グローバル化が進む現代社会において、優秀な外国人材の獲得は企業の成長に欠かせない要素となっています。
日本政府も、高度な専門性や技術を持つ外国人材の受け入れを促進するため、「高度人材ポイント制」を導入しました。
この制度は外国人材にとっても、日本で働くうえでの大きなメリットになります。
本記事では、高度人材ポイント制の仕組みや計算方法、そして企業にとってのメリットについて詳しく解説します。
高度人材の採用を検討している企業にとっても、有益な情報となるでしょう。
目次
高度人材ポイント制とは
高度人材ポイント制は、日本の産業や経済の発展に貢献する可能性の高い外国人材の積極的な受け入れを促進するための制度です。
この制度について、その概要や目的、導入背景を詳しく見ていきましょう。
制度の概要
高度人材ポイント制は、高度な専門性や技術を持つ外国人材に対して、出入国在留管理上の優遇措置を与える制度です。
外国人の学歴、職歴、年収などの項目ごとにポイントを設定し、合計点数が一定以上に達した場合に「高度外国人材」と認定されます。
この制度により認定された外国人就労者は、他の在留資格と比べて有効期限の長いビザが発給されるなど、さまざまな優遇措置を受けることができます。
採用する企業側にとっては、長期的に優秀な人材を確保できるという点が大きなメリットです。
制度の目的
高度人材ポイント制の主な目的は、日本への高度外国人材の受け入れを促進することです。
この制度では、外国人材の活動内容を以下の3つに分類しています。
- 高度学術研究活動
- 高度専門・技術活動
- 高度経営・管理活動
それぞれの特性に応じて、「学歴」「職歴」「年収」などの項目ごとにポイントを設定し、合計が70点以上に達した場合に出入国在留管理上の優遇措置が与えられます。
これにより、日本の産業や研究分野の発展に寄与する可能性の高い外国人材を、積極的に受け入れられる環境を整えているのです。
制度の背景
高度人材ポイント制が導入された背景には、日本の少子高齢化社会による人手不足という喫緊の課題があります。
国としては、外国人の優秀な働き手に日本での活躍を促すことで、この人手不足を解消するのが狙いです。
また、この制度は就労側と採用側の双方にメリットをもたらします。
就労者にとっては、ビザの有効期限の延長などの優遇措置を受けられるため、長期的な視点で日本での就労を計画できます。
一方、採用者側は優秀な外国人材を確保しやすくなり、グローバル化する市場での競争力を高めることができるのです。
緩和された高度人材ポイントの要件
高度人材ポイント制は、より多くの優秀な外国人材を惹きつけるため、近年要件が緩和されました。
ポイント獲得の機会が増加し、永住許可申請の条件も緩和されています。
これらの変更点について詳しく見ていきましょう。
ポイント獲得機会の増加
高度人材ポイント制の見直しにより、ポイント獲得の機会が大幅に増加しました。
これにより、より多くの外国人材が高度人材として認定される可能性が高まっています。
主な変更点は以下のとおりです。
【日本再興戦略 2013 を踏まえた高度人材ポイント制の見直し 】
1. 高度人材告示を改正して認定要件の緩和と優遇措置の拡充
ア 認定要件(ポイント制)の緩和
① 年収要件について、ⅰ)年齢区分ごとに設定されていた最低基準(例えば、
30 歳未満であれば 340 万円、30 歳以上 35 歳未満であれば 440 万円)を、高
度学術研究活動は 0 円に、高度専門・技術活動と高度経営・管理活動は 300 万
円に引き下げ、ⅱ) 海外の親会社等の本邦の所属機関以外からの報酬の合算
を容認
② 研究実績のポイントを引上げ
(実績一つ:15 点→20 点、実績二つ以上:15 点→25 点)
③ 日本語能力のポイントを引上げ(10 点→15 点)
④ 日本の高等教育機関の学位取得のポイントを引上げ(5 点→10 点)
⑤ 一定の専門職学位(MBA、MOT)や一定の外国の資格、表彰等を持つ者
に加点(0 点→5 点)
⑥ 所属機関が中小企業である場合に加点(国のイノベーション促進支援措置
を受けている場合:0 点→10 点、試験研究費比率 3%超:0 点→5 点)
⑦ 在留期間が 1 年未満の予定の者でも高度外国人材の認定対象とする。
引用:1 高度外国人材の認定
【日本再興戦略 2016 を踏まえた高度人材ポイント制の見直し】
2. ポイント計算の対象となる加算事項を 7 項目追加
① 高度学術研究活動のポイント計算に当たり学歴が大卒・大卒相当の場合にも
加点(0 点→10 点)
② 複数の博士号・修士号を持つ者に加点(0 点→5 点)
③ 日本語能力試験N2 取得者に加点(0 点→10 点)
(日本の高等教育機関の学位取得によるポイントを取得した者を除く。)
④ IT等の先端プロジェクトの従事者に加点(0 点→10 点)
⑤ 世界のトップクラス大学の卒業者に加点(0 点→10 点)
〔⇒具体の大学名を告示で指定〕
⑥ 国・JICA等が実施する研修の修了者に加点(0 点→5 点)
〔⇒具体の研修名を告示で指定〕
⑦ 自己の経営する事業に 1 億円以上の投資の場合に加点(0 点→5 点)
(高度経営・管理活動に限る。)
引用:1 高度外国人材の認定
これらの変更により、特に先端技術分野や高度な専門性を持つ外国人材が、さらに高度人材としての認定を受けやすくなりました。
また、日本語能力や研究実績に対する評価が高まったことで、日本の文化や研究環境に適応しやすい人材の獲得も期待できます。
永住許可申請条件の緩和
高度人材ポイント制は、永住許可申請の条件緩和にも活用されています。
この制度で70点以上のポイントを獲得した高度外国人材は、永住許可申請に必要な在留期間が大幅に短縮されることになりました。
具体的には、70点以上の高度人材ポイントを取得している人は、最短3年間日本に滞在していれば永住許可申請が認められます。
従来の在留期間5年という条件から大きく緩和されています。
この変更により、高度人材として認定された外国人材は、より早期に日本での長期的なキャリアプランを立てることができるようになりました。
企業にとっても、優秀な人材を長期的に確保できる可能性が高まったといえるでしょう。
高度人材のポイント計算方法
高度人材ポイントの計算方法は、外国人材の活動内容や特性に応じて細かく設定されています。
主に「学歴」「職歴」「年収」などの項目ごとにポイントが付与され、その合計点で評価されます。
出展:《ポイント計算表》
ポイントの計算は、高度人材外国人の3つの活動内容(高度学術研究活動、高度専門・技術活動、高度経営・管理活動)それぞれの特性に応じて行われます。
各項目のポイントを加算し、算出した合計点によって対象外国人の保有ポイントが決定されるのです。
学位は高ければ高いほど、職歴は長いほど点数が高くなる傾向があります。
そのため、自身の経歴や資格などの記入漏れがないよう、慎重に確認することが重要です。
また、博士号を持つ外国人材は学歴の項目で高得点を獲得でき、特定分野での長年の職歴や、高額な年収も高いポイントにつながります。
さらに、日本語能力や資格の保有などの追加項目も考慮されるため、総合的な評価が行われているといえるでしょう。
高度人材ポイント取得者を雇用するメリット
高度人材ポイントを獲得している外国人を雇用することは、企業にとって多くのメリットがあります。
人手不足の解消や専門知識・スキルの獲得だけでなく、企業文化の多様化や競争力の向上にもつながります。
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
人手不足を解消できる
日本の多くの企業が直面している人手不足問題に対して、高度人材ポイントを持つ外国人材の採用は有効な解決策となり得ます。
特に専門性の高い分野や技術者不足が顕著な業界では、即戦力となる人材を確保できる可能性が高まるでしょう。
また、グローバル展開をめざす企業にとっては、言語や文化の壁を越えて活躍できる人材を獲得できることも大きなメリットです。
これにより、国内市場だけでなく、海外市場への進出や国際的なビジネス展開も、よりスムーズに進めることができるでしょう。
専門知識とスキルが手に入る
高度人材ポイントを獲得している外国人労働者は、高い専門知識とスキルを持っているのが特徴です。
彼らを採用することで、企業は即戦力となる人材を確保し、ただちに業務への貢献を受けることができます。
さらに、日本人には少ないスペシャリストを獲得できる可能性もあります。
例えば、最先端のIT技術や特定の科学分野における専門家など、日本国内では希少な人材を確保することができるかもしれません。
このような専門性の高い人材を雇用することで、企業の技術力や競争力を大きく向上させることができるでしょう。
企業に新しい発想が生まれる
グローバル化が進む現代のビジネス環境において、多様な価値観や視点を持つ人材の確保は非常に重要です。
高度人材ポイントを持つ外国人材を採用することで、企業に新しい発想や画期的な意見をもたらすことができます。
特に海外との取引がある企業にとっては、異なる文化背景を持つ人材の存在が大きな強みとなります。
彼らの視点や経験は、新たな市場へのアプローチや商品開発のアイデアにつながる可能性があるからです。
また、社内のコミュニケーションも活性化し、従来の固定観念にとらわれない柔軟な思考が生まれやすくなるでしょう。
これも、企業の創造性と革新性を高める重要な要素となり得ます。
人材競争力が上がる
高度人材ポイントを獲得しているスタッフの存在には、企業内全体の人材競争力を向上させる効果も期待できます。
優秀な外国人材との協働は他の従業員にとっても良い刺激となり、個々のスキルアップや業務効率の向上につながるでしょう。
社内で切磋琢磨する機会が増えることで、組織全体の生産性や創造性が向上する可能性もあります。
また、競合他社との差別化を図る上でも、高度な専門性を持つ人材の存在は大きな強みです。
結果として、企業の業績向上や成長につながることが期待できます。
高度人材の採用は、単に人手不足を解消するだけでなく、企業の未来を左右する重要な戦略の一つといえるでしょう。
高度人材ポイント取得者を雇う方法
高度人材ポイントを獲得している外国人材を採用するには、さまざまなアプローチがあります。
効果的な採用戦略を立てるために、主な方法について詳しく見ていきましょう。
それぞれの特徴を理解し、自社に適した採用方法を選択することが重要です。
人材紹介・転職エージェント
人材紹介や転職エージェントを活用することは、高度外国人材を採用する効果的な方法の一つです。
特に、日本の学校を卒業してそのまま日本に在住している外国人材は、国内での面接も可能であり、このような方法が有効となります。
多くの外国人材が転職サイトやエージェントを利用して仕事を探しており、これらのサービスを活用することで、充実した人材プールにアクセスできます。
専門的なエージェントを利用すれば、特定の業界や職種に特化した高度人材を見つけやすくなるでしょう。
また、エージェントを通じて採用することで、ビザや労働条件などの法的な側面についても専門的なサポートを受けられる場合があります。
これは、外国人雇用に不慣れな企業にとって大きな助けとなるでしょう。
Web求人
Web求人は、多くの求職者が利用する便利なツールです。
高度人材ポイントを持つ外国人材を獲得するためにも、効果的な方法の一つといえるでしょう。
求人情報をWeb上に掲載することで、国内外の多くの高度人材にリーチすることが可能です。
特に、海外在住の優秀な人材にアプローチする際には、Web求人が重要な役割を果たします。
ただし、企業によって求人にかけられる手間や予算は異なります。
自社の状況に合わせて、適切な求人サイトや掲載方法を選択することが重要です。
また、外国人向けの求人では、英語や他の言語での情報提供も検討すべきでしょう。
多言語対応の求人情報を掲載することで、より多くの高度外国人材にアピールすることができます。
自社サイト
自社Webサイトを活用した採用活動は、高度外国人材を獲得する上で非常に重要です。
海外の就職活動では、日本のような業界研究や企業研究の文化があまり一般的ではありません。
そのため、多くの外国人求職者は、外国人材を積極的に採用している企業を直接探し、その企業の採用情報を確認してから直接応募する傾向があります。
このような背景から、自社サイトの採用ページは特に注力して作成する必要があります。
自社で求人サイトを作成する際は、以下の点に留意しましょう。
- 会社の魅力を明確に伝える
- 外国人材向けの特別なメッセージや優遇措置を記載する
- 多言語対応を行う(少なくとも英語版は用意する)
- 応募プロセスをわかりやすく説明する
- 外国人社員の声や体験談を掲載する
これらの工夫により、高度外国人材に対して自社の魅力を効果的にアピールできるでしょう。
合同就職説明会
合同就職説明会への参加は、高度外国人材と直接コミュニケーションを取る絶好の機会です。
この方法の最大のメリットは、候補者の人柄や口調、雰囲気などを直接確認できる点にあります。
実際に対面することで、書類や電話では伝わりにくい互いの印象や企業文化との相性を確認することができます。
また、候補者にとっても企業の雰囲気を直接感じることができるため、ミスマッチを防ぐ効果も期待できるでしょう。
合同就職説明会に参加する際は、以下の点に注意しましょう。
- 外国人材向けの説明資料を用意する
- 通訳や多言語対応のスタッフを配置する
- 企業の特徴や外国人材に対する期待を明確に伝える
- 質問に対して具体的かつ丁寧に回答できるよう準備する
これらの準備を整えることで、高度外国人材との有意義な出会いの場を創出できるでしょう。
会社の未来のために、高度人材ポイント取得者の採用も検討してみよう
高度人材ポイント制度は、日本企業にとって優秀な外国人材を獲得する絶好の機会を提供しています。
この制度を活用することで、企業は専門知識やスキルを持つ人材を確保し、グローバル競争力を高めることが可能です。
高度人材の採用は、単に人手不足を解消するだけでなく、企業に新しい発想をもたらし、イノベーションを促進する可能性を秘めています。
また、多様な背景を持つ人材が加わることで、組織全体の視野が広がり、国際的な事業展開にも有利に働くでしょう。
採用方法としては、人材紹介・転職エージェント、Web求人、自社サイト、合同就職説明会など、さまざまなアプローチがあります。
自社の状況や求める人材像に合わせて、最適な方法を選択することが重要です。
グローバル化が進む現代社会においては、多様な人材を受け入れ、その能力を最大限に活かすことが、企業の持続的な成長につながります。
高度人材ポイント取得者の採用を検討することは、会社の未来への投資といえるでしょう。