日本では外国人の採用数が年々増加傾向にあります。
令和5年10月の資料によると、外国人労働者数は2,048,675人に達し、前年比で225,950人増加して過去最高を更新しています。
また、外国人を雇用する事業所数も318,775所と過去最高の数値を記録しました。
国籍別ではベトナム、中国、フィリピンの順に多くなっています。
このように外国人採用が増えており、正社員としての雇用によるメリットもさまざまあります。
本記事では、外国人を採用するための条件や、採用のメリット、注意点などを詳しく解説します。
目次
外国人を正社員採用する2つの条件
外国人を正社員として採用するためには、主に以下の2つの条件をクリアする必要があります。
- 就労可能なビザと在留資格がある
- 在留資格に適した仕事を任せる必要がある
就労可能なビザと在留資格がある
外国人を正社員として雇用する場合、就労ビザと在留資格を所有しているかの確認が必要です。
ビザは入国時に必要となる入国許可証のことですが、就労ビザ・在留資格とは、報酬をともなう就労が認められるものを意味します。
外国人の採用の際は、まず就労ビザと在留資格の有無をチェックしましょう。
在留資格に適した仕事を任せる必要がある
外国人の正社員採用では、在留資格に適した仕事のみを任せられるという制限があります。
そのため、採用時には人材の在留資格を入念に確認しておかなければなりません。
在留資格は、「技術・人文知識・国際業務」、「技能」、「経営・管理」などのカテゴリに分類され、各資格に合った適切な仕事をアサインすることが求められます。
外国人を正社員採用するメリット
外国人の正社員採用には、企業にとってさまざまなメリットがあります。
ここでは、外国人を正社員採用することで得られる3つのメリットについて解説します。
人材不足の解消
外国人の正社員採用によるメリットの一つが、社内の人材不足解消です。
日本では少子高齢化や働き方の多様化といった影響で、若手人材の雇用が難しくなったり、早期に離職したりするケースが増えています。
新卒で入社しても数年で転職してしまう若者が多いなか、留学生を教育して正社員として採用することで、即戦力となる優秀な人材の確保が可能になります。
ただし、留学生をアルバイトから正社員採用する場合は、就労可能な在留資格への変更が必要になるため注意しましょう。
企業のグローバル化
外国人の正社員採用は、国内企業のグローバル化を推進するためのメリットもあります。
日本人社員のみで構成されている企業の場合、海外のコミュニティに関する情報がタイムリーに入ってこないため、国際的な企業競争で負けてしまう恐れがあります。
一方で、外国人を採用することで海外のコミュニティとつながる機会が生まれ、海外向けの新サービス展開などにつなげられる可能性があります。
近年におけるグローバル社会に備えるためにも、外国人社員を通じて社内に海外の視点を取り入れていくことは非常に重要です。
優秀な人材の確保
外国人の正社員採用は、若年層の優秀な人材確保につながるメリットもあります。
先述した近年の少子高齢化や転職者数の増加に伴い、多くの企業が人材確保に悩みを抱えています。
そこで、採用対象を国内だけでなく海外にも広げることで、より幅広い人材から優秀な人材を見つけ出すことができます。
また、外国人採用では、海外で働くことに抵抗がなかったり高いモチベーションを持って働いてくれたりするメリットも期待できます。
グローバルな人材を発掘し、育成していくことで、企業の成長にもつながるでしょう。
外国人を正社員採用する注意点
外国人の正社員採用にはメリットが多くありますが、同時にいくつかの注意点にも留意が必要です。
ここでは、外国人を正社員として採用する際の3つの注意点を解説します。
正社員採用できる業務は限られている
外国人を正社員で採用する場合、在留資格によって担当できる業務の範囲が定められています。
在留資格で認められている業務以外は、外国人の正社員には任せることができません。
採用時には、専門知識や特定の技術が必要な業務であるか、日本人と同等以上の給与を受け取れる仕事であるかなどの観点から、適切な業務を見極める必要があります。
スーパーの品出しや弁当の箱詰めなど、単純作業が中心となる業務は外国人の正社員には任せられないので注意しましょう。
文化・宗教への理解が必要になる
外国人の正社員採用では、文化や宗教への理解も欠かせません。
宗教によっては、決まった時間にお祈りを行ったり、食べられるものに制限があったりすることがあります。
また、家族を大切にする国の出身者の場合、残業をあまりできない可能性もあります。
業務上だけでなく、ライフスタイルの面でも柔軟に対応し、理解を示していくことが求められます。
採用担当者だけでなく、一緒に働く日本人従業員に対しても、多様性への理解を促していく必要があります。
社内の業務体制を整備する必要がある
外国人の正社員採用に際しては、社内の業務体制を整備することも重要です。
就労ビザの申請や、常時10人以上の外国人を雇用する場合の外国人労働者雇用労務責任者の選任、適切な就労環境の確保などが必要となります。
加えて、日本での生活をサポートするため、住宅や銀行口座の開設、日常の買い物などをサポートする体制づくりも求められます。
外国人社員が安心して働ける環境を整えることが、定着率の向上や生産性の向上につながります。
外国人を正社員採用する方法
外国人の正社員採用を検討する際には、どのような方法で採用活動を行うかも重要です。
ここでは、外国人の正社員採用に向けた具体的な方法をいくつか紹介します。
ハローワークの活用
外国人の正社員採用では、自治体のハローワークを活用する方法があります。
ハローワークは無料で利用でき、全国に拠点があるため、幅広いエリアから人材を募集できるのがメリットです。
外国人材の採用に特化した通訳を設置しているハローワークもあるため、そうした拠点を活用することで、より効率的に採用活動を進められるでしょう。
また、ハローワークや国の機関を通じて採用することで、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」などの助成金・補助金を受けられる可能性もあり、企業にとってもメリットがあります。
留学生アルバイトの正社員登用
日本の大学に留学中の外国人学生を、将来的に正社員として登用する方法もあります。
自社でアルバイトとして働いてもらいながら、資格取得後に正社員として雇用するといった流れです。
ただし、外国人の正社員採用では、アルバイト業務の延長線上で雇用することはできません。
入管局が単純労働と判断する仕事は許可されないため、正社員としての業務内容を明確にしておく必要があります。
大学や専門学校の卒業生が、学校で学んだ専門的な知識を活かした職に就く場合にのみ在留資格が許可されており、アルバイトでもできる簡単な仕事は認められません。
留学生の正社員登用には、計画的な採用戦略が求められます。
人材紹介会社の活用
民間の人材紹介会社を活用して、外国人の正社員採用をめざす方法もあります。
国や業種に特化した人材紹介会社を選ぶことで、ピンポイントで必要な人材を見つけ出すことができます。
近年は外国人材の採用ニーズの高まりを受けて、専門性の高い人材紹介会社が増えています。
人材紹介会社を活用することで、時間や手間をかけずにスピーディーに外国人材を採用できるため、採用活動の効率化を図りたい企業におすすめです。
自社での求人活動
コストを抑えて外国人材を採用したい場合は、自社で求人を出して採用活動を行う方法もあります。
自社採用ページの作成やSNSを活用した採用活動、求人サイトへの掲載などです。
自社で求人活動を行う場合は、明確な採用基準を設けたり、社内の受け入れ体制を整えたりしながら進めましょう。
外国人の正社員採用は企業成長につながる
外国人を正社員として雇用する場合には、単純労働ではなく専門的な業務を任せる必要がある、就労ビザや在留資格の確認が必要など、日本人の採用とは異なる注意点がさまざまあります。
しかし、人材不足解消やグローバル化の推進、優秀な人材の確保など、企業の成長につながるさまざまなメリットもあり、将来を見据えた積極的な採用の検討も必要です。
自社の状況に合わせて、戦略的に外国人材の採用を進めていくことが、これからのビジネス環境で求められる重要な取り組みといえます。
外国人の正社員採用を通じて、企業の発展につなげていきましょう。