正式には「出入国管理及び難民認定法」である入管法は、日本への出入国を管理し、難民認定手続きを整備する法律です。
この法律は、外国人だけでなく日本人も対象となります。
2023年に新たな入管法改正案が公布されました。
本記事では、この改正案の内容を詳しく解説するとともに、2021年に廃案となった旧改正案の内容とその理由についても紹介します。
入管法の改正は日本の出入国管理に大きな影響を与える重要な問題です。
最新の動向を知ることで、日本の外国人政策への理解を深めることができるでしょう。
目次
2023年入管法改正案の内容
2023年の入管法改正案は、主に3つの課題に対応しています。
保護すべき者の確実な保護、送還忌避問題の解決、そして収容を巡る諸問題の解決です。
この改正案は、過去の課題を踏まえつつ、より包括的な内容となりました。
具体的には、補完的保護対象者の認定制度の導入や、収容に代わる監理措置制度の設置などが盛り込まれています。
これらの施策により、個々の事情に応じた柔軟な対応が可能になると期待されています。
以下では、それぞれの課題に対する具体的な対策を詳しく見ていきましょう。
保護すべき者を確実に保護
2023年入管法改正案では、保護すべき者を確実に保護するための新たな制度が導入されています。
具体的には、補完的保護対象者の認定制度を設けることが挙げられます。
これは、難民の定義に該当しない場合でも、保護が必要な人々を適切に支援するための制度です。
また、在留特別許可の手続きや難民認定制度の運用をより適切なものにすることも盛り込まれています。
これらの措置により、従来の制度では十分に保護されなかった人々にも、適切な支援が提供されることが期待されています。
送還忌避問題の解決
2023年入管法改正案では、日本からの退去が難しい外国人に対する対策も講じられました。
具体的には、難民認定手続中の送還停止効に例外を設けることが挙げられます。
これにより、難民認定申請を繰り返すことで強制送還を回避する行為を防ぐことが可能です。
また、強制的に退去させる手段がない外国人に退去を命令する制度や、退去すべき外国人に自発的な帰国を促すための措置も導入されています。
これらの対策により、長期滞在問題の解決が期待されています。
収容を巡る諸問題の解決
2023年入管法改正案では、収容施設での長期収容という課題に対しても対策が講じられました。
具体的には、収容に代わる監理措置制度の設置です。
これにより、一定の条件を満たす外国人が、収容施設外で生活しながら出国の準備をすることが可能となりました。
また、仮放免制度のあり方を見直すことや、収容施設における適正な処遇の実施を確保するための措置も盛り込まれています。
これらの対策により、人権に配慮した収容政策の実現が期待されています。
廃案になった2021年の入管法改正案
2021年の入管法改正案は、不法滞在者対策の強化や難民認定制度の見直しなど、さまざまな内容を含んでいました。
しかし、この改正案は最終的に廃案となりました。
その背景にあったのが、入管施設での死亡事件や人権団体からの批判です。
2021年の改正案とその廃案の経緯を知ることで、2023年の改正案がどのような考えに基づいて作成されたのか、より深く理解することができます。
以下では、2021年改正案の具体的な内容と、廃案となった理由について詳しく見ていきましょう。
2021年入管法改正案の内容
2021年の入管法改正案には、いくつかの重要な内容が盛り込まれていました。
難民認定手続き中の外国人であっても、申請回数が3回以上になると強制送還ができるようにする案や、不法滞在者を速やかに帰国させる措置案などです。
また、強制送還を拒む人に対して、刑事罰を加える規定も提案されていました。
一方で、難民ではないが紛争などから逃れてきた人を補完的保護対象者として保護する制度や、収容施設ではなく監理人のもとで生活できる制度の新設も盛り込まれていました。
これらの提案は、出入国管理の厳格化と人道的配慮のバランスを取ろうとするものでした。
2021年入管法改正案が廃案になった理由
2021年の入管法改正案が廃案となったきっかけは、入管施設で起きた痛ましい事件です。
長期収容されていたスリランカ人女性が収容中に亡くなるという事件が発生し、入管施設での処遇や長期収容の問題に注目が集まりました。
この事件を受けて、入管法改正案に対する批判的な声が大きくなり、人権団体や国際社会からも懸念が示されたのです。
結果として、政府は改正案を取り下げることを決定しました。
この出来事は、入管政策における人権配慮の重要性をあらためて浮き彫りにし、2023年の新たな改正案に大きな影響を与えることとなりました。
2023年入管法改正案の内容や旧内容との違いを知って参考にしよう
2023年の入管法改正案は、2021年の廃案となった改正案への反省を踏まえ、より人権に配慮した内容となっています。
補完的保護対象者の認定制度や収容に代わる監理措置制度など、個々の事情に応じた柔軟な対応が可能になる制度が盛り込まれました。
また、難民認定申請の回数制限による強制送還の規定は見直され、より慎重なアプローチが取られています。
収容施設での処遇改善や自発的帰国促進措置など、人道的な配慮もより強く反映されています。
これらの変更は、過去の教訓を活かしつつ、現代の課題に対応しようとする試みといえるでしょう。
入管法改正の議論は今後も続くため、引き続き注目していくことが必要です。