少子高齢化が進む日本では、労働力人口の減少が深刻化している状態です。
この問題に対処するため、企業では外国人労働者の雇用が増加しつつあります。
外国人材の活用は人手不足解消につながるだけでなく、事業拡大を見据える企業のグローバル化への貢献、即戦力の獲得など多くのメリットが期待できるでしょう。
一方で、文化的背景の違いによるトラブルが起こりやすい点には注意が必要です。
この記事では、外国人労働者を受け入れるメリットとデメリットを解説します。
デメリットを回避するためには企業側の受け入れ準備が必須となるため、外国人材が自社の目的とマッチしているか慎重に検討したうえで採用を進めるようにしましょう。
目次
外国人労働者を受け入れるメリット
外国人労働者の受け入れには、次のようなメリットが期待できます。
- 企業の人手不足解消につながる
- 企業のグローバル化を促進 できる
- 一定水準以上の技術を持った人材を雇用できる
- 新しいアイデアの創出に役立つ
事業を維持・拡大していくためには、優秀な人材の確保が不可欠です。
外国人労働者のなかには、日本で就労するために必要なスキルを身につけた人材も多く、企業の即戦力として活躍してくれるでしょう。
企業の人手不足解消につながる
日本の企業が直面している人手不足問題を解消するには、外国人労働者の受け入れが有効です。
日本人だけでなく外国人労働者にも対象を広げることで、単純に応募者の母数が増え、企業にとって採用の選択肢が広がります。
これにより、自社のニーズに合った人材を見つけやすくなるでしょう。
また、日本は少子高齢化が進行しており、若い人材の確保が年々難しくなってきています。
出典:第4章 人手不足の状況
一方で、外国人労働者は20~29歳の年齢層が多く、若い世代の人材を採用しやすくなる点もメリットです。
企業の人手不足解消と持続的な発展のためにも、外国人労働者の活用を視野に入れる必要があります。
企業のグローバル化をサポートできる
外国人労働者の採用は、企業のグローバル化を促進するうえでも大きな意味を持ちます。
外国人労働者のなかには、母国語に加えて日本語や英語を話せる人材も珍しくありません。
こうした多言語を操れる人材は、海外顧客を対応する場面で活躍してもらうことが可能です。
外国人労働者が増えた結果、社内に各国特有の技術・知識が共有され、企業文化や技術の発展も期待できます。
また、従業員同士が異なる文化に触れる機会が増えることで、グローバルな視点を持った人材の育成にもつながるでしょう。
外国人労働者の受け入れは、企業のグローバル化を推進し、国際競争力を高めるうえでも有効な取り組みといえます。
一定水準以上の技術を持った人材を雇用できる
外国人労働者の受け入れにあたっては、一定の技能レベルを持った人材を確保できる点も大きなメリットです。
外国人労働者向けの在留資格の一つである「特定技能」では、業務に従事するための技能を一定レベル有していることが求められます。
また、日常生活に支障がない程度の日本語でのコミュニケーション能力も必要です。
つまり、特定技能の在留資格を持つ外国人労働者は、企業の即戦力として活躍できる人材といえるでしょう。
加えて、日本で学ぶ若い外国人留学生のなかにも優秀な人材は存在しています。
こうした外国人材を採用できれば、社内の技術レベルの向上と人材不足の解消を同時に図ることが可能です。
新しいアイデアの創出に役立つ
外国人労働者を雇用することは、企業の新しいアイデア創出にも役立つでしょう。
異なる文化的背景で育った外国人労働者は、日本人とは違った視点や発想を持っているためです。
彼らの新鮮な考え方は、日本人だけでは思いつかないようなアイデアを生み出す源泉となる可能性があります。
また、多様な文化・価値観を持つ人々が交流するなかで、従業員の発想力も高められていくでしょう。
さらに、外国人労働者の持つ人脈は、ビジネスチャンスをもたらす可能性があります。
彼らの母国や他国とのつながりから、新たな販路や事業機会が生まれるかもしれません。
外国人労働者の存在は、企業の革新性と成長力を高める重要な要素といえます。
外国人労働者を雇用するデメリット・注意点
外国人採用は企業にとって多くのメリットをもたらす一方で、次のような注意点も存在します。
- 文化や習慣の違いによるトラブルの可能性がある
- 円滑なコミュニケーションが難しい場合がある
- 外国人労働者を受け入れるまで時間がかかる
- 外国人労働者ならではの手続きやルールがある
なかでも組織内での人間トラブルは、外国人労働者の早期離職にもつながりかねません。
既存の従業員と外国人労働者の間に溝ができないよう、相互理解を深めるための交流の場を設けることも検討してみてください。
文化や習慣の違いによるトラブルの可能性がある
外国人労働者を受け入れる際に注意したいのは、文化や習慣の違いから生じるトラブルです。
出身国によって価値観や善悪の判断基準が異なるため、相手に悪意がなくても、従業員同士で不満が溜まってしまうことがあります。
例えば、宗教上の理由から特定の食べ物を口にしない外国人労働者に対して、日本人従業員が理解を示さない場合、トラブルに発展するかもしれません。
こうした問題を防ぐためには、外国人労働者の出身国の文化と習慣を既存の従業員に周知し、理解を深めておくことが大切です。
多様性を尊重して、お互いの違いを認め合える職場環境を整えることが求められます。
円滑なコミュニケーションが難しい場合がある
外国人雇用のもう一つの課題は、言葉の壁によるコミュニケーションの難しさです。
外国人労働者の日本語レベルには個人差があるため、場合によってはスムーズなコミュニケーションが取れないこともあるでしょう。
日本人従業員なら理解できるざっくりとした指示や説明では、外国人労働者に正しく伝わらず、ミスにつながるケースも考えられます。
こうした事態を回避するには、外国人労働者に対してはより具体的かつ丁寧な指示を出すことがポイントです。
必要に応じて英語などの外国語に翻訳したり、図やイラストを活用したりすることで、コミュニケーションの円滑化を図れるでしょう。
外国人労働者を受け入れるまで時間がかかる
外国人労働者を雇用する際には、就労ビザの取得が必要です。
就労ビザの申請から取得までには、通常1〜3ヵ月程度の期間 を要し、この待ち時間を想定しておかないと人材確保に遅れが発生してしまう可能性があります。
また、職種や業種によっては就労ビザの取得が難しいケースもあるため、任せたい業務の内容と採用したい外国人労働者の学歴・経歴が一致しているか十分に確認しましょう。
すでに日本に在住している外国人を雇用する場合でも、在留資格の種類によっては雇用企業との紐づけが行われるため、申請手続きが必要となります。
こうした手続きに要する時間とコストは、外国人労働者の雇用におけるデメリットの一つといえるでしょう。
外国人労働者ならではの手続きやルールがある
外国人労働者の受け入れ時には、日本人の雇用とは異なる手続きやルールが存在します。
例えば、出入国在留管理庁への申請やハローワークでの届出、外国人労働者自身の母国語での契約書作成などに手間取ることもあるかもしれません。
また、外国人労働者にとって働きやすく、かつ労災を防ぐためにも、就業ルール・就業環境の整備が必要になるでしょう。
こうした手続きやルールを適切に進めるには、企業側が外国人雇用に関する知識を身につけておくことが大切です。
手続きの誤りや遅れは、外国人労働者の就労に支障をきたすだけでなく、企業にとっても法的なリスクをともないます。
必要に応じて、外国人材の紹介会社や就労支援団体の力を借りるのも一案です。
外国人労働者の受け入れはメリット・デメリットの理解も大事
外国人労働者の雇用は、企業の人材不足を解消できるだけでなく、グローバル化の推進や即戦力の獲得にもつながるメリットの多い取り組みです。
一方で、採用にあたって日本人従業員とは異なる手続き、ルールが存在し、受け入れまでに時間がかかるというデメリットも理解しておく必要があります。
初めて外国人労働者を雇用する企業では、言語・文化の違いからコミュニケーションの難しさを感じたり、人間トラブルに発展したりといった課題に直面するかもしれません。
円滑に人材を受け入れるためには、外国人労働者への支援・教育体制を整えるとともに、日本人従業員に向けた意識改革の機会を設けることも重要です。