人手不足に悩む経営者で、特定技能外国人の採用について一度は検討された方も多いのではないでしょうか。
また、特定技能外国人の受け入れ機関となるためには、煩雑な手続きを踏まなければならないというイメージを持たれている方もいるかもしれません。
この記事では、特定技能外国人の受け入れ機関の基礎知識、受け入れ機関となるための条件や実際の導入までの流れについて解説します。
会社の将来にとっての大きな選択肢の一つとなる、特定技能外国人の受け入れについて理解を深めていきましょう。
目次
特定技能外国人の「受け入れ機関」とは
特定技能外国人の「受け入れ機関」とは、特定技能外国人を受け入れ、支援する企業・個人事業主等のことです。
受け入れ機関は、特定技能外国人を雇用するだけでなく、出入国在留管理庁へ各種届出を行い、指導や助言、改善命令を受ける立場にあります。
特定技能外国人の受け入れができる業種は、介護やビルクリーニング、自動車整備など12 分野です。
特定技能外国人の受け入れ機関の条件
特定技能外国人の受け入れ機関の条件として、全分野共通の条件と、分野ごとに満たさなければならない条件があります。
それぞれの条件を確認していきましょう。
全分野で共通の条件
全分野共通の条件は、以下の3つが挙げられます。
- 受け入れ機関の基準を満たしている
- 雇用契約が適切である
- 支援できる体制が整っている
受け入れ機関の基準を満たしている
特定技能外国人を受け入れるためには、受け入れ機関が適切かどうか判断するための一定の基準を満たす必要があります。
この基準の一つとなるのが、労働や社会保険などに関する法令の遵守や、同種の業務で働く労働者を、過去1年以内に非自発的な理由で離職させていないことです。
これにより、対象となる受け入れ機関が、特定技能外国人だけでなく日本人労働者に対しても、公平な労働環境を提供していることが期待されるためです。
また、過去1年間に行方不明者を発生させていないことや、過去5年間に出入国労働法令違反がないことも求められます。
これは、行方不明になるという事態を未然に防ぐための措置です。
これらは、適切な受け入れ機関として安全な職場環境と適切な管理が行われているかの大きな指標となるため、基準を守りましょう。
雇用契約が適切である
特定技能外国人の受け入れ機関の条件として、雇用契約が適切であることが挙げられます。
分野省令で定める技能を要する業務に従事させることや、日本人と報酬や待遇を差別しない契約内容でなければいけません。
例えば労働時間について、同じ受け入れ機関に雇用される通常の労働者と同等である必要があります。
また報酬額についても、日本人が従事する場合の額と同等以上であることが求められます。
さらに報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用やその他の待遇についても差別的な扱いをしていないことが重要です。
支援できる体制が整っている
特定技能外国人の受け入れ機関に対して、外国人への支援体制が整っていることが求められます。
支援の内容には、下記のような内容が主に10項目設定されています。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 生活オリエンテーション
- 日本人との交流促進
これらの支援を自社で対応するのが難しい受け入れ機関は、「登録支援機関」へ支援を委託することも可能です。
登録支援機関とは、受け入れ機関との支援委託契約により支援計画に基づく支援の実施を行う会 社です。
分野ごとに満たすべき条件
一方、受け入れ機関の分野別の条件は以下のとおりです。
- 分野ごとの協議会に加入している
- 建築分野は受け入れ計画の認定が必要
分野ごとの協議会に加入している
分野によっては、受け入れ機関の条件の一つとして、指定の「協議会」に加入する必要があります。
例えば、建設分野の場合は「一般社団法人建設技能人材機構(JAC)」、農業分野の場合は「農業特定技能協議会」への加入が必須です。
特定技能外国人を雇用後、4ヵ月以内にそれぞれの協議会への加入が条件であることが一般的です。
ただし、建設業や製造業は雇用前の加入が条件となるなど、分野によって条件が異なってくるため、注意しましょう。
建築分野は受入計画の認定が必要
建設分野で特定技能外国人を受け入れたい場合、「建設特定技能受入計画」を作成し、オンラインで国土交通大臣による審査・認定を受ける必要があります。
この「受入計画」は、国土交通省が特定技能外国人の受け入れをする企業に対し、適正な受け入れができるかどうかの確認をするための指標となるものです。
また受入計画を認定してもらうためには、受け入れ企業が建設業法第3条の許可を受けていることなど、いくつかの認定基準 があります。
そのため、まずはこの条件をクリアすることから始めましょう。
特定技能外国人の受け入れ機関が果たすべき義務
特定技能外国人の受け入れ機関の条件を紹介しましたが、特定技能外国人の受け入れ機関が果たすべき義務とはどういうものでしょうか。
ここでは主な義務について、それぞれ解説していきます。
雇用契約を確実に履行する
特定技能外国人の受け入れ機関は、雇用契約を守る義務 があります。
外国人だからといって、業務内容や報酬、福利厚生等で他の従業員と差別することは許されません。
例えば特定技能外国人の所定労働時間や報酬は、同じ場所で働く日本人の従業員と同等の条件でなければなりません。
また、特定技能外国人から一時帰国等の申し出があった場合は、業務上やむを得ない事情の場合を除いて、有給休暇を取得させる必要があります。
これらは雇用契約のほんの一例となりますが、すべて確実に遂行しましょう。
適切な支援を実施する
特定技能外国人を受け入れる機関になるには、仕事上だけでなく日常生活や社会生活も支援しなければなりません。
その支援に必要となる書類が「外国人支援計画書」です。
受け入れ機関は、この支援計画書に定められた各種義務的支援業務を実施しなければなりません。
各種義務的支援業務とは、生活オリエンテーションや相談・苦情への対応等の法律で定められた10項目 のことです。
また、これらの内容がくまなく理解できるように、日本語以外に外国人本人が理解できる言語で作成する必要があります 。
届出を実施する
特定技能外国人の受け入れ機関は、「随時届出」と「定期届出」のそれぞれの事案に該当した場合、出入国在留管理庁に届け出を提出する必要があります。
随時届出は、事由発生から14日以内に提出が必要な届出です。
支援計画や支援責任者に変更が生じた場合や、特定技能外国人の受け入れが困難になった場合などに提出します。
一方の定期届出は、四半期ごとに提出が必要な届出です。
特定技能外国人の活動内容や支援状況などを報告する必要があります。
もし届け出の提出を怠ると、罰則の対象となる ため注意してください。
特定技能外国人を受け入れる流れ
ここでは、特定技能外国人を受け入れる一連の流れを紹介します。
- 受け入れ機関である企業または個人事業主が求人募集
- 特定技能外国人がその求人に応募
- 受け入れ機関と特定技能外国人との間で、特定技能雇用契約を直接締結
- 支援委託の場合は、登録支援機関が支援委託契約を締結
- 契約締結後に、受け入れ機関による事前ガイダンスや健康診断を実施
- 受け入れ機関と登録支援機関が、1号特定技能支援計画を策定
- 特定技能外国人と企業が、地方出入国在留管理局へ在留資格認定・変更の申請
- 地方出入国在留管理局で審査後、受け入れ機関で稼働開始
- 支援委託の場合は、受け入れ機関での稼働開始後、外国人支援開始
特定技能外国人の受け入れ機関は、支援計画の一部の実施を第三者に委託したり、すべての実施を登録支援機関に委託することができます。
もし時間がない場合やわからないことが多い場合は、委託を選択肢の一つとして考えてみましょう。
特定技能外国人の受け入れるための条件や果たすべき義務を正しく理解しよう
特定技能外国人の受け入れ機関とは、特定技能外国人を実際に受け入れ、支援する企業や個人事業主などのことです。
受け入れ機関となるためには、外国人との雇用契約や、受け入れ機関として支援できる環境が基準に満たしていることなどが求められます。
また外国人を雇用するだけでなく、出入国在留管理庁に届け出をし、指導や助言などを受ける立場にあります。
そのため、受け入れ機関は外国人の仕事上だけでなく、受け入れ後の日常生活上のサポートも義務です。
そのうえで、経営者にとって特定技能外国人は人手不足の解消のきっかけとなります。
また外国人が特定技能の在留資格を得るには、各分野の技能試験に合格する必要があるため、即戦力としても期待できるでしょう。
特定技能外国人を雇ううえで、手続きの煩雑さや定められた条件における制限は出てきます。
しかし、人手不足の解消によって、将来企業が選択できる幅は広がります。
特定技能外国人の受け入れ機関となることを、ぜひ前向きに検討してみてはいかがでしょうか。