
特定技能外国人の転職は制度上可能ですが、一定の条件をクリアする必要があります。
また、転職の際には、本人だけでなく、退職する企業と新しく受入れる企業それぞれに手続きが求められます。
受入れ企業側は、特定技能外国人の定着のために、さまざまな取り組みを実施することが重要です。
本記事では、特定技能外国人の転職の条件や手続きについて解説し、企業と特定技能外国人双方にとって望ましい転職のポイントを紹介します。
目次
特定技能外国人は転職ができる
特定技能の在留資格を持つ外国人は、制度上転職が可能です。
しかし、実際に転職するためには、いくつかの満たすべき要件が存在します。
特定技能外国人が転職する際は、新たな受入れ機関を先に見つけなければなりません。
また、転職先の業種や職種が特定技能の対象に含まれており、その業務内容が技能水準に合致している必要があります。
転職が認められている一方で、転職先の業務内容が要件を満たしているかを事前に判断することは特定技能外国人にとって簡単ではないことなどから、特定技能外国人の多くは同じ職場で働き続ける傾向にあるといえます。
特定技能外国人が安心して働き続けられる環境を整備することは、企業にとって重要な課題です。
また、特定技能外国人の転職を支援する仕組みづくりも求められており、今後ますますそのニーズは増加していくでしょう。
特定技能外国人が転職するときの条件
特定技能外国人が転職する際には、技能と在留期間の条件をクリアする必要があります。
技能の条件
特定技能外国人が転職する際には、転職先が現職と同じ業務区分か、技能水準の共通性が確認されている業務区分である必要があります。
同じ分野内でも業務区分ごとに特定技能の技能試験が設置されている場合は、該当する技能試験にあらためて合格しなければなりません。
特定の技能試験日程は業務区分によって異なることもあり、転職者を採用する検討をする場合、転職希望者が必要な技能試験をいつ合格できる見込みかについて把握しておくことが、採用計画を円滑に進めるうえで重要なポイントになります。
在留期間の条件
特定技能1号の在留期間は、通算5年までという条件があるため、残りの在留可能期間を考慮して転職する必要があります。
最長5年間の在留期間に関しては、転職前に特定技能ビザにて就労していた期間も含まれます。
転職先での就労期間が十分に確保できるよう、転職前に在留期間を確認することが必要です。
特定技能外国人が転職する際の手続き・必要書類
特定技能外国人が転職する際には、本人と退職する企業、新しく受け入れる企業のそれぞれが行う手続きがあります。
本人の手続き
特定技能1号の外国人が転職する場合は、転職先が「特定技能1号の受入れ機関」として認められていることを確認したうえで雇用契約を結びます。
その後、14日以内に出入国在留管理局へ「特定技能所属機関の変更届出」の提出が必要です。
また、転職を機に従事する分野が変更になる場合は在留資格変更の手続きが必要となります。(同じ産業分野内での転職には不要)
よって、退職時と入社時の二度、出入国在留管理局に「特定技能所属機関の変更届出」を提出し、さらに在留資格変更許可申請の手続きを行う必要が発生する場合もあるので注意しましょう。
退職する企業が行う手続き
特定技能制度では、雇っていた外国人が会社を辞めた場合、特定技能雇用契約に係る「受入れ機関に関する届出」の提出が義務付けられています。
受入れ機関に関する届出には、特定技能外国人との契約終了日や契約終了の事由を記載します。
特定技能外国人との契約終了の理由が雇用契約期間の終了以外の場合は、受入れ困難に係る届出書の提出が必要です。
新しく受入れる企業が行う手続き
新しく受入れる企業は、自社が特定技能外国人を受入れるための要件を満たしていることを証明するため、特定技能雇用契約書や特定技能外国人の報酬に関する説明書など、多くの書類を準備しなければなりません。
書類をもとに、新しく受入れる企業が日本人と同等の給与を支払う予定かどうかなど、細かく審査されます。
雇用条件書や支援計画書、納税証明書などの必要書類を準備する必要があります。
特定技能外国人の転職を防ぐために企業ができること
企業は、特定技能外国人の定着のためにさまざまな取り組みができます。
評価基準を明確にする
不当に扱われていると感じると意欲が低下し、より良い条件で働くために転職を考えるようになります。
例えば、同じ仕事をしている日本人と明らかに評価基準が違うと感じると転職を考えることにつながるかもしれません。
評価基準を明確にすることでモチベーションがアップし定着へつながります。
教育係をつける
異国での勤務に対し、多くの外国人は不安を抱きます。
教育係を配置することで、そうした不安の解消をめざすことができます。
教育係には、同じ国の出身者など、特定技能外国人の母国語が話せたり、母国の文化を理解している従業員がふさわしいでしょう。
ただし、教育係の負担が増えたり、同郷のグループで固まりすぎて日本人社員との交流がしづらくなるなど、デメリットにもあらかじめ考慮して配置することが大切です。
キャリアアップを支援する
特定技能外国人にとっては、成長できる環境であるかどうかも重要なポイントであるといえます。
中長期でキャリアアップを支援するシステムやキャリアパスがあると、将来をイメージできるため定着しやすくなるでしょう。
特定技能2号が設定されている業種分野の場合は特定技能2号へのキャリアパス、さらに技術・人文知識・国際業務へのステップアップも視野に入れられる学歴を持つ人材の場合は将来の幹部候補にまでキャリアアップの可能性を示すことも、選択肢の一つとして考えられます。
人間関係を良好にする
日頃から良好な人間関係や心理的安全性の高い職場環境を築くことも、定着のポイントです。
お花見やお祭り、花火や盆踊りなど、季節ごとの行事に声をかけるなどして、家族のように接してみるのも一案です。
ただし、あくまでも人権や文化的な背景に配慮して、本人の興味や意思を尊重しましょう。
特定技能外国人が転職するときの条件や手続きを知って参考にしよう
特定技能外国人が転職するときには、技能と在留の条件をクリアする必要があります。
本人や退職元の企業、新しく受入れる企業それぞれが行う手続きがあるので、それぞれの立場で必要な手続きを確認し、適切に対応することが大切です。
特定技能外国人の定着のためには、評価基準の明確化や教育係の設置、キャリアアップ支援、良好な人間関係づくりなど、企業側の取り組みも重要となります。
特定技能外国人の転職の条件や手続きを理解し、企業と特定技能外国人の双方にとって望ましい転職となるよう心がけましょう。