外国人技能実習生を採用、あるいはその採用を検討している企業では、実習生の所得税の取り扱いについて悩みを抱えているケースもあるでしょう。
本記事では、外国人技能実習生の所得税に関する重要な情報をわかりやすく解説します。
課税の仕組みから具体的な方法、さらには租税条約による免除の可能性まで、企業が知っておくべき内容を詳しく説明していきます。
外国人技能実習生を雇用している企業、あるいは採用を検討している企業の担当者にとって、必須の知識です。
目次
外国人技能実習生も所得税を払う必要がある
外国人技能実習生も、原則として所得税を支払う義務があります。
所得税は個人の所得に課される税金で、給与所得などが対象です。
課税の扱いは、「居住者」と「非居住者」で異なります。
居住者の場合
居住者は国内に住所を有するか、1年以上居所を有する人を指します。
居住者の場合、課税所得の範囲は「非永住者以外の居住者」「非永住者」の2つの区分で異なります。
- 非永住者以外の居住者:居住者のうち、非永住者以外の方
- 非永住者:居住者のうち、日本国籍がなく、過去10年以内に国内に住所または居所を有する期間の合計が5年以下である方
非永住者以外の居住者は、国内外で生じた所得が対象です。
非永住者の場合は、国内で生じた所得と、それ以外の所得のうち、国内支払の分や国外から送金された分が課税範囲になります。
非居住者の場合
非居住者は、居住者以外の人を指します。
非居住者の場合、国内で生じた所得のみが課税対象です。
技能実習生の場合、滞在期間が1年未満であれば、通常は非居住者として扱われます。
外国人技能実習生の課税方法
外国人技能実習生への課税方法は、居住者か非居住者かで異なります。
居住者の場合
居住者の場合、日本人従業員と同様の方法が適用されます。
給与支払い時に源泉徴収を行い、年末に年間税額を精算する年末調整を実施する形です。
税額は、「給与所得の源泉徴収税額表」を用いて計算します。
非居住者の場合
非居住者の場合は、「源泉分離課税方式」が適用されます。
給与支払い時に原則20.42%の税率で源泉徴収を行い、その時点で納税が完結します。
年末調整は不要です。
租税条約により外国人技能実習生の所得税が免除されることがある
租税条約は、二重課税を防ぐために日本と他国間で結ばれる協定です。
これにより、外国人技能実習生の国内での所得税が免除される可能性があります。
条件①「租税条約に関する届出書」を提出しないと適用されない
国内で所得税免除を受けるには、「租税条約に関する届出書」を、最初の給与支払い前日までに提出することが必要です。
届出書は受入れ企業の所在地を管轄する税務署に提出します。
条件②「非居住者」が受けられる措置のため、2年目以降の技能実習生には適用されない
この措置は主に「非居住者」が対象です。
2年目以降の技能実習生は通常「居住者」となるため、所得税免除は適用されません。
また、2年目以降は所得税に加えて住民税の支払い義務も生じます。
条件③技能実習生を送り出している国で、条約を締結していない国もある
所得税免除を受けるには、技能実習生の出身国と日本との間に租税条約が締結されている必要があります。
ミャンマー、カンボジア、モンゴル、ラオスなどとは、現時点で包括的な租税条約が締結されていません。
つまり、これらの国から来日した技能実習生には、所得税免除が適用できません。
外国人技能実習生に対する所得税について理解しよう
外国人技能実習生の所得税は、居住者か非居住者かで取り扱いが異なります。
居住者は通常の給与所得者と同様に扱われ、非居住者は源泉分離課税方式が適用されます。
租税条約による所得税免除の可能性も考慮することが必要です。
ただし、この措置を受けるためには「租税条約に関する届出書」の提出が必須で、主に非居住者が対象となります。
また、技能実習生の出身国と日本との間での、租税条約締結状況を確認することも必要です。
適切な税務処理は、企業のコンプライアンスに欠かせません。
外国人技能実習生の採用を検討する企業は、これらの点を十分に理解し、必要に応じて税務の専門家に相談することをおすすめします。