就労ビザの更新は、日本で働く外国人労働者だけでなく、雇用主である企業にとっても重要な手続きとなります。
適切に更新手続きを行わなければ、在留資格を失い、日本での就労が認められなくなってしまう可能性もあるためです。
就労ビザの更新には、在留期間のみを更新する場合と、勤務先や職種も変更する場合の2パターンが考えられます。
企業が申請手続きを代行するのであれば、期限に間に合うよう計画的に準備を進めることが大切です。
この記事では、外国人労働者の就労ビザ更新の条件や必要書類、企業側の注意点などを詳しく解説します。
目次
就労ビザ更新(延長)のパターンは2つ
外国人労働者の就労ビザの更新には、在留期間のみ延長申請するパターンと、勤務先や職種も変更するパターンがあります。
外国人労働者に任せる業務や勤務先が変わった場合、後者の手続きが必要です。
在留期間のみ更新【在留期間更新許可申請】
勤務先や業務を変更せず、在留期間のみ更新する場合は、在留期間更新許可申請をしましょう。
永住ビザ以外の就労ビザを持つ外国人は在留期間が決められており、その期間を超えて日本で働き続けたいときには、期間の更新を行います。
在留期間更新許可申請は、地方出入国在留管理官署で受け付けてもらうことが可能です。
在留期間の期限までに更新申請を行っていれば、地方出入国在留管理官署に受理されて申請結果がわかるまでに在留期限が過ぎても、不法在留にはなりません。
外国人労働者本人の納税状況や素行に問題がなければ、比較的スムーズに許可を受けられるでしょう。
勤務先や職種も更新【在留資格変更許可申請】
外国人労働者の勤務先や職種に変更があったときは、新しい勤務先での業務内容や給料について在留資格変更許可申請をし、あらためて審査を受ける必要があります。
適切な申請を怠り、本来の在留資格とは異なる活動を行っていた場合、在留資格そのものを取り消されかねないため注意しましょう。
申請許可が下りるまでの期間は、2週間から1ヵ月ほどです。
ただし、短期滞在の在留資格からの在留資格変更は基本的に認められず、審査にあたっては結婚などの特別な事情が求められます。
就労ビザを更新する際の条件
就労ビザを更新するには、外国人労働者が以下8つを満たすことが条件となります。
- 就労ビザで申請した在留資格に該当する活動を今後すること
- 法務省令に定められた上陸許可基準などに適合していること
- 現在所有している在留資格に応じた活動を行っていたこと
- 普段の行いが良好であること
- 独立して生計が立てられること
- 勤め先の雇用・労働条件が適正であること
- 納税義務を果たしていること
- 入管法に定められた届出などの義務を果たしていること
就労ビザを更新するためには、外国人労働者の素行や納税状況などだけでなく、受け入れ企業による雇用・労働条件も適切でなければいけません。
これらすべてを加味したうえで、法務大臣から許可を得られた場合に、就労ビザを更新できます。
詳しくは、法務省が公開している「在留資格の変更,在留期間の更新許可のガイドライン」をご参照ください。
就労ビザの更新が難しくなるケース
外国人労働者が以下の内容に該当するケースでは、就労ビザの更新が難しくなる可能性があります。
- 素行が良くない
- 納税していない
- 在留資格外の活動をしている
在留資格の範囲外の活動を外国人労働者に行わせた場合、不法就労として外国人本人だけでなく、企業も罰則の対象になります。
「適切な活動範囲を知らなかった、悪意はなかった」では済まされないため、在留資格に応じた業務を任せるよう十分に注意しましょう。
素行が良くない
就労ビザの更新は、外国人労働者の素行が善良であることを前提としています。
退去強制の対象となるような刑事処分を受けた場合や、不法就労をあっせんするなどの行為があった場合には評価が悪くなり、更新が難しくなるでしょう。
納税していない
外国人労働者が納税を履行していない場合、消極的な要素として評価されます。
以前に納税義務の不履行で処罰を受けた、あるいは高額・長期間の未納が判明したといったケースも、就労ビザの更新は難しくなるかもしれません。
在留資格外の活動をしている
申請時点の在留資格で認められた範囲外の活動を行っていた場合には、在留期間や在留資格の更新が認められない可能性があります。
在留資格の範囲外の活動で報酬を得ることは不法就労であり、違法行為にあたるためです。
就労ビザの更新に必要な書類・印紙代
就労ビザの更新に必要な書類は、期間の更新申請なのか、在留資格の変更申請なのかによって異なります。
また、活動資格に応じた書類も求められるため、外国人労働者の代わりに企業が更新手続きを行う場合、早めに準備を進めるようにしましょう。
在留期間更新許可申請
在留期間更新に必要な書類は、活動資格によって違ってきます。
例えば、公用の場合には以下の書類が必要です。
- 在留期間更新許可申請書
- パスポート
- 口上書、外国政府または国際機関が発行した身分と用務を証明する文書
ほかにも、研修の在留資格を持つ方であれば研修実施予定表、顔写真などの提出を求められます。
場合によっては、住民税の課税状況がわかる書類も必要です。
出入国在留管理庁のホームページから、活動資格ごとの必要書類を確認しておきましょう。
申請手数料として、印紙代4,000円がかかります。
在留資格変更許可申請
在留資格を変更する場合も同様に、活動資格ごとに必要な書類が異なります。
例えば、在留資格を公用へ変更する際には次のような書類が必要です。
- 在留資格変更許可申請書
- パスポートおよび在留カード
- 口上書、外国政府または国際機関が発行した身分と用務を証明する文書
印紙代は4,000円です。
なお、外国人労働者本人以外が申請を行うときには、申請を代行できる人物であることを証明するための書類(戸籍謄本など)もあわせて準備しましょう。
就労ビザの期間更新・資格変更の際に必要な在留期間更新許可申請書や在留資格変更許可申請書は、法務省のホームページからひな形をダウンロードできます。
就労ビザの更新手続きの流れ
就労ビザ更新手続きの流れは、以下のとおりです。
- 地方出入国在留管理官署へ必要書類を提出する
- 送られてくるお知らせの確認
- 在留カードの受け取り
就労ビザの更新は、在留期間満了となる3ヵ月前から行えます。
期限までに必要書類を準備したら、外国人労働者の住んでいる地域を管轄する地方出入国在留管理官署へ提出しましょう。
申請内容に問題がなければ、2週間から1ヵ月ほどで、地方出入国在留管理官署からお知らせのメールやハガキが送られてきます。
届いたお知らせと手数料の4,000円、在留カードを地方出入国在留管理官署に提出し、更新後の在留カードを受け取ってください。
就労ビザを更新するときの企業側の注意点・ポイント
外国人労働者の就労ビザを更新するとき、外国人本人だけでなく企業側にもいくつかの注意点があります。
在留期間には期限が定められているほか、企業が更新手続きを代行する場合には研修を受ける必要があることを念頭に置いておきましょう。
期限までに間に合うように段取りを組む
上述のとおり、就労ビザの更新は期間満了の3ヵ月前から行えます。
期限が過ぎてしまった場合は不法滞在となり、外国人労働者が日本で働けないばかりか強制送還にもなりうるため、注意が必要です。
また、在留資格の更新が認められない原因が企業側にあるケースも珍しくありません。
書類の不備があった場合を想定し、余裕を持って申請準備を進めるとともに、外国人労働者の労働環境が適性であるかどうかも再確認してみてください。
企業が更新手続きを代行するには研修を受けておく必要がある
外国人労働者を雇用する企業による在留資格の更新手続きは、原則不可能であるものの、申請取次の研修を受ければ代行が認められます。
就労ビザの更新ができるのは、外国人本人もしくは本人の法定代理人、申請等取次者です。
申請等取次者とは、在留資格の申請を外国人本人に代わって行うことが認められた人を指し、一般的には弁護士や行政書士、登録支援機関の職員などが該当します。
また、入管協会による申請等取次研修会に参加することで、外国人労働者を受け入れる企業の担当者なども、申請等取次者になることが可能です。
申請等取次者の研修は、東京と大阪、名古屋で開催されています。
申込受付は研修日の2ヵ月前頃からスタートし、定員に達すれば早めに受け付け終了となる可能性があるでしょう。
研修費用もかかるため、企業での代行を考えている場合にも計画的な準備が必要です。
就労ビザの更新は余裕を持って取り組もう
就労ビザの更新には、在留期間のみを更新するか、勤務先・職種も同時に変更する2つのパターンがあります。
在留期間の満了3ヵ月前から更新手続きを行えますが、書類の不備などで再提出が必要になる可能性も考慮し、余裕を持って準備に取り組むことが大切です。
基本的に、期間の更新時であれば在留期間更新許可申請書、資格を変更する際は在留資格変更許可申請書を地方出入国在留管理官署へ提出することになります。
その他、就労ビザの種類によっても必要書類は異なるため、出入国在留管理庁の情報を確認してみてください。
また、企業側が更新手続きを代行する場合は、申請等取次者の在籍が必要です。
必要に応じて企業担当者が研修を受け、余裕を持って外国人労働者の就労ビザを更新できるようにしましょう。