外国人材が日本の企業で働くには、就労ビザを取得する必要があります。
ただし、就労ビザをはじめとした在留資格のほとんどは在留期間が定められており、期限を延長して日本での就労を希望するのであれば、更新申請を済ませなければなりません。
また、留学生が就職にあたって在留資格を変更したい場合などは、在留資格の変更手続きを忘れずに行いましょう。
本記事では、外国人材の就労ビザを更新・変更する際の必要書類を解説します。
外国人側で用意すべき書類だけでなく、企業側の準備が必要な書類もあわせて確認してみましょう。
目次
就労ビザ更新・変更の必要書類はパターンによって異なる
就労ビザを更新・変更する際の必要書類は、申請の目的や在留資格の種類、外国人材を受け入れる企業のカテゴリーによって異なります。
出入国在留管理庁による企業のカテゴリー区分は、以下のとおりです。
カテゴリー1 | カテゴリー2 | カテゴリー3 | カテゴリー4 | |
---|---|---|---|---|
区分 (所属機関) |
以下いずれかに該当する機関 1.日本の上場企業 2.保険業の相互会社 3.日本または海外の国・地方公共団体 4.独立行政法人 5.特殊法人または認可法人 6.国・地方公共団体に認可された日本の公益法人 7.法人税法別表第1に該当する公共法人 8.高度専門職省令第1条第1項各号の表にある特別加算のイ・ロに該当する企業(イノベーション創出企業) 9.一定の条件を満たす企業など |
以下のいずれかに該当する機関
1.前年分の給与所得における源泉徴収税額が1,000万円以上の団体・個人 |
前年分の給与所得の源泉徴収額などがわかる法定調書合計表を提出した団体・個人(カテゴリー2を除く) | カテゴリー1~3のいずれにも該当しない団体・個人 |
カテゴリー4に該当する企業の場合、必要書類が多い関係から、カテゴリー1・2などと比較すると審査が長引きやすい傾向にあります。
在留期間更新許可申請をするときの必要書類
就労ビザの在留期間更新許可申請をする際には、申請者である外国人側と受け入れ企業側のそれぞれでそろえるべき書類があります。
外国人本人が用意する書類と、企業側が用意する書類をカテゴリー別で見てみましょう。
【外国人本人向け】用意するもの
在留期間更新許可申請にあたって、外国人本人が用意する書類は以下のとおりです。
- 在留期間更新許可申請書
- パスポート、在留カード
- 申請人の証明写真(6ヵ月以内に撮影したもの)
- 雇用される企業のカテゴリーを証明する書類(企業が用意し外国人へ送付)
雇用される企業がカテゴリー3・4に該当する場合は、これらに加えて次のような書類の提出も求められます。
- 住民税の課税証明書および納税証明書
- 雇用される企業の概要がわかる資料
- 労働条件通知書または雇用契約書の写し(企業が用意し外国人へ送付)
就労ビザの種類によっても必要書類は異なるため、事前に出入国在留管理庁のホームページなどで確認しておくと良いでしょう。
【企業向け】カテゴリーごとに必要なもの
外国人本人が用意する書類に加えて、企業側でもカテゴリーに応じた必要書類をそろえておく必要があります。
不備不足のないよう、各カテゴリーで必要な書類をあらかじめ確認しておきましょう。
カテゴリー1
カテゴリー1に該当する企業は、以下のいずれかを用意する必要があります。
- 会社四季報の写し、または日本の上場企業であることを証明する書類
- 主務官庁による設立許可を証明する書類
- 高度専門職省令第1条第1項各号の表にある特別加算のイ・ロに該当する企業であることを証明する書類
- 一定の条件を満たす企業等であることを証明する書類
全カテゴリーのなかでも必要書類が少ないため、該当する企業は比較的スムーズに申請を進められるでしょう。
カテゴリー2
カテゴリー2では、以下の書類の準備が必要です。
- 前年分の職員の給与所得・源泉徴収額などがわかる法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 在留申請オンラインシステムの利用申出に関わる承認を受けたことを証明する書類(利用申出に係る承認のお知らせメールなど)
カテゴリー1で必要な四季報の写しなどの提出は不要ですが、代わりに源泉徴収票のような法定調書合計表の提出が加わっています。
カテゴリー3・4
カテゴリー3・4では、次のような書類の提出が求められます。
- 前年分の職員の給与所得・源泉徴収額などがわかる法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 労働条件通知書または雇用契約書の写し
- 登記事項証明書
- 直近の決算報告書の写し
他のカテゴリーと比べて、用意すべき書類が多くなっているのが特徴です。
なお、受け入れ企業のカテゴリーを証明する書類がない場合には、カテゴリー4に分類されます。
在留資格変更許可申請をするときの必要書類
留学ビザで滞在していた外国人がアルバイトから正社員に変わる際や、転職によって外国人の業務内容が変わる際には、在留資格変更許可申請を行う必要があります。
在留資格変更許可申請の対象となるのは、すでに在留資格を所有している外国人です。
適切な在留資格を取得せずに、認められた範囲外の仕事に従事した場合、不法就労として外国人本人と企業の双方が罰則を受けるリスクがあります。
在留資格は在留カードで確認できるため、企業側でも資格の種類や就労の可否、変更申請の必要性を事前に確認するようにしましょう。
ここからは、在留資格変更許可申請にあたって、外国人本人と受け入れ企業のそれぞれが用意すべき必要書類を紹介します。
【外国人本人向け】用意するもの
外国人本人が用意する書類の例には、以下のようなものが挙げられます。
- 在留資格変更許可申請書
- 申請人の証明写真(6ヵ月以内に撮影したもの)
- パスポート、在留カード
- 雇用契約書または労働条件通知書の写し(企業が発行し外国人へ送付)
- 専門士または高度専門士の称号を証明する文書(専門学校を卒業した方の場合)
ここで紹介するものはあくまでも一例であり、就労ビザの種類によって追加書類の提出を求められる可能性もある点に注意しましょう。
また、派遣社員として働く場合には、派遣先での活動内容がわかる資料も必要です。
【企業向け】用意するもの
企業側で準備が必要となる主な書類には、以下のようなものがあります。
- 登記事項証明書
- 雇用契約書または労働条件通知書の写し(発行後外国人へ送付)
- 直近の決算報告書の写し
- 前年分の職員の給与所得・源泉徴収額などがわかる法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 企業の概要がわかる資料
- 企業のカテゴリーを証明する書類(補助金交付決定通知書や認定証の写しなど)
在留期間更新許可申請と同様、必要書類は企業のカテゴリーによって変わります。
社内の関連部署と連携し、スムーズに書類をそろえられるように努めましょう。
就労ビザ更新のために必要書類を用意する際の注意点
就労ビザの更新申請を行う際は、必要書類を不備なく準備すると同時に、以下3つの注意点を念頭に置いてください。
- 住民税を納付しているか確認する
- 在職証明書は必要ない場合がほとんど
- 転職している場合には活動機関に関する届け出が必要
住民税の納付といった義務が果たされていない場合、今後の在留資格の更新・変更審査時に不利になる可能性があります。
また、中長期在留外国人が転職活動を行うときには、所属機関の届け出も忘れないようにしましょう。
住民税を納付しているか確認する
就労ビザの更新申請を行う際は、住民税の納付状況を確認しておくことが大切です。
住民税の未納がある状態でビザ更新申請を行うと、在留期間の決定や今後の更新にネガティブな影響を及ぼす可能性があります。
外国人であっても、日本で暮らしながら一定以上の給与所得を得ている方は、住民税の納付が必要です。
市区町村役場で住民税の納税証明書や課税証明書を発行してもらう際に、未納の有無を確認してみてください。
すでに納期を過ぎてしまっている未納が発覚した場合、そのまま放置するのではなく、すみやかに納付を済ませるようにしましょう。
在職証明書は必要ない場合がほとんど
就労ビザの更新申請では、在職証明書を必要としないケースがほとんどです。
基本的には雇用契約書や労働条件通知書の写しの提出で申請を受け付けてもらえますが、外国人の在籍状況に疑義が持たれた場合、追加書類を求められるかもしれません。
特に、在職証明書とその他の書類で業務内容、入社日などが異なる場合、詳細な説明を要求される可能性があります。
在職証明書の提出は義務ではないため、提出を求められない限りはその他の書類のみで申請を進めると良いでしょう。
転職している場合には活動機関に関する届け出が必要
転職にあたって就労ビザの更新・変更申請を行う場合は、活動機関に関する届け出が必要になります。
雇用契約の終了や開始が発生してから14日以内に、出入国在留管理庁へ届出書を提出しましょう。
また、転職後の就労ビザ更新では前職の企業に関する書類に加えて、新しく勤める企業の書類もそろえる必要があります。
審査をよりスムーズに進めるためには、理由書の準備も検討してみてください。
なお、外国人材を新たに受け入れたり離職が発生したりした企業側でも、「中長期在留者の受入れに関する届出」を行わなければなりません。
提出期間は受け入れの開始または終了から14日以内となっているため、忘れずに手続きを済ませておきましょう。
必要書類を不備なくそろえて就労ビザを更新しよう
就労ビザの更新申請では、外国人本人と企業側のそれぞれが、就労ビザの種類や企業のカテゴリーに応じた書類を準備する必要があります。
カテゴリー1に該当するような上場企業であれば比較的申請はスムーズですが、書類に不備がある場合、追加の説明を求められるかもしれません。
また、住民税など税金の納付状況に問題があったり、提出書類のなかで業務内容や入社日などの情報にズレがあったりした場合も、審査は滞りがちです。
在留審査処理には2週間~1ヵ月ほどかかることが想定されるため、外国人本人と企業で連絡を取り合いながら、計画的に申請準備を進めるようにしましょう。