厚生労働省が発表したデータによると、令和4年10月末時点で外国人を雇用している事業所数は29万8,790所、外国人労働者数は182万2,725人と、過去最高を更新しています。
日本の少子高齢化が進むなか、外国人労働者の雇用は増加傾向にあり、医療現場でも外国人の受入れをしている施設があります。
医療分野における外国人労働者の受入れ状況を紹介しつつ、メリットと課題についても解説しましょう。
目次
医療分野における外国人労働者受入れの現状
産業別の外国人労働者数は「製造業」が26.6%で最も多く、「医療・福祉」は4.1%と少ない状況です。
しかし、対前年増加率では「医療・福祉」が28.6%で最も高く、他の産業はすべて8%以下でした。
つまり、医療・福祉分野での外国人労働者数は急激に増加しているのです。
2008年からは、EPA協定に基づいて、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3国から看護師候補者や介護福祉士候補者の受入れも行っています。
今後も医療現場での外国人材の活躍が期待されています。
医療分野における外国人労働者受入れのメリット
外国人労働者の受入れには、いくつかのメリットがあります。
ここでは、以下の4つのメリットを詳しく解説しましょう。
- 人材不足の解消
- 職場に活気が出る
- 多言語対応できる
- 若い人材を確保できる
人材不足の解消
医療現場では慢性的な人材不足が問題となっていますが、外国人労働者の受入れはその解消につながります。
職場に活気が出る
外国人労働者の雇用には、既存の職員による教育が不可欠です。
そのために職員間でのコミュニケーションも活発化します。
また、日本で働く外国人労働者はモチベーションが高い傾向にあり、その意欲的な姿勢は社内にプラスの影響を与えることもあるでしょう。
日本人にはない価値観やカルチャーに触れることは、既存職員の刺激にもなります。
多言語対応できる
旅行などでの訪日外国人が増えているため、医療現場でも日本人以外の対応が必要になることがあります。
多言語に対応できる外国人職員がいることで、外国人の患者さんにもスムーズに対応ができるようになるでしょう。
若い人材を確保できる
来日する外国人労働者は若い人が多く、少子高齢化が進む日本では貴重な人材となります。
体力が必要な医療現場で、若い外国人材の活躍が期待できるでしょう。
医療分野における外国人労働者受入れの課題
一方で、医療分野における外国人労働者の受入れには課題もあります。
ここでは、外国人労働者の受入れにまつわる、以下の3つの課題を紹介しましょう。
- 外国人受入れに対して否定的な利用者もいる
- 技術面に不安がある
- 長く働き続けるとは限らない
外国人受入れに対して否定的な利用者もいる
高齢者を中心に、外国人に抵抗感を抱き、受入れられない人もいるでしょう。
言語面でハンデのある外国人看護師には、対応が難しい場面があることも課題の一つです。
技術面に不安がある
外国人医療従事者の技術面でも心配の声があります。
実際、2023年の外国人看護師の日本の看護師国家試験合格率は22.4%と低く、全体の合格率90.8%と比べると大きな差があります。
外国では習得できない看護の知識や技術が、日本の医療現場では求められることも多いのです。
長く働き続けるとは限らない
外国人医療従事者だからといって、長く働き続けるとは限らないのも大きな課題です。
ある医療機関で受入れたインドネシア人看護師のなかで帰国した人のうち、最も多かった帰国理由が「母国において更なるキャリア発展をめざすため」でした。
また、結婚を理由にインドネシアに帰国する看護師もいます。
ホームシックになって帰国する外国人もいるため、長期的な雇用は難しい面もあるでしょう。
医療現場での外国人労働者の受入れは増加傾向だが、準備や心構えも大切
外国人医療従事者の受入れは増加傾向にありますが、受入れにあたっては受入れ側の準備や心構えも大切です。
外国人医療従事者の受入れには、人材不足の解消、職場の活性化、多言語対応、若い人材の確保などのメリットがある一方で、利用者の反発、技術面の不安、定着の難しさなどの課題もあります。
外国人労働者を受入れる際は、メリットと課題をよく理解し、必要な準備を行うことが求められるのです。