外国人技能実習生の制度が、大きな転換期を迎えています。
長年続いてきた技能実習制度に代わり、新たな育成就労制度が導入されることが決まりました。
この記事では、制度改正の背景や経緯、新旧制度の違いについて詳しく解説します。
外国人材の受け入れに関心のある企業の方や、日本で働くことを考えている外国人にとって、重要な情報となるでしょう。
制度改正によって何が変わるのか、どのような影響があるのか、一緒に見ていきましょう。
目次
外国人技能実習生の制度改正の経緯
外国人技能実習生を取り巻く環境は、長年にわたりさまざまな課題を抱えてきました。
旧制度である技能実習制度は、外国人実習生が日本の技術や知識を学ぶという名目で運用されてきましたが、実態は異なる面がありました。
多くの技能実習生が、実質的には労働力として活用され、賃金や職場環境が劣悪な事例も報告されるなど、人権問題としても注目されるようになったのです。
これらの問題に対処するため、政府は外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議を開催しました。
そこでの議論を経て、旧制度の技能実習制度に代わる新しい育成就労制度を新設する出入国管理法などの改正案が閣議決定され、最終的に国会で可決・成立しました。
新制度の導入により、外国人材の受け入れ体制が大きく変わることになります。
外国人技能実習生の制度改正の内容
新たに導入される育成就労制度は、旧制度の問題点を解消し、より適切に外国人材を受け入れることをめざすものです。
この制度改正によって、外国人材の育成と日本での就労環境が大きく変わることが期待されています。
育成就労制度の目的は、高い水準の技能を有する人材の育成と確保です。
来日した外国人には、3年間で一定の専門性を持つ特定技能の水準まで技術を習得してもらうことをめざします。
また、転籍に関する規定が緩和され、最初の受け入れ先で一定期間以上働くなどの要件を満たすことにより、同じ分野であれば別の企業への転籍が認められるようになりました。
これらの改正により、外国人材にとってより柔軟な就労環境が整備されると同時に、受け入れ企業側にとっても、より適切な人材確保の機会が増えると考えられます。
外国人技能実習生における新制度と旧制度の違い
育成就労制度(新制度)と技能実習制度(旧制度)には、いくつかの重要な違いがあります。
これらの違いを理解することで、新制度によってどのように外国人材の受け入れを改善しようとしているのかが明確になります。
新制度では外国人材の育成と確保に重点が置かれ、在留期間5年制の廃止や受け入れ対象分野、転職の可否などが法改正により変更されました。
また、特定技能制度への移行条件が明確化され、外国人材のキャリアパスにも配慮がなされています。
さらに、管理監督の方法も強化され、外国人労働者の権利保護や労働環境の改善が図られています。
項目 | 技能実習制度(旧制度) | 育成就労制度(新制度) |
制度の目的 | 国際貢献、人材育成 | 人材育成、外国人材確保 |
在留資格 | 技能実習1号・2号・3号 | 育成就労 |
在留期間 | 最長で5年 | 原則3年(特例で最大6年) |
受け入れ対象分野 | 91職種167作業 特定技能制度と一致しない |
特定技能制度の特定産業分野に限定 |
産業分野別の人数枠 | なし | あり |
転職の可否 | 原則不可 | 就労開始1年以上で一定の日本語能力があれば転職可 |
特定技能制度への移行 | 特定技能1号との業務関連性があること、特定技能1号試験を受験し日本語N4か技能検定3級合格が条件 | 技能検定3級か特定技能1号評価試験合格していること、日本語能力A2以上が条件 |
管理監督の方法 | 管理団体や支援団体によって異なる | 管理団体や支援団体の要件の厳格化、支援体制の強化 |
監督機関 | 外国人技能実習機構 | 外国人育成就労機構 |
監理団体 | 監理団体 | 監理支援機関 |
育成就労制度の受け入れ対象分野・人数
新制度である育成就労制度では、受け入れ対象分野が特定技能制度における特定産業分野に限定されています。
これにより、育成就労制度が「特定技能1号へ移行するための在留資格であること」が明確化されました。
また、受け入れ見込みの上限数についても、特定技能制度と同様に、受け入れ対象分野ごとに設定されています。
この制限により、各産業分野における外国人材の適切な配分が期待できます。
企業側は、自社の属する産業分野の受け入れ上限数を確認し、計画的な人材確保を行う必要があるでしょう。
転職の可否
転職に関する規定は、新旧制度間で大きな違いがあります。
新制度の育成就労制度では、転籍の範囲が大幅に拡大され、手続きも柔軟化されました。
具体的には、就労開始から1年以上経過し、一定の日本語能力があれば、同じ分野内での転職が可能です。
これにより、技能実習生の労働環境改善や、より適した職場への移動の機会が増えることが期待されます。
企業にとっては、この制度変更により新たな人材獲得のチャンスが生まれます。
優秀な人材を確保するためには、魅力的な労働環境や待遇を提供することがより重要になるでしょう。
特定技能制度への移行条件
特定技能制度への移行条件も、新旧制度間で変更がありました。
新制度の育成就労制度では、技能検定3級または特定技能1号評価試験の合格、そして日本語能力A2相当以上の試験や日本語能力試験N4などの合格が条件となっています。
これらの変更により、特定技能制度への移行がより明確になり、外国人材にとってのキャリアプランが立てやすくなりました。
企業側も、長期的な人材育成計画を立てやすくなるでしょう。
管理監督の方法
新制度では、外国人労働者の管理監督方法にも大きな変更が加えられています。
監理団体の名称が「監理支援機関」に変更され、新たな要件に則った許可申請が必要となりました。
また、受け入れ機関と密接な関係を有する役職員の監理への関与を制限し、外部監査人の設置を義務化するなど、支援体制が強化されています。
これらの変更により、外国人労働者の権利保護や労働環境の改善が期待されます。
企業側にとっても、より透明性の高い管理体制のもとで外国人材を受け入れることができるようになりました。
外国人技能実習生の制度改正の経緯や内容を知って参考にしよう
外国人技能実習生の制度改正は、日本の労働市場と外国人材受け入れに大きな変革をもたらすと考えられます。
新設された育成就労制度は、3年間で特定技能の水準まで技術を習得することをめざしています。
この改正により、外国人材にとってはより柔軟な就労環境が整備され、企業側も適切な人材確保の機会が増えるでしょう。
また、管理監督体制の強化により、外国人労働者の権利保護や労働環境の改善も期待されます。
今後の新制度の運用と効果に注目が集まるなか、企業や外国人材は、制度改正の内容を十分に理解し、新たな機会を最大限に活用することが重要です。