外国人技能実習制度は、日本の技能・技術・知識を開発途上国等に移転し、その国の経済発展を担う人材を育成することを目的とした制度です。
近年、日本の労働力不足を背景に、外国人技能実習生の受け入れが注目されています。
本記事では、外国人技能実習生の人数の推移や国籍別・業種別の内訳、さらに受け入れ人数の上限についてなどを詳しく解説します。
外国人技能実習生の現状を把握したい方や、関連する情報を求めている方にとって、有益な情報源となるでしょう。
目次
外国人技能実習生の人数の推移
厚生労働省が公開している外国人雇用状況の届出状況まとめによると、外国人技能実習生の人数は、ここ数年で大きく変動しています。
2023年10月末時点で、日本における外国人労働者数は204万9千人に達しています。
そのうち、外国人技能実習生は41万3千人でした。
過去数年の外国人技能実習生の人数を見てみると、以下のとおりです。
- 2022年:34万3千人
- 2021年:35万2千人
- 2020年:40万2千人
これらの数字を2010年の1万1千人と比較すると、全体的に大幅な増加傾向にあることがわかります。
外国人技能実習生の増加率の推移も興味深いデータです。
- 2023年:20.2%
- 2022年:-2.4%
- 2021年:-12.6%
- 2020年:4.8%
2022年と2021年はマイナスでしたが、それ以外の年はプラスを記録しています。
これらの数字から、外国人技能実習生の受け入れが、日本の労働市場において重要な役割を果たしていることが伺えるでしょう。
特に2023年の20.2%という高い増加率は、日本の労働力不足などを背景とする外国人技能実習生の急増を示唆しています。
【国籍別】外国人技能実習生の人数
外国人技能実習生の出身国は多岐にわたりますが、アジア諸国からの受け入れが大半を占めています。
外国人技能実習機構が公開している「国籍・地域別 技能実習計画認定件数(構成比)」の資料によると、2022年度の状況は以下のとおりです。
- ベトナム:124,509人(50.6%)
- インドネシア:42,836人(17.4%)
- フィリピン:22,205人(9.0%)
- 中国:18,346人(7.4%)
- ミャンマー:14,927人(6.1%)
これらの上位5ヵ国で全体の約90%を占めています。
さらに、これに続く国々を見ても、アジア諸国が中心です。
- カンボジア:9,760人(4.0%)
- タイ:6,801人(2.8%)
- その他:4,872人(2.0%)
- モンゴル:2,004人(0.8%)
ベトナムからの技能実習生が圧倒的多数を占めていることがわかる統計です。
半数以上がベトナム出身であり、次いでインドネシア、フィリピンと続きます。
これらの数字は、各国との経済関係や技能実習制度に関する二国間取り決めなどが影響していると考えられます。
また、送り出し国の経済状況や日本語教育の普及度なども、各国からの技能実習生の数に影響を与えている可能性があるでしょう。
【都道府県別】外国人技能実習生の人数
外国人技能実習生の受け入れ状況は、都道府県によって大きく異なります。
外国人技能実習機構が公開している「都道府県別 技能実習計画認定件数」の資料によると、2022年度の上位6都道府県は以下のとおりです。
- 愛知県:22,812人(9.3%)
- 大阪府:13,016人(5.3%)
- 埼玉県:12,316人(5.0%)
- 茨城県:11,119人(4.5%)
- 千葉県:10,604人(4.3%)
- 東京都:10,065人(4.1%)
これらの数字から、外国人技能実習生の受け入れが特定の地域に集中していることがわかります。
愛知県が突出して多いのは、自動車産業をはじめとする製造業が盛んであることが要因の一つでしょう。
大阪府や東京都などの大都市圏も上位に入っており、多様な産業が集積する地域で技能実習生の需要が高いことがうかがえます。
一方で、茨城県や千葉県のような農業が盛んな地域も上位に入っています。
これは、農業分野での技能実習生の需要が高いことを示すデータです。
都道府県別の受け入れ状況は、各地域の産業構造や労働力需要を反映しているといえるでしょう。
また、この分布は地方創生や地域経済の活性化という観点からも重要な指標となります。
【業種別】外国人技能実習生の人数
外国人技能実習生はさまざまな業種で活躍していますが、その分布には特徴があります。
外国人技能実習機構が公開している「職種別 技能実習計画認定件数(構成比)」の資料によると、2022年度の状況は以下のとおりです。
- その他:64,925人(26.4%)
- 建築関係:53,902人(21.9%)
- 食品製造関係:46,837人(19.0%)
- 機械・金属関係:35,381人(14.4%)
- 農業関係:19,921人(8.1%)
「その他」の職種には、塗装や溶接、ビルクリーニング、介護などが含まれています。
これらの職種は個別に見ると比較的少数ですが、合計すると最大のカテゴリとなっています。
建築関係が2番目に多いのは、日本の建設業界における慢性的な人手不足を反映していると考えられるでしょう。
食品製造関係も高い割合を占めており、日本の食品産業における技能実習生の重要性が窺えます。
機械・金属関係は日本のものづくり産業の基盤を支える重要な分野であり、ここでも技能実習生が大きな役割を果たしています。
農業関係は割合としては少ないものの、日本の農業の持続可能性を支えるうえで重要な役割を果たすものです。
高齢化が進む農村部において、技能実習生は貴重な労働力です。
これらの数字は、日本の産業構造や労働市場の変化を反映しています。
技能実習生が、日本経済のさまざまな分野で重要な役割を果たしていることがわかります。
外国人技能実習生の受け入れ人数には上限がある
外国人技能実習生の受け入れには、一定の規制があります。
これは、制度の適正な運用と技能実習生の権利保護が目的です。
受け入れ人数の上限は、受け入れ企業の常勤職員数に応じて決められています。
具体的には、雇用保険に加入している常勤職員数によって変動します。
第1号技能実習生(1年目)の受け入れ上限は以下のとおりです。
常勤職員数 | 受け入れ人数の上限 |
301人以上 | 常勤職員数の1/20人 |
201〜300人 | 15人 |
101〜200人 | 10人 |
51〜100人 | 6人 |
41〜50人 | 5人 |
31〜40人 | 4人 |
30人以下 | 3人 |
第2号技能実習生(2〜3年目)を受け入れる場合、300人までの常勤職員数では、第1号技能実習生の場合の2倍まで受け入れることができます。
これらの上限は、技能実習生が適切な環境で技能を習得できるようにするための措置です。また、技能実習生が日本人労働者の雇用を奪うことを防ぐ目的もあります。
受け入れ企業には、これらの上限を守りつつ、効果的な技能実習プログラムを実施することが求められます。
適切な人数の技能実習生を受け入れることで、質の高い技能移転と企業の生産性向上の両立が可能です。
外国人技能実習生の人数の推移や国籍別の人数を知って参考にしよう
外国人技能実習生の人数は、2010年の1万1千人から2023年10月末時点で41万3千人へと急増しています。
この劇的な増加は、日本の労働市場における技能実習生の重要性を示すものです。
国籍別ではベトナムが半数以上を占め、インドネシア、フィリピンと続きます。
業種別では建築関係や食品製造関係が多く、日本の産業構造や労働力不足を反映しています。
一方で、受け入れ人数には上限が設けられており、適正な制度運用が必要です。
これらの情報は、企業の人材戦略や政策立案、研究者にとって重要な指標となるでしょう。外国人技能実習生の動向は、日本の労働市場と経済の未来を占う重要な要素の一つといえるのです。