日本の外国人労働者は年々増加傾向にあり、スキルを要する在留資格を持つ労働者も増えています。
人手不足の産業にとっては、外国人労働者はとても貴重な存在です。
その一方で、言語や文化の違いから労働上のトラブルに見舞われるケースもあり、雇用主には適切な対応が求められています。
本記事では、外国人労働者の現状や課題、国の政策などについて解説していきます。外国人労働者の雇用を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
外国人労働者の現状
日本で働く外国人労働者は年々増加傾向にあり、その出身国や在留資格、就労先の産業も多岐にわたります。
ここでは、外国人労働者の現状について詳しくみていきましょう。
外国人労働者は増加傾向
外国人労働者数は、令和5年10月時点で204万8,675人となっており、届出が義務化された平成19年以降で過去最大となっています。
前年が182万2,725人で、対前年増加率は12.4%です。
国別の労働者数をみると、最も人数が多いのはベトナムです。
令和5年10月の時点で51万8,364人と、全体の約4分の1を構成する人数になっています。
2番目の中国に次ぐフィリピンの労働者数は22万6,846人です。
対前年増加率の点でみると、最も増加したのはインドネシアでした。
令和5年10月の時点で、前年比56%も労働者数が増加し、12万1,507人になっています。
また、2番目に前年増加率が多いのはミャンマーです。
対前年増加率は49.9%で、労働者数は7万1,188人となっています。
この結果より、労働者数だけでなく、労働者数の増加率に関しても、東南アジアの国で多いことがわかります。
今後はこれらの東南アジア諸国の人材の流入が増えていく可能性が高く、外国人労働者は日本の産業において貴重な労働力になるでしょう。
出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和5年10月末時点)
外国人労働者の資格別傾向
在留資格別に日本の外国人をみると、最も多いのは「身分に基づく在留資格」で61万5,934人となっています。
身分に基づく在留資格に含まれるのは以下のとおりです。
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
身分に基づく在留資格に次いで多いのは「専門的・技術的分野の在留資格」の約59万人です。
専門的・技術的分野として認められている在留資格には以下があります。
- 教授
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 高度専門職1号・2 号
- 経営・管理
- 法律・会計業務
- 医療
- 研究
- 教育
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転勤
- 介護
- 興行
- 技能
- 特定技能1号・2号
前年比をみると、専門的・技術的分野の在留資格が対前年増加率24.2%、次いで技能実習が20.2%です。
身分に基づく在留資格のみならず、専門的・技術的分野の在留資格や技能実習によって、スキルを身につけて働く外国人労働者が増加していることがわかります。
出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和5年10月末時点)
外国人労働者の産業別割合
外国人労働者は増加傾向にあり、産業別にみると製造業が約55万人で全体の27%と最も多くなっています。
次いでサービス業が約32万人、卸売業・小売業が約26万人でした。
そのなかでも特に日本が外国人労働者を確保したいのは「医療、福祉」にあたる介護の分野です。
慢性的な人手不足が深刻化している介護分野ですが、外国人労働者の数も令和5年の時点で約9万人と、全体のわずか4.4%です。
そのため日本では、海外現地での試験実施や介護職のPR、外国人労働者が働きやすい職場環境の提供に取り組んでいます。
介護人材に限らず、人材不足が問題視される分野において、外国人労働者を確保するための環境を作ることが必要とされています。
出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和5年10月末時点)
日本の外国人労働者における課題・トラブル
外国人労働者の増加にともない、言語や文化の違いから生じるトラブルや契約上の問題など、さまざまな課題も浮き彫りになっています。
ここでは、外国人労働者を雇用する際に起こりうるトラブルについてみていきましょう。
言語や文化などの違いによるトラブル
日本人同士であれば解決できるような問題でも、相手が外国人労働者の場合は言語や文化の違いが原因で解決しないケースがあります。
また、特に技能実習などは実習が終わるまで辞めることができないため、境遇にストレスを感じた外国人労働者が、音信不通になったり失踪したりする例も多くなっています。
雇用企業側は不当な労働条件にならないよう、管理を行うとともに、労働局やハローワークと連携して、受け入れ準備を整えることが必要です。
契約内容の行き違いによるトラブル
雇用側と労働者側とで契約内容の認識違いが起こるといった、契約上のトラブルもあります。
日本語の不自由な外国人労働者とは、このような契約上の齟齬が発生する場合もありうるでしょう。
日本では雇用主に対して「外国人雇用管理指針」を定めています。
これは外国人労働者が仕事に適応して働けるよう、雇用管理措置について明記したものです。
「外国人労働者の募集および採用の適正化 」においては、以下を明示するよう雇用主に呼びかけています。
- 業務内容
- 賃金
- 労働時間
- 労働・社会保険の適用
雇用契約書を作る際にやさしい日本語を利用し、英語の契約書も作成するなどしてトラブル回避に努めましょう。
在留資格(就労ビザ)に関するトラブル
外国人労働者を雇用する際は在留資格が必要になりますが、在留資格には就労が認められるものと、原則認められないものがあります。
例えば、留学ビザや家族滞在ビザは原則として就労が認められていません。
また、就労可能な在留資格でも分野が分かれており、任せたい業務がその在留資格に合致しているかの確認が必要不可欠です。
在留資格の確認を怠り、本来任せてはいけない業務を外国人労働者に任せた場合、300万円以下の罰金または3年以下の懲役の罰則があるので注意しましょう。
企業側が外国人労働者を雇う際には、在留資格に関する知識をしっかり持っておくことが大切です。
外国人労働者に関する国の政策
外国人労働者に関する国の政策としては、平成30年から行われている新たな在留資格「特定技能」があげられます。
国内における人材確保が難しい分野において、外国人労働者を確保する目的で制定された制度であり、人手不足の業種に対して、技能のある外国人を雇うことができます。
特定技能には1号と2号があり、特定技能1号の該当業種は以下の12分野です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
- 建設分野
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
特定技能2号は従来まで、「建設分野及び造船・舶用工業分野の溶接区分のみが対象となっていました。
しかし、令和5年にはビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の9分野と、造船・舶用工業分野のうち溶接区分以外の業務区分全てを新たに特定技能2号の対象とし、特定技能1号のうち介護を除いた11分野に拡大されました。
また特定技能2号は、家族の帯同 や在留期間の更新 も認められるとても柔軟な資格です。
このように、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた政策が進められています。
外国人労働者の現状を知り雇用に役立てよう
外国人労働者は年々増加傾向にあり、日本の人手不足の産業を支える重要な労働力です。
また、国の政策として特定技能制度など、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた取り組みも進んでいます。
一方で、言語や文化の違いから生じるトラブルや契約上の問題など、さまざまな課題があるのも現状です。
雇用主はトラブルなく外国人労働者を雇うために、在留資格に関する知識を持ち、適切な労働条件を提示することが大切です。
外国人労働者の現状を知り、適切な対応を行うことで、多様な人材を活かした企業活動につなげていきましょう。