、介護福祉士国家試験の実務経験対象施設で、設立から3年以上経過した施設でのみ受入れ可能な点に注意しましょう。
受入れ人数や指導員の配置人数などが細かく規定されており、従事できる業務にも規定があります。
【特定技能】フィリピン人介護士採用の流れ
フィリピン人介護士の採用は、一定の手順を踏んで準備することが必要です。
ここでは特定技能制度を活用する場合を例に、送出機関から人材紹介を受けて採用活動を開始し、ビザ申請の準備・獲得を経て、受入れ後勤務開始に至るまでの流れを解説します。
送出機関から人材紹介を受けて採用活動を開始
フィリピン人介護士の採用にあたっては、送出機関から人材紹介を受けることが一般的です。
その際、基本的にはフィリピンの移住労働者省(Department of Migrant Workers:DMW)での登録と審査が必要となります。
基本的にはDMW・MWO(旧POLO・POEAなど)での手続きと審査が必要
フィリピン人を採用する介護施設は、DMWの審査を受けることが必要です。
審査を受けるにあたっては、東京六本木の「フィリピン共和国大使館」か大阪の「在大阪フィリピン共和国総領事館」の移住労働者事務所(MWO)に書類を提出する必要があります。
- DMW:フィリピン人の海外就労を管理・監督する政府機関
- MWO(Migrant Workers Office):フィリピン人労働者の権利を保護し、適切な雇用条件を確保するための機関
現地採用ならエージェントと契約する
フィリピン人の現地採用には、DMWが認定したエージェントを介することが必要です。
DMWの審査に合格すると、OEC(海外雇用許可証)を受け取れます。
基本的に労働者と企業側が直接提携することは禁止されているため、注意しなければなりません。
求める人材の要件をエージェントに伝え、候補者が見つかれば書類選考・面接へと進みます。
基本的に現地に赴いての面接が望ましいですが、オンラインでも可能です。
ビザ申請の準備・獲得
労働者と施設の間で労働条件が合致し同意を得られたら、特定技能ビザを取得できるよう必要書類を作成します。
労働者が安全かつ正しく来日できるよう、適切に準備することが重要です。
受入れ後勤務開始
フィリピン人材の来日に際しては、マニュアルの提供やオリエンテーションの実施など、スムーズな稼働開始に向けたサポートが必要です。
また、働きやすい環境を整えて援助することも求められます。
文化の違いによる戸惑いや不安を感じることもあるでしょうから、きめ細やかなサポートを心がけましょう。
【特定技能】フィリピン人介護士を採用するメリット
フィリピン人介護士の採用には、さまざまなメリットがあります。
ここでは、日本語習得の早さ、介護現場からの高い評価、優れたコミュニケーション能力の3点について詳しく解説します。
日本語を覚えるのが早い
フィリピンには多くの日本企業が進出しており、日本語に触れる機会も多いことから、フィリピン人は日本語のスキルが高いといわれています。
一部の大学や専門学校では、日本語の学科やコースが開設されているなど、日本語を学ぶ機会も多い傾向です。
このような背景から、フィリピン人介護士は比較的日本語の習得が早いという特徴があります。
介護現場からの評価が高い
フィリピン人は家族や友人を大切にするなど、ホスピタリティ精神に富んでいるのが特徴です。
また、介護士を育成する機関が多く、介護現場で発揮できる高い実力を備えた人材が多いため、介護現場での評価が高い傾向にあります。
利用者に寄り添い、きめ細やかなケアを提供する姿勢は、日本の介護施設にとっても大きな魅力であるといえるでしょう。
コミュニケーション能力が高い
フィリピン人は英語も公用語としているため、日本語だけでなく英語での会話も可能です。
また、フィリピン人には敬虔なキリスト教徒が多く、他者を敬うという姿勢や、幼少期からのボランティア精神・社会福祉への意識が根付いています。
新しい環境でも他者と積極的にコミュニケーションを取り調和を図る姿勢があるため、円滑なチームワークが期待できます。
フィリピン人の介護スタッフ受入れも検討してみよう
日本の介護現場で人手不足が深刻化するなか、注目されているのが外国人材の活用です。
なかでもフィリピン人介護士は、高い日本語能力とホスピタリティ精神、優れたコミュニケーション能力が評価され、採用を検討する介護施設が増えつつあります。
フィリピン人介護士の受入れには一定の手続きと準備が必要ですが、人材不足の解消と介護の質の向上につながる可能性があります。
本記事を参考に、フィリピン人介護士の受け入れについて検討してみてはいかがでしょうか。