特定技能外国人を受け入れた特定技能所属機関は随時届出で雇用状況などの変更を報告しなければいけません。
定期届出と異なり、随時届出の義務が発生するのは不定期です。
そのため、事前に随時届出が必要になるケースや提出方法などを十分に理解しておきましょう。
本記事では、随時届出の概要と提出方法、届出が必要になるタイミングや注意点などについて解説します。
目次
特定技能所属機関が行う随時届出とは
随時届出とは、特定技能所属機関が特定技能外国人の雇用状況や支援計画に変更が生じた際に、出入国在留管理庁に提出する届出のことです。
これは入管法第19条の18により、特定技能外国人を受け入れている企業が提出しなければなりません。
また、受け入れ企業が出入国管理庁に提出しなければならない届出には、随時届出のほかに定期届出があります。
定期届出は随時届出とは異なり、年4回の定期的な提出が義務付けられている届出のことです。
特定技能所属機関(受け入れ企業)が随時届出を提出する際は、郵送・インターネット・窓口のいずれかの方法で行います。
特定技能所属機関が行う随時届出の提出先
特定技能所属機関が随時届出を行う際の提出先は、届出方法によって異なります。
提出方法と提出先について、以下の表にまとめました。
提出方法 | 提出先 |
窓口 | 特定技能所属機関の本店の住所を管轄する 地方出入国在留管理官署 (空港支局を除く) |
郵送 | 特定技能所属機関の本店の住所を管轄する 地方出入国在留管理官署 |
インターネット | 出入国在留管理庁電子届出システム上での提出 |
(出典:特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出 | 出入国在留管理庁)
郵送での届出の場合、健康保険証などの身分証明書の写しを同封し、封筒の表に「特定技能届出書在中」と朱書きで記載する必要があります。
また、出入国在留管理庁電子届出システムを利用した提出では、事前の利用者情報登録が必要となるので注意しましょう。
特定技能所属機関が随時届出を行うタイミング
特定技能所属機関が随時届出を行うタイミングは、主に特定技能外国人の受け入れ状況に変更が生じたときと、支援計画の内容に変更が生じたときです。
それぞれのケースについて、以下で詳しく見ていきましょう。
特定技能外国人の受け入れ状況に変更が生じたとき
特定技能外国人の受け入れ状況に変更が生じた場合、随時届出が必要です。
受け入れ状況の変更には、以下の事例が該当します。
- 雇用条件の変更
- 契約期間満了前の契約終了・終期の到来・不正行為の発生
- 新たな雇用契約の締結
それぞれの場合に必要な届出書や注意点を説明していきます。
雇用条件の変更
特定技能外国人の雇用条件を変更した場合には、随時届出が必要です。
届出が必要となる主な変更内容は以下のとおりです。
- 雇用契約期間
- 就業場所(事業所や派遣先の変更)
- 従事すべき業務内容
- 労働時間等
- 休日
- 休暇
- 賃金
- 退職に関する事項
- 社会保険や労働保険の適用状況等について
(出典:特定技能所属機関(受入れ企業・事業主の方)による随時届出 提出資料一覧表 | 出入国在留管理庁)
これらの変更があった場合は、「特定技能雇用契約に係る届出書」を提出します。
また、変更内容に関わらず、特定技能外国人の署名を受けた雇用条件書の添付が必要な点に注意しましょう。
ただし、雇用契約をあらためて結んだ場合や更新した場合の届出は不要です。
契約期間満了前の契約終了・終期の到来・不正行為の発生
特定技能外国人との雇用契約を契約期間満了前に終了するときや、雇用契約が終了したときにも随時届出が必要です。
特定技能雇用契約終了の際に必要な届出書について以下の表にまとめました。
届出が必要なケース | 必要な届出書 |
・契約期間満了前の雇用契約終了 ・雇用契約の終期の到来 |
特定技能雇用契約に係る届出書 |
特定技能外国人の受け入れが困難になった場合 | ・受入れ困難に係る届出書 ・受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書 ※原則として上記書類は特定技能雇用契約の終了前に届出 |
不正行為の発生 | 出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為(不正行為)に係る届出書 |
(出典:特定技能外国人受入れに関する運用要領 | 出入国在留管理庁)
特定技能外国人の受け入れが困難になった場合の例には、以下のようなものが挙げられます。
- 経営の悪化といった経営上の都合
- 受入れ機関としての基準を満たしていなかった
- 特定技能外国人からの申し出による退職
- 重責解雇
- 特定技能外国人の行方不明や死亡
- 病気やけがなど
会社都合であっても自己都合であっても、受け入れ困難になった場合、必要書類と手続きの方法は変わりません。
ただし、「受け入れ困難となるに至った経緯に係る説明書」で契約終了の理由を正しく書く必要がある点に気を付けましょう。
不正行為に関しては後述します。
新たな雇用契約の締結
特定技能外国人との雇用契約を終了して必要な届出を提出したあとに、同一の受け入れ機関で再び雇用契約を結ぶ場合にも随時届出が必要です。
この場合の届出で必要な書類は以下のとおりです。
- 特定技能雇用契約に係る届出書
- 新たな契約に係る特定技能雇用契約書の写し
- 新たな契約に係る雇用条件書の写し
- 新たな雇用契約に係る建設特定技能受入計画認定証の写し(建設分野の場合)
(引用:特定技能所属機関(受入れ企業・事業主の方)による随時届出 提出資料一覧表 | 出入国在留管理庁)
雇用契約終了後、再び雇用契約を締結するケースには、以下のような例が挙げられます。
- 特定技能外国人からの申し出により退職したものの、転職先が見つからず、再度雇用契約を締結した
- 特定技能外国人が契約終了後に一時帰国したあとに、再度入国して雇用契約を行った
ただし、特定技能外国人の在留期間内で雇用契約の終期が到来した場合で、再び雇用契約を締結もしくは更新を行うときの届出は不要です。
支援計画の内容に変更が生じたとき
特定技能所属機関が作成する支援計画の内容に変更があった場合も、随時届出を行う必要があります。
この場合は「支援計画変更に係る届出書」を提出しましょう。
届出が必要な変更事由として、以下の例が挙げられます。
- 事前ガイダンス
- 生活オリエンテーション
- 出入国時の送迎
- 定期的な面談
- 日本語学習支援
- 日本人との交流を促進する支援
- 相談や苦情への対応
- 住居確保に関する支援など
支援計画変更の随時届出については、支援を登録支援機関に委託している場合でも、受け入れ企業が提出しなければいけません。
登録支援機関との契約終了や委託先を変更したとき
登録支援機関とは、特定技能外国人が安定して活動を行えるように支援を行う機関のことです。
特定技能所属機関からの委託により支援計画の作成・実施を行います。
特定技能所属機関は、特定技能外国人への支援状況に変更が生じた場合にも、随時届出が必要です。
以下の場合には「支援計画変更に係る届出書」を提出しましょう。
- 支援計画の内容を変更した
- 支援責任者・担当者を変更した
- 委託する登録支援機関を変更した
- 自社支援に切り替えた
(出典:特定技能所属機関・登録支援機関による届出(提出書類) _ 出入国在留管理庁 )
また、以下のような場合には「支援委託契約に係る届出書」の提出が必要です。
- 登録支援機関への委託契約の内容を変更した
- 登録支援機関との委託契約を終了した
- 登録支援機関と支援委託契約を締結した
(出典:特定技能所属機関・登録支援機関による届出(提出書類) _ 出入国在留管理庁 )
不正行為が発生したとき
特定技能所属機関が労働や出入国に関しての不正行為を認知した場合にも、随時届出が必要です。
この場合は「出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為(不正行為)に係る届出書」を提出します。
不正行為の例は、以下のとおりです。
- 外国人に対しての暴力や脅迫
- 外国人の旅券や在留カードの取り上げ
- 外国人に対して賃金あるいは報酬の一部または全部を支給しない
- 外国人の私生活の自由を不当に制限するなど
(出典:特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令第二条第一項第四号リ | e-Gov法令検索)
特定技能所属機関による随時届出の提出期限
特定技能所属機関による随時届出の提出期限は、届出が必要な事由が発生してから14日以内です。
郵送の場合は、事由が発生してから14日以内に提出先に到着している必要があるので注意しましょう。
事由が生じてから14日以内に提出できなかった場合には、遅延した理由を説明する文書を添付しなければなりません。
万が一遅延してしまう場合も、なるべく速やかに随時届出を行うよう心がけましょう。
特定技能所属機関が随時届出を行わないとどうなる?
特定技能所属機関が随時届出を行わない、あるいは虚偽の届出を行った場合には、罰則の対象となる可能性があります。
随時届出は特定技能所属機関の責任のもとで行わなければなりません。
届出を怠った場合には、一定期間の特定技能外国人の受け入れ停止や、罰金・過料などのペナルティが課せられる恐れがあります。
随時届出の提出期限は、事由の発生から14日以内と短いので速やかな対応を心がけましょう。
特定技能所属機関による随時届出に関して理解を深めよう
特定技能所属機関による随時届出とは、特定技能外国人の雇用状況や支援計画に変更が生じた際に、出入国在留管理庁へ提出する届出のことです。
随時届出は特定技能所属機関が責任を持って行う必要があり、届出が必要な事由が発生してから14日以内に提出しなければなりません。
随時届出が必要となる事由は、雇用条件の変更や契約期間満了前の契約終了、不正行為の発生、支援計画の変更、登録支援機関との契約内容の変更などです。
届出期限を過ぎてしまうと罰金などのペナルティが課せられる可能性があります。
特定技能所属機関は、定期届出だけでなく随時届出についてしっかり理解し、適切で迅速な随時届出を行いましょう。