近年、飲食業界では深刻な人手不足が続いています。
その解決策として注目されているのが、外国人雇用です。
しかし、外国人を雇用する際には在留資格や雇用条件など、さまざまな要件を理解しておく必要があります。
この記事では、飲食店での外国人雇用について、対象となる在留資格や具体的な雇用の流れから、雇用のメリット・注意点までをわかりやすく解説していきます。
目次
飲食店で雇用できる外国人の在留資格
外国人を雇用する際には、まず在留資格を確認することが重要です。
飲食店で雇用できる外国人に求められる在留資格は、アルバイトと正社員で異なります。
また、在留資格によって、従事できる業務内容や労働時間に制限があるため、詳しく確認しておきましょう。
アルバイト雇用の場合
飲食店でアルバイトとして働ける外国人は、主に以下4群の在留資格に分類されます。
- 留学
- 家族滞在
- 特定活動
- 定住者や永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等身分に基づく在留資格
このうち、定住者や永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、身分に基づく在留資格を持つ外国人には就労制限がないため、日本人と同様に自由に雇用できます。
それ以外の在留資格を持つ外国人をアルバイト雇用する際は、以下2点の重要な要件を満たすことが必要です。
- 勤務時間は週28時間以内まで
- 資格外許可を得ている
週28時間以内という労働時間の制限は、すべての勤務先での合計時間であり、仕事を掛け持ちしている場合は特に注意が必要です。
また、留学、家族滞在、特定活動の在留資格を持つ外国人には、本来就業が認められていません。
アルバイト就業には「資格外活動許可」の取得が必須であるため、雇用契約前に必ず在留カードで確認しましょう。
正社員雇用の場合
正社員として外国人を雇用する場合、対象となる在留資格は以下の5つです。
- 技能
- 特定活動46号
- 特定技能
- 技術・人文知識・国際業務
- 定住者や永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等身分に基づく在留資格
アルバイトと同様、定住者や永住者、日本人の配偶者等は正社員採用することが可能です。
技能は専門的・技術的分野の在留資格であり、飲食店では調理業務のみが対象となります。
この在留資格を取得するには、10年以上の実務経験またはそれに匹敵する経験が求められます。
ホールスタッフとしての業務には従事できない点には、特に注意が必要です。
特定活動46号は、日本の大学や大学院を卒業し、高度な日本語能力を持つ外国人が対象です。
店舗管理業務や接客・調理など、幅広い業務に従事できます。
特定技能は、人手不足が深刻な12の特定産業分野で働くことができる在留資格です。
外食分野もこれに含まれているため、資格要件を満たす外国人であれば、正社員として雇用できます。
技術・人文知識・国際業務ビザの場合、調理補助やホールといった単純作業・労働で採用することはできませんが、店舗管理職やマーケティング職などの専門職で雇用することは可能です。
飲食店で外国人を雇用する際の流れ
外国人を雇用する際は、求人から在留資格の確認、契約を経ての雇用開始まで、いくつかの重要なステップがあります。
法令に従って適切に手続きを進めることが、円滑な雇用のカギとなります。
それでは、具体的な流れを見ていきましょう。
求人募集
外国人材を募集する方法は、いくつかのアプローチがあります。
主な方法として、以下のような求人募集が挙げられます。
- ホームページに求人広告を掲載する
- SNSで募集する
- 大学や日本語学校などと提携して募集する
- 人材紹介会社を利用する
- ハローワークなどを利用する
それぞれの方法にはメリット・デメリットがあります。
求める人材の質や種類に応じて、最適な採用方法を選択することが重要です。
特に人材紹介会社を利用する場合は、一定の費用が発生するため、採用予算との兼ね合いを考えなければなりません。
ミスマッチを防ぐためにも、募集条件には在留資格や日本語能力の要件を明確に記載しておきましょう。
書類選考・面接
応募者から候補者を選定する際は、通常の採用基準に加えて、在留資格の確認が極めて重要となります。
特に、在留カードの有効期限と資格外活動許可の有無に注意が必要です。
面接では、日本語でのコミュニケーション能力や飲食業界での経験、日本の接客マナーへの理解度なども確認しましょう。
必要に応じて、実技試験や実務テストを行うことで、より正確な能力判断が可能になります。
採用・雇用契約
採用が決まったら、雇用契約の締結に移りましょう。
この際、外国人労働者が内容を正確に理解できるよう、母国語や平易な日本語での契約書を用意することをおすすめします。
雇用条件は細かく明記し、特に残業や昇給についても具体的に説明することで、後々のトラブル防止をめざせます。
また、雇用期間や労働時間の制限なども、契約書に明記しておくことが重要です。
在留資格申請
雇用契約を結んだあとは、在留資格に関する手続きが必要になります。
ただし、留学生などのアルバイトの場合は、すでに資格外活動許可を取得していれば変更申請は不要です。
申請方法は、外国人が日本に在住しているか否かによって異なります。
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
外国人が日本にいない場合
海外から外国人を招へいする場合は、まず管轄の地方出入国在留管理官署に在留資格認定証明書の申請を行う必要があります。
この証明書は発行から3ヵ月以内に日本に入国しないと無効となるため、タイミングには注意が必要です。
証明書の発行後、外国人本人が母国の日本大使館で就労ビザを取得しなければなりません。
一連の手続きには一定の時間がかかるため、余裕を持って進めることをおすすめします。
外国人が日本にいる場合
すでに日本に在住している外国人を雇用する場合、状況に応じて必要な手続きが異なります。
前職と同じ職種での雇用で、すでに有効な在留資格がある場合は、就労資格証明書の交付申請をしておくと入社の手続きがスムーズに進みます。
一方、前職と異なる職種で雇用する場合は、在留資格変更許可申請が必要です。
特に重要なのは、新しく就く職種が現在の在留資格で認められているかどうかの確認です。
飲食業務が可能な在留資格であることを必ず確認してから、申請を進めましょう。
雇用開始
各種申請手続きが完了したら、いよいよ雇用開始となります。
この段階で忘れてはならないのが、雇用保険の手続きです。
外国人労働者が以下2つの条件を満たす場合、事業主は雇用保険被保険者資格取得届を提出する必要があります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込み
また、外国人を雇用した場合、ハローワークへの外国人雇用状況の届出が義務付けられています。
雇用保険被保険者の場合は「e-Gov」から、それ以外の場合は「外国人雇用状況届出システム」から、電子申請も可能です。
これらの手続きを漏れなく行うことで、ようやく適切な雇用環境が整ったといえるでしょう。
飲食店で外国人を雇用するメリット
外国人雇用には、飲食店の運営に大きなメリットをもたらす可能性があります。
人手不足の解消だけでなく、インバウンド対応や組織の活性化など、さまざまな効果が期待できるのです。
以下で、主なメリットについて詳しく解説していきます。
人手不足の解消に役立つ
飲食業界における慢性的な人手不足は、大きな課題となっています。
外国人雇用は、この課題を解決する有効な手段の一つです。
政府も外国人材の受入れを積極的に推進しており、特定技能制度の導入など、制度面でのサポートも充実してきています。
今後も人材確保がしやすい環境が整っていくことが期待されます。
インバウンド需要に対応できる
外国人スタッフの存在は、海外からの観光客対応に大きな強みとなります。
英語や母国語でのコミュニケーションにより、外国人観光客への接客がスムーズになるでしょう。
注文時の誤認識を防ぎ、きめ細かいサービスを提供することで、顧客満足度の向上にもつながります。
また、文化的な理解があることで、より顧客ニーズに合うサービスも可能となるでしょう。
日本人スタッフの質も向上する
外国人スタッフとの協働は、日本人スタッフの成長にもつながります。
日常的な英語でのコミュニケーションを通じて、語学力が自然と向上するでしょう。
また、異なる文化や価値観に触れることで、新しい視点やアイデアが生まれ、メニュー開発などにも良い影響がある可能性もあります。
これにより、店舗全体のサービス品質が向上し、競争力の強化にもつながるでしょう。
飲食店で外国人を雇用する際の注意点
外国人雇用にはさまざまなメリットがありますが、注意すべき点もあります。
特に法令遵守や教育面での配慮は重要です。
以下で、主な注意点について詳しく解説していきます。
申請を間違えると不法就労助長罪になることも
外国人雇用に関する法令違反は、重大な結果を招くリスクがあるとの認識が必要です。
たとえ故意でなくても、就労が認められていない外国人を雇用した場合、不法就労助長罪として処罰される可能性があります。
在留カードの確認は特に重要で、在留資格や在留期限、資格外活動許可の有無を必ず確認しておかなくてはなりません。
また、偽造された在留カードでないかどうかの確認も欠かせません。
留学生を雇用する場合は、週28時間という労働時間の制限を厳守することも重要です。
法令遵守のため、これらの確認と管理を徹底しましょう。
日本語能力やマナーをじっくり教育する必要がある
外国人スタッフの教育には、特別な配慮と時間が必要です。
日本語能力が十分でない場合、顧客や同僚とのコミュニケーションでトラブルが発生する可能性があります。
また、HACCPなどの衛生管理基準の理解と遵守も重要な課題です。
外国人スタッフが理解しやすいように、視覚的な教材を用意したり、母国語での説明を加えたりするなど工夫しましょう。
文化的な価値観の違いもあるため、日本の接客マナーや仕事への取り組み方について、丁寧な指導が求められるのです。
飲食店は外国人雇用で人手不足や課題の解決につなげよう
外国人雇用は、飲食店が抱える人手不足という課題を解決する有効な手段となります。
しかし、成功のためには適切な準備と対応が欠かせません。
在留資格の確認や法令を遵守した契約はもちろん、丁寧な教育体制の整備も重要です。
これらの課題をクリアすることで、インバウンド対応力の向上や組織の活性化など、さまざまなメリットを享受できます。
外国人雇用を検討する際は、本記事で解説した内容を参考に、計画的に準備を進めていくことをおすすめします。