日本の難民認定制度は、迫害などの事情があって来日・在留を希望する外国人を受け入れるための制度です。
外国人が申請を行い、母国から離れざるを得ない事情を証明することで、法務大臣から難民認定を受けられます。
認定申請中の外国人には保護措置も用意されていますが、自力で生活費を確保するための就労は可能なのか、認定後の在留資格はどうなるのか不安に感じる方もいるでしょう。
本記事では、難民認定を受けた外国人の在留資格と申請中の就労可否を解説します。
外国人採用を考えている企業でも、就労させて問題のない人材なのかを確認する重要な判断材料として、難民認定制度への理解を深めておきましょう。
目次
難民認定後の在留資格とは
難民認定を受けた外国人の在留資格は、原則「定住者」となります。
定住者の在留資格には、通常5年・3年・1年・6ヵ月の在留期間が付与され、期限を迎える前に更新が必要です。
定住者の在留資格を持つ外国人は、安定して日本に在留しやすくなるほか、日本国民と同じように社会保障や福祉支援を受けられるという特徴があります。
具体的には、国民年金や健康保険、児童扶養手当などの受給資格を得ることが可能です。
ただし、定住者は、在留期間に制限がない「永住者」のビザとは異なることを理解しておきましょう。
定住者の場合、在留期間の期限前に更新が必要となります。
難民認定申請中に在留資格を取得できる?
難民認定の申請中に、外国人が日本への滞在を希望する場合、一定の条件を満たせば在留資格を取得できる可能性があります。
難民認定の申請後、なおかつ審査結果が出る前に与えられる在留資格は「特定活動」となるのが一般的です。
難民認定の審査には2年半以上かかる場合もあり、その期間に日本で収入を得る活動を行うには、就労可能な在留資格が必要になります。
特定活動の在留資格は、必ずしも就労が認められているわけではなく、外国人の状況次第で可否が判断されるという点に注意しましょう。
難民認定申請後、特定活動の在留期間が与えられてから2ヵ月以内に振り分けが行われ、その区分によって申請中に日本で就労できるか否かが決まります。
振り分け決定までの2ヵ月間に付与される特定活動の在留資格では、就労できません。
難民認定申請後の在留資格の決まり方
難民認定申請後、特定活動の在留資格を与えられてから2ヵ月以内に、外国人は以下A~Dのいずれかの区分に振り分けられます。
B. 難民条約上の迫害事由に、明らかに該当しない事情を主張している場合
※ただし、人道上配慮の検討が必要であればD案件となる
C. 難民認定の再申請であって、正当性のない主張を前回同様に繰り返している場合
※ただし、人道上配慮の検討が必要であればD案件となる
D. 1.在留資格に定められた活動を行わなくなってから難民認定申請を行った場合、または出国準備期間中の申請である場合
D. 2.D1以外の人
この区分によって、付与される在留資格に次のような違いがあります。
B. 在留資格の取得不可
C. 在留資格の取得不可
D. 1.特定活動(在留期間3ヵ月)の在留資格が与えられるが、就労不可
D. 2.申請から6ヵ月以内は就労不可の特定活動(在留期間3ヵ月×2回)を付与、申請後6ヵ月経つと就労可能な特定活動(在留期間6ヵ月)を与えられる
B・Cについては、日本での在留・就労を目的に難民認定制度を濫用している可能性が疑われ、在留資格を得られません。
難民認定申請中に就労できるのは、Aもしくは申請後6ヵ月が経過したD2に該当する外国人となります。
難民申請中と認定後の在留資格を理解しよう
難民認定は、申請後すぐに得られるものではなく、年単位の審査期間を要します。
難民認定後は、定住者の在留資格で安定した生活を送れますが、審査結果が出る以前から日本での滞在を希望する場合、一時的な在留資格を取得しなければなりません。
難民認定申請中の外国人が取得できる在留資格は、特定活動となるのが一般的です。
申請後2ヵ月は就労が認められず、そのあとの振り分けによって在留・就労制限の可否が決まります。
難民であることが明らかな場合、振り分け後すぐに就労が可能です。
一方で、外国人の状況次第では就労制限がかけられたり、在留資格の付与自体が認められなかったりするケースも考えられます。
日本の企業が外国人の受け入れを考える場合、難民認定申請中の特定活動は、必ずしも就労可能な在留資格ではない旨を理解しておくことが重要です。
採用活動時に、本人から在留カードと指定書を見せてもらい、在留期間や就労可否を確認したうえで、適切な外国人雇用をめざしましょう。