近年、日本のホテル業界では外国人材の採用が急速な増加傾向にあります。
インバウンド需要の回復や人手不足を背景に、多くのホテルが外国人スタッフの採用に積極的な姿勢を見せているためです。
本記事では、ホテル業界における外国人採用の現状や、採用可能な在留資格、そして採用によってもたらされるメリットについて詳しく解説します。
人材不足に悩むホテル経営者にとって、具体的な採用戦略を考えるうえでの参考になるはずです。
目次
ホテル業界での外国人採用は増加している
日本のホテル業界における外国人採用は、ここ数年で大きく伸びています。
厚生労働省が公開している2023年10月時点での「外国人雇用状況」の届出状況まとめによると、飲食サービス業を含む宿泊業の外国人労働者数は、2008年の5万1千人から、2023年には23万4千人に増加しました。
この増加の背景には、インバウンド旅行者数の回復にともなうホテル需要の拡大が考えられます。
業界では施設数の不足や深刻な人手不足という課題に直面しており、外国人材の採用が重要な解決策として注目を集めているのです。
ホテル業界で外国人を採用できる在留資格
外国人をホテルで雇用する際には、適切な在留資格が必要です。
求められる在留資格は職種や業務内容によって異なり、資格ごとに就労可能な業務や就労時間などに特徴があります。
以下では、ホテル業界で主に活用される在留資格について詳しく解説していきます。
技術・人文知識・国際業務
この在留資格は、専門的な知識や技術を必要とする業務に従事する外国人材に付与されます。
出入国在留管理庁が規定している業務内容は、以下のとおりです。
- 公私の機関との契約に基づいて行う理学や工学、その他の自然科学の分野、もしくは法律学、経済学や社会学、その他の人文科学の分野に属する技術や知識を要する業務
- 外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務
ホテルの場合は、外国人スタッフの人事労務管理やインバウンドマーケティングなどが該当します。
特に、外国人観光客向けの企画立案や多言語対応のマーケティング戦略の立案などが、この在留資格に対応する代表的な業務となっています。
特定技能
特定技能は、即戦力となる外国人材の受入れを目的として設けられた在留資格です。
出入国在留管理庁が規定している宿泊分野における特定技能の業務内容は、特定技能1号と特定技能2号で異なります。
特定技能1号が宿泊施設におけるフロントや企画・広報、接客やレストランサービスなどの宿泊サービスの提供に従事するのに対し、特定技能2号は複数の従業員を指導しながら、特定技能1号と同様の業務に従事することとされています。
館内販売や清掃などの関連業務に従事することも可能です。
この在留資格は、実務経験や技能試験合格が要件となるため、即戦力として期待できる人材の採用に適しています。
身分系の在留資格
身分や地位に基づいて付与される在留資格は、就労の自由度が高いのが特徴です。
永住者、定住者と、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、といった身分系と呼ばれる4つの在留資格には就労制限がないため、日本人と同じように宿泊業のすべての業務ができます。
レストランでの配膳やベッドメイクなどの単純労働も可能です。
このカテゴリの在留資格保持者は、長期的な雇用計画を立てやすい人材として注目されています。
資格外活動許可
留学生などが本来の在留目的以外の活動として、アルバイトなどの就労を行う際に必要な許可です。
留学や家族滞在、文化活動の在留資格があれば、資格外活動許可を取得したうえでアルバイトができます。
1週間に28時間までであれば、配膳やベットメイクなどの業務に就くことができます。
この制度は、繁忙期のスタッフ補充や短期的な人材確保に活用できるでしょう。
ホテル業界で外国人採用をするメリット
外国人材の採用は、ホテル業界にさまざまなメリットをもたらします。
人材確保だけでなく、組織の活性化や顧客サービスの向上など、多面的な効果が期待できるのです。
以下では、主要なメリットについて詳しく解説していきます。
人手確保につながる
外国人材の採用は、深刻な人手不足の解消に直接的な効果をもたらします。
厚生労働省のデータからもわかるように外国人労働者は年々増えつつあり、積極的に採用することによって、人手不足の解消につながるでしょう。
新規に人員を確保するのが難しくなっているなかで、日本の宿泊業界で働きたいという強い意志をもっている外国人も多いです。
特に、日本のおもてなし文化に魅力を感じて志望する外国人材は、高いモチベーションを持って業務に取り組む傾向があります。
雇用コストの削減ができる
外国人労働者の採用では、政府の助成金や補助金を活用できます。
「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」や、「人材開発支援助成金」などが利用可能です。
結果的に、採用コストの削減につながるでしょう。
地方自治体でも制度が用意されているので、各自治体の取り組みを調べておくのがおすすめです。
社内の生産性向上につながる
外国人スタッフの存在は、職場全体の活性化に寄与します。
外国人労働者が真剣に接客する姿や効率的な働き方を学ぶ姿を見ることにより、教える側である日本人労働者自身の業務に対する意識も高められ、社内の生産性向上につながるでしょう。
ハングリー精神のある外国人と一緒に働くことで、他の日本人スタッフの仕事にもプラスの作用をもたらすことも考えられます。
新しい視点や異なる文化的背景からの提案は、サービスの質の向上にも貢献するでしょう。
多言語対応できる
外国人スタッフの採用は、グローバルな顧客サービスの向上に直結します。
外国人旅行者への対応がスムーズになれば、旅行者の満足度が向上し、リピーターの増加が期待できます。
日本に暮らす外国人の場合、日本語でのコミュニケーションも自然にとれるうえ、母国語のほかに英語も堪能な人材もおり、接客の面でも大いに力を発揮することでしょう。
ホテル業界での外国人採用の増加やメリットを知って参考にしよう
ホテル業界における外国人採用は、業界が直面する課題解決の有効な手段として注目されています。
厚生労働省のデータによると、宿泊業・飲食サービス業の外国人労働者数は2008年の5万1千人から2023年には23万4千人へと大幅に増加しました。
人手不足の解消、社内の活性化、多言語対応の充実など、外国人採用がもたらすメリットは多岐にわたります。
これらのメリットを理解し、適切な在留資格での採用を検討することは、今後のホテル経営において重要な戦略となるでしょう。