外国人技能実習生の受け入れは、企業にとって貴重な人材確保の機会となります。
しかし、その過程ではさまざまな費用がかかることも事実です。
そこで注目したいのが、外国人技能実習生の受け入れに活用できる助成金制度です。
本記事では、利用可能な助成金の種類や申請方法、そして活用する際の注意点について詳しく解説します。
企業の負担を軽減しながら、グローバルな人材を育成するチャンスを逃さないためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
外国人技能実習生の受け入れ時に活用できる助成金
外国人技能実習生を受け入れる際、企業が活用できる助成金がいくつか存在します。
外国人労働者の就労環境整備や雇用維持の支援を目的とした助成金です。
ここでは、主な助成金制度について詳しく見ていきましょう。
それぞれの特徴や申請条件を理解することで、自社に最適な助成金を選択できます。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
人材確保等支援助成金は、外国人労働者の職場定着を促進するための制度です。
日本の労働慣行や雇用制度に不慣れな外国人労働者に配慮した就労環境の整備を行う事業者に対して、経費の一部が助成されます。
この助成金の対象となるのは、雇用保険被保険者となる外国人労働者を雇用している事業主です。
在留資格は問われませんが、認定を受けた就労環境整備計画に基づいて、新たな就労環境整備措置を導入する必要があります。
また、就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であることも要件の一つです。
受給要件を満たした場合、支給対象の経費に助成率を乗じた額が支給されます。
賃金要件を満たしていない場合 | 支給対象経費の1/2(上限57万円) |
賃金要件を満たしている場合 | 支給対象経費の2/3(上限72万円) |
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業縮小を余儀なくされた事業主を対象とした制度です。
雇用維持を図るための休業や教育訓練などの費用を助成することで、従業員の雇用を守ることを目的としています。
この助成金は外国人技能実習生を雇用している事業主も利用可能で、外国人技能実習生を休業させる場合に活用可能です。
ただし、対象となるのは雇用保険の被保険者期間が6ヵ月以上の外国人技能実習生に限られます。
注意すべき点として、休業によって実習を継続できない場合、「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2項の基準を定める省令」に定められている不正行為に該当する可能性があります。
そのため、休業を検討する際は速やかに管理団体へ相談することが重要です。
教育訓練実施率 | 企業規模 | 助成率 | 教育訓練換算額 |
1/10未満 | 中小企業 | 1/2 | 1,200円 |
大企業 | 1/4 | ||
1/10以上1/5未満 | 中小企業 | 2/3 | |
大企業 | 1/2 | ||
1/5以上 | 中小企業 | 2/3 | 1,800円 |
大企業 | 1/2 |
その他の助成金・補助金
上記のような全国規模の助成金制度に加えて、地方自治体独自の補助金制度も見逃せません。
これらの制度は地域の特性に応じて設計されており、企業の所在地によって利用できる補助金が異なります。
例えば、外国人材の採用や定着支援、多文化共生の推進などを目的とした補助金を設けている自治体もあります。
こうした地域独自の支援制度は、地元企業の国際化や地域経済の活性化への貢献が目的です。
自社に適用可能な補助金を見逃さないためにも、都道府県や市区町村の公式Webサイトをこまめにチェックしたり、地域の商工会議所に相談したりすることをおすすめします。
地域ならではの支援を活用することで、より効果的に外国人技能実習生の受け入れを進められる可能性もあるでしょう。
外国人技能実習生の採用における助成金の申請方法
助成金を活用するためには、適切な申請手続きが不可欠です。
ここでは、主要な助成金制度の申請方法について詳しく解説します。
制度によって申請の流れや必要書類が異なるため、事前に十分な準備を行うことが重要です。
正確かつ迅速な申請を行うことで、スムーズに助成金を受給できるでしょう。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の申請方法
人材確保等支援助成金の申請には、期限内に計画書や申請書類を都道府県の労働局に提出する必要があります。
郵送の場合は、期限までに届くよう注意してください。
なお、地域によってはハローワークでの提出が可能な場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
申請の流れは以下のとおりです。
- 就労環境整備計画を作成し、本社の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークに提出します。
- 認定を受けた就労環境整備計画に基づき、就労環境整備措置を導入します。
- 導入した就労環境整備措置を計画どおりに実施します。
- 本社の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークに支給申請を行います。
これは計画期間終了後12ヵ月間の算定期間終了後、2ヵ月以内に行う必要があります。 - 審査を経て助成金が支給されます。
注意すべき点として、人材確保等支援助成金は事業主単位で申請するものであり、事業所単位ではありません。
複数の事業所がある場合でも、一括して申請することになります。
雇用調整助成金の申請方法
雇用調整助成金の申請手続きは、以下の流れで進められます。
- 休業計画を立て、労使協定を結びます。
- 計画に基づいて休業を実施し、休業手当を支給します。
- 休業の実績に基づいて支給申請を行います。
- 労働局による審査を経て、支給が決定されます。
申請に必要な書類は、事業所の住所を管轄する労働局またはハローワークに提出します。
郵送の場合は、期限までに確実に届くよう余裕を持って発送しましょう。
申請の期限は、「支給対象期間」の最終日の翌日から起算して2ヵ月以内です。
また、提出した書類は支給決定された日から5年間保存する義務があります。
必要書類には以下のものが含まれます。
- 雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書
- 支給要件確認申立書・役員等一覧
- 休業・教育訓練実績一覧表
- 助成額算定書
- (休業等)支給申請書
- 休業協定書
- 事業所の状況に関する書類
- 労働・休日の実績に関する書類
- 休業手当・賃金の実績に関する書類
- 労働保険料等に関する書類
これらの書類を漏れなく準備し、正確に記入することが円滑な申請につながります。
外国人技能実習生の受け入れ時に助成金を活用するメリット
外国人技能実習生の受け入れに際して助成金を活用することには、多くのメリットがあります。
まず、採用に関わる費用の企業負担が軽減されるため、より積極的に国際的な人材を確保しやすくなります。
これは、グローバルな視点や競争力の強化につながる重要な要素です。
多言語対応を強化できるため、海外展開を考えている企業にとっては特に大きなメリットとなるでしょう。
また、人手不足の解消にも、もちろん効果的です。
さらに、外国人との交流は従業員に新しい刺激を与え、斬新なアイデアや問題解決策を生み出す契機となる可能性があります。
従業員のモチベーション向上や維持にもつながり、組織全体の活性化に寄与するでしょう。
このように、助成金の活用は単なる金銭的支援にとどまらず、企業の成長や競争力強化に多面的に貢献する可能性を秘めています。
外国人技能実習生の受け入れ時に助成金を活用する注意点
助成金の活用には多くのメリットがありますが、同時にいくつかの注意点も忘れてはなりません。
これらの点を事前に理解し、適切に対応することで、スムーズな助成金の活用が可能になります。
ここでは、特に重要な注意点について詳しく解説していきます。
受給要件の達成・明確な計画が必須
助成金を受給するためには、各制度で定められた受給要件を確実に達成する必要があります。
これらの要件は形式的なものではなく、制度の目的を達成するために設定されたものです。
一般的に、申請時には明確な計画の提出を求められます。
そのため、助成金の活用を検討する段階から、具体的で実現可能な計画を立てることが重要です。
この計画は、単に助成金を受給するためだけのものではなく、実際に外国人技能実習生の受け入れを成功させるための指針にもなります。
また、各種書類の提出時に原本の提出を求められる可能性があります。
そのため、必要な書類は事前に用意し、適切に管理しておくことが大切です。
特に重要な書類は複数のコピーを作成し、安全な場所に保管しておくと良いでしょう。
すぐに受給できるとは限らない
助成金の受給には、ある程度の時間がかかることも理解しておく必要があります。
制度によって異なりますが、申請してからすぐに助成金を受け取れるわけではありません。
厳正な審査が行われるため、場合によっては1年ほどの時間を要する可能性もあります。
助成金の受給を前提とした資金計画を立てる際は、この点を十分に考慮に入れることが必要です。
また、複数の助成金を併用できない場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
自社の状況に最も適した助成金を選択し、効果的に活用することが求められます。
これらの注意点を踏まえたうえで、慎重かつ計画的に助成金を活用することで、外国人技能実習生の受け入れをより円滑に進めることができるでしょう。
外国人技能実習生の助成金を賢く活用しよう
外国人技能実習生の受け入れに関する助成金制度は、企業にとって大きな支援となるものです。
人材確保等支援助成金や雇用調整助成金など、目的に応じたさまざまな助成金制度が用意されており、これらを適切に活用することで、外国人材の受け入れにかかる負担を軽減できます。
ただし、助成金の活用には、適切な計画立案と厳密な要件達成が求められます。
また、申請から受給までに時間がかかる場合もあるため、長期的な視点での資金計画も必要です。
地域独自の補助金制度も含めて、自社に最適な支援を選択し、慎重に申請手続きを進めることが重要です。
こうした取り組みを通じて、外国人技能実習生の受け入れを成功できれば、企業の国際競争力強化につなげていくことも期待できるでしょう。