特定技能の在留資格を持つ外国人は、在留期間中であっても一時帰国ができます。
ただし、一時帰国を終えて再入国をする際、スムーズに手続きを進めるには、事前に必要な申請を済ませておくことが大切です。
本記事では、特定技能外国人の一時帰国に関するルールや、みなし再入国許可の申請方法、脱退一時金の受け取り条件などについて解説します。
一時帰国で送り出した外国人が再び問題なく入国できるよう、受け入れ企業側で必要な手続きを理解しておきましょう。
目次
特定技能の外国人は一時帰国できる
特定技能の在留資格を持つ外国人は、一時帰国が可能です。
出入国在留管理庁による「特定技能外国人受入れに関する運用要領」では、以下のように定められています。
特定技能所属機関は、特定技能外国人から一時帰国の申出があった場合は、事業の適正な運営を妨げる場合等業務上やむを得ない事情がある場合を除き、何らかの有給の休暇を取得することができるよう配慮を求めるものです。
出典元:特定技能外国人受入れに関する運用要領│出入国在留管理庁
特定技能の外国人に対する待遇は、日本人スタッフと同等以上としなければなりません。
国籍などを理由とした差別的な扱いは認められず、給与や賞与はもちろんのこと、有給休暇の付与なども日本人と同様に設定します。
特定技能の外国人から一時帰国の申し出があった場合の対応について
特定技能の外国人が一時帰国を希望する場合、受け入れ企業は原則として有給休暇の利用を認める必要があります。
一方で、企業による一時帰国の送迎や費用の負担は義務となっていません。
特定技能の一時帰国は有給休暇の利用を許可する
外国人から一時帰国の申し出があったとき、やむを得ない事情があるケースを除き、受け入れ企業は有給休暇の利用を認めなければなりません。
特定技能の外国人にも、日本人と同じ労働基準法が適用されるため、日本人労働者と同じように年次有給休暇の付与が必要です。
申し出の時点で有給休暇をすべて消化している場合には、追加の有給休暇や無給休暇の取得ができるような配慮が求められます。
業務上の理由により有給の利用が難しいようであれば、代替日を提案するなど、一時帰国のスケジュールを立て直すサポートをしましょう。
一時帰国している期間は特定技能の通算期間に含まれる
外国人が一時帰国している期間も、特定技能の通算期間(上限5年)に含まれるという点には十分注意が必要です。
特定技能1号の在留期間は、上陸許可や変更許可が下りた時点からカウントが始まり、一時帰国により日本にいないあいだも進行します。
このことを失念し、一時帰国の期間を除いて通算期間をカウントすると、本来の滞在期間を超えて日本で働き続けてしまい、不法滞在と判断される可能性があるでしょう。
不法滞在が発覚した場合、外国人本人だけでなく、受け入れ企業も罰則対象となります。
特定技能の一時帰国費用は本人が負担する
帰国の際に利用する飛行機代などの費用は、原則として外国人本人負担です。
特定技能の外国人受け入れの支援計画には「空港への送迎」が含まれており、事業所または外国人の住居から空港までの移動にかかる費用は、基本的に受け入れ機関が負担します。
ただし、この支援計画に義務づけられている送迎は、あくまでも最初の入国や就労を終えた最終帰国が対象です。
一時帰国の送迎は義務ではありませんが、念のため空港へ問題なくたどり着けるか本人に確認し、不安があれば空港まで同行するなどの配慮が必要になります。
特定技能の一時帰国には「みなし再入国許可」が大切
特定技能の外国人が一時帰国する際には、みなし再入国許可という手続きを忘れず行うようにしましょう。
みなし再入国許可の概要や申請方法、届出を行わなかった場合どうなるのかを解説します。
みなし再入国許可とは
みなし再入国許可とは、在留資格を持つ外国人が一時帰国などをする場合に、出国前に申告することで再入国時の手続きを簡略化できる制度です。
みなし再入国許可の有効期限は、出国の日から1年間となっています。
なお、出国から1年が経過する前に在留期間満了となる場合、みなし再入国許可の有効期限は在留期間満了日までとなることを念頭に置いておきましょう。
みなし再入国許可の申請方法
みなし再入国許可の申請手続きは、外国人入国記録・再入国出国記録(EDカード)の「再入国する予定」へチェックを入れて、出国時に入国審査官へ提出すれば完了です。
この際、みなし再入国許可で出国する旨を口頭でも説明しましょう。
特別な手続きは必要ないものの、EDカードとともにパスポートと在留カードの提示も求められるため、出国時には忘れずこれらを持参するよう外国人に伝えておいてください。
みなし再入国許可の届出を忘れた場合
みなし再入国許可の届出を忘れた場合、特定技能の在留資格と在留期間が消滅してしまいます。
再び日本に入国するには、在留許可を申請し直さなければなりません。
再入国をスムーズに進めるためにも、一時出国の前にみなし再入国許可を忘れず行う必要があります。
特定技能の一時帰国に関して押さえておきたいポイント
特定技能の外国人が一時帰国を希望した場合、企業側は以下3つのポイントを押さえておきましょう。
- 一時帰国の際に脱退一時金を受け取れる場合がある
- 一時帰国したあとに再入国できないケースがある
- 技能実習から特定技能1号に移行した場合の一時帰国は不要
再入国ができなくなる原因として、みなし再入国許可の申請をしなかった場合のほか、二国間協定に定められた手続きを怠った場合なども考えられます。
雇用している外国人の状況をきちんと把握したうえで、必要な手続きをきちんと済ませることが大切です。
一時帰国の際に脱退一時金を受け取れる場合がある
特定技能の外国人が一時帰国する際、脱退一時金を受け取れる場合があります。
脱退一時金とは、日本企業から退職した方が、国民年金または厚生年金から脱退したときに支給される一時金のことです。
特定技能外国人が一時帰国する際にも、要件を満たせば脱退一時金を受け取れます。
2021年4月に、脱退一時金の支給額計算に用いる月数の上限が見直され、国民年金または厚生年金への加入がある場合、最長5年分の年金を返還請求できるようになりました。
脱退一時金が支給される要件
脱退一時金の支給要件は、以下のとおりです。
- 日本国籍ではない
- 厚生年金または国民年金の被保険者ではない
- 6ヵ月以上の納付済保険料がある
- 老齢年金の受給資格(10年間)を満たしていない
- 障害基礎年金を受け取る権利を得たことがない
- 日本国内に住所がない
- 年金の被保険者でなくなった日より2年以上経過していない(資格を喪失した日に日本国内に住所があった場合、資格喪失後、初めて日本に住所を持たなくなった日から2年以上経っていない)
これらに当てはまる特定技能外国人が一時帰国をする場合には、脱退一時金の申請を行いましょう。
脱退一時金の申請に必要な書類・申請方法
脱退一時金の申請時は、次の必要書類をそろえたうえで、日本年金機構本部や共済組合など、加入していた制度・期間によって該当する機関へ提出します。
脱退一時金の申請に必要な書類 | ●脱退一時金請求書 ●パスポートの写し ●日本国内に住所がないことを確認できる書類 -住民票の除票の写し -パスポートのコピー(出国日が確認できるページ)写しなど ●脱退一時金を受け取る口座が確認できる書類 ●基礎年金番号が確認できる書類 |
提出方法 | 郵送または電子申請 |
提出の期限 | 日本に住所を持たなくなった出国時から2年以内 |
脱退一時金請求書のひな形は、英語や中国語、ポルトガル語など計14言語に対応しています。
雇用している外国人の母国語に合わせたものを用意して提出しましょう。
一時帰国したあとに再入国できないケースがある
一時帰国にあたって適切な手順を踏まなかった場合、特定技能外国人が日本に再び入国できなくなってしまう可能性があります。
再入国できなくなる要因として、みなし再入国許可の申請を行わなかった、二国間協定で定められた手続きを怠ったことなどが考えられるでしょう。
特定技能の二国間協定とは、外国人労働者を送り出す国と受け入れる日本とのあいだで交わされている取り決めのことです。
例えばネパールの場合、外国人が帰国するにあたってネパール労働・雇用・社会保障省雇用管理局から海外労働許可証を受け取り、再出国時に提示するよう決められています。
こうした重要な手続きを忘れてしまうと、再入国が認められなくなる可能性があるため注意が必要です。
技能実習から特定技能1号に移行した場合の一時帰国は不要
原則として、技能実習2号または3号へ移行したタイミングには一時帰国が求められますが、技能実習から特定技能1号に移行した場合には一時帰国は不要です。
帰国するかどうかは外国人本人の自由であり、日本で在留資格の変更申請もできます。
ただし、技能実習ビザの在留期間中に、特定技能1号へ移行できなかった場合、外国人は一時帰国しなければなりません。
在留期間の残り日数をきちんと把握し、余裕を持って変更申請手続きを行えるよう企業側でも支援しましょう。
特定技能の一時帰国に関するルールを把握しよう
特定技能の在留資格を持つ外国人は、在留期間中に一時帰国をすることが可能です。
特定技能の外国人から一時帰国の申し出があった場合には、まとまった休みをとれるよう、やむを得ない事情があるケースを除き、有給休暇の取得を許可する必要があります。
また、日本への再入国をスムーズに進めるためにも、みなし再入国許可の申請を忘れないようにしましょう。
届出を行わないと、特定技能の在留資格と在留期間が消滅してしまい、再度在留資格を取得しなければなりません。
特定技能外国人を受け入れる企業側も、一時帰国の流れやルールをしっかりと把握し、再入国までを円滑に進められるようにしてみてください。